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「と言いますか…皆さんいい加減椿崎さんの顔の落書きについてツッコんであげましょうよ…。跡部さんがさっきから微動だにしてませんよ…。」 鳳の指摘に、「あぁそう言えば…」と言う感じでみんなが反応した。その間ポカンな撫子。 「は?落書き?」 「椿崎、お前鏡見てねぇのか?」 「…うん、だって整容とか全部メイドさんがしてくれたから。」 「椿崎さん、鏡どうぞ。」 スッと日吉から差し出された手鏡。 「ひッ日吉!生き急ぎ過ぎやで!」 「あ、ども……ん?『早く元気になりやがれ』……誰が書いたんだ!?日吉か!」 文章を読んで撫子はクワッと目を見開いた。 「いえ、跡部さんです。跡部さんがツンデレたんです。」 「日吉ッてめっ!」 「日吉ぃ!その単語忘れぇ言うたやん!」 跡部が要らないことを言うんじゃない、と。忍足が何故忘れていないんだ、と慌てていた。 「跡部萌えぇえええ!ツンデレたぁあ!やばいよ!?あの俺様何様跡部様がデレたぁああああああ!赤飯じゃ!めでたいめでたい!あ、写メッこの貴重な跡部のデレをカメラに納めるのだ!」 写メを撮ろうと撫子がケータイを構えた。 「自分は死に急ぎ野郎なんか!」 「させるかぁあ!さっさと顔洗ってこい!」 しかしそれを阻止しようと跡部が撫子に突進する。 「洗うから、後からクッソ洗うから!写メってから洗うから!」 それを軽やかに回避する撫子。 「写メる前に洗いやがれ!」 部屋の中でプチ鬼ごっこが開催された。狭い…いや、広い部屋の中を走り回る二人。まるでガキである。 「貴様ぁああああ!反撃かぁああああああああああ!!!」 「ッ止まれつってんだろうが!」 跡部は思いっきり撫子の袴の襟元を掴み停止した。 「ぐぇっ!?」 「ゲッ。」 しかし慣性の法則によって撫子は急には止まれない。首が締まりさらには後ろに向かって転倒。跡部も巻き込む形になってしまった。 「ぐへぇ…ゲホッ首絞めやがったな。」 「………。」 撫子は倒れた体をゆっくり起き上がらせた。丁度跡部の腹部分を跨いでいる感じである。 「さらし巻いて息苦しい上にその仕打ちか!デレをくれ!……ん?」 一向に跡部からの悪態が無いな、と思っていたらなんと固まっていた。 ピシィっと、 「撫子ー、シャッターチャンスは今やで。」 「おう、いっそこのまま撮ってくれ。タイトルは『勝者は俺様だ(笑)』な。」 「おk把握や。はいキラ☆」 「キラ☆」 無様な跡部とデレ跡部の証拠を納め撫子はとても満足げである。 「…侑士、俺、ときどき人としてどうかしてんじゃねーのって思うときあるぜ。今、まさにそれ。」 「俺は初対面から椿崎はもう少し女として身だしなみをどうにかして欲しいと思ってんだ。」 岳人と宍戸が改まって言った。 「何や?」 「何かね?」 「侑士、撫子の襟元が崩れてるんだからどんなにさらし巻いてるからって言ってもはだけてることは言ってやろうぜ。」 「椿崎も気付け、激ダサだぜ。」 「…撫子ー、はだけとるで。」 「…き、きゃー破廉恥でござるー。」 「「で、おk?」」 言われて直して、どうだ。正しい対応だろ。と、ドヤ顔をかます二人。そんな様子を見て岳人と宍戸は頭を若干抱えた。 「お前等って何、付き合ってんのか?」 岳人のため息混じりの言葉に撫子達も互いにドン引いた表情をして否定した。 「「……ないわぁ…。」」 「こんなショタの反乱の権化なんて…。」 「こんなロリの反乱の権化なんてやや。」 「「あ?」」 「テメェ、私を違法BBA言いたいんか!」 「ちゃうんか?YESロリNOタッチ、合法ロリは正義や!老け顔ー老け顔ー!」 「んだと丸眼鏡ドルァア!テメェ、地獄が見てぇらしいのぉ。数々の奴らを地獄送りにしてきた技を食らいたいんかごるぁあ!」 地獄送りにしてきた技とは所謂言葉攻めである。奴らとは球技大会の男子二人。桃城。それから田舎の男子共である。 「拷問言葉を並べられたって痛くもかゆくもないわ!エロい単語だってもう平気やもーん。」 「チィッ!要らん耐久性をつけよって…まぁ、ええわ。お前にはコンボじゃボケェ…+岡山弁。安心しろ。意味の分からない単語は極力使わんようにしちゃるけぇ…うちでぇれぇ優しいのぉ。」 「ヒっ!?コンボとか聞いとらん!」 「今言ったんじゃから聞いとらんのが当たり前じゃけんな。忍足ぃ、ハラワタを、ぶちまけねぇよ?」 「イヤァアアアアァァァ――…。」 撫子のはだけている姿を見て固まっていた跡部を軽やかに放置し撫子vs忍足のファイトが始まった。 「なぁ、撫子…の元気は出てるけどよ……出し過ぎるのはどうかと思うぜ?俺…。」 「安心しろ岳人、俺も思ってることだからよ…。」 |
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