青春Destroy | ナノ


322


『明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。』

味気ない新年の挨拶。
出来るなら年賀状を出したかったのだが、年末は忙しかったためそれは叶わなかった。なにも挨拶をしないのは良心が痛んだためメールだけでも…。それから味気ないメールの理由は他にもあるのだ。
今日は元旦。
忍足と初詣に行く約束をしていたのだが、撫子はまだ自分の家にいる。約束の時間がきているというのに…。どうしようかな、と撫子が悩んでいるとあちらから電話がかかってきた。

『ちょ、撫子!今どこに居んねん!』

「おおー、忍足。あけおめことよろ。自分家なう。」

『あけおめことよろやなぁ!自分なぁ、俺との約束忘れたんやないやろうなぁ!?』

「忘れてないよ。着物着て初詣だろ?」

『せや、早よ来てや!』

「あー…うん。だがしかバットしけどけれどイエット…フラグはへし折る物なんだよ。」

『なんなん、まさか戦利品を読み漁りたいからって来んとか無いよなぁ。』

「なにそれときめく。でも違うんだよ。あのだなー――。」

『やっちもねぇ、言い訳は聞かへんで。さっさとアトベッキンガム宮殿まで来ぃや。待っとるで!』

「え、ちょ待ッ!」

忍足は自分の言いたいことだけを言って、それから速攻で通話を終了しやがった。

「えー……私今熱あんのに…。」

そう、撫子は熱を出していた。37.8℃である。意識も半分朦朧としていて、だからこそメールもやっと定型文を打てたのだ。原因は判明している。きっと冬コミで何か貰ってきたのだろう。抜かったわ。そう言えば風邪は人に移したら治ると言う。だから恨みを込めて忍足に移しに行こうと思う。
ウィンドブレーカーを着て、マフラー巻いてマスクしてニット帽を被って外出。変質者に見えなくもないが、変質者ではない。撫子は目的地、アトベッキンガム宮殿を目指し、到着。いつ来ても豪華なお屋敷である。中世風のロケとしてもってこいだな。
そんな事を考えながら撫子は門をくぐり屋敷の中へと入る。そして玄関、そこには撫子の到着を待っていました。と言わんばかりに仁王立ちしている忍足が居た。しかも何故か袴である。
それからメイドも何人か待機している。見るからに若々しい。嫌な予感しかしないのはブラッドオブボンゴレ的な何かがあったりなかったりだろうか。

「やぁあっと来よった!さ、メイドさん達撫子を着せ替え人形の様にして広間まで連れてきてやー。」

「「「畏まりました。」」」

「え、忍足なんで袴?ちょ、カメラ一枚プリェエエエ?」

撫子は写真を是非に一枚と言ったのにメイドに連行され、ある一室に入れられた。

「さぁ!椿崎様、どんなお着物をお召しになられたいですか!?やっぱり赤ですわよね!」
「いいえ、青の方が落ち着きがあって良いわよ!」
「ここは若さを強調して黄色…いえピンクでも良いかもしれませんわ!」
「いえ、椿崎様は大人っぽいのですからそこを十分に引き出す紫が良いわよ!」

きゃいきゃいとメイド達が楽しそうである。嫌な予感ほどよく当たると言うけれど、こんなに当たるとは…。この年でおもちゃにされるなんて思ってもみなかった。

「いえ…なんでも良いです。」

強いて言うなら「厨2っぽく黒がいいです。」なのだが喪服の様な感じにになってしまうため自重。それからメイド達の話し合いで着物の色は決定し、帯やら簪やら髪型やら、色々試行錯誤のすえ、撫子(着物ver)が完成した。

「椿崎様!景吾様達に見せに行きましょう!」

「…はーい。」

撫子はメイドの後をしずしずと歩くことになってしまった。歩きにくいことこの上ない。その上、ここまで完成度の高いことをしてくれたのだ。今更、風邪引いてます。なんて言えやしない。明日はゾンビ状態覚悟で今日はフル稼働するしかないだろう。
そしてメイドはある扉の前で立ち止まり、開けた。きっとここが忍足の言っていた広間なのだろう。メイドは二、三言葉をかけそのまま下がっていった。撫子はどうもと会釈をしてから広間の中へ。
そこには、

「やっぱ撫子は似合うて信じてた!萌えや!」
「アーン?流石、取り寄せた着物だ。美しいな。」
「跡部は素直じゃないんだから。撫子はドレスよりも着物の方が似合ってるのかな?」
「おー!馬子にも衣装ってやつだC!」
「ジロー違うからな。つーか撫子、姉御みてぇ!」
「あー、まぁ似合ってんじゃねーの?つーか動きにくそうだなそれ。」
「椿崎さん、綺麗です!」
「…日本人はやはり元旦は着物ですよね。」
「……似合って、います。ウス…。」

氷帝男子テニス部レギュラーの面子が勢揃いしていた。しかも袴である。

「貴様ら暇か!暇人か!あけおめことよろ!写真撮っても良いですか!?」

「元気ええなぁ。」

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