308 |
「やぁ、撫子、やっときたんだ。」 爽やかに話しかけてきたのは滝でした。滝もスーツを着こなしており制服とは違った色気的な物があった。 「グァ!?…た、滝じゃないですか…スーツ姿も麗しく。」 「フフ、ありがとう。」 「しかし滝よ、一つ聞きたい。何故榊先生から誘われる事を知っていた!?」 「僕だからだよ。」 「愚問でしたね!さーせんした!」 「でもそうでもしないと撫子、来ないでしょ?」 「いや普通に跡部のパーティーに来いと言われたら行くよ。」 「ドレス持ってるの?」 「……コ、コス衣装のなら…。」 「ハハハ、ダメだからねそれ。」 「ですよねー。」 「じゃあこれから僕に付き合ってもらうよ。」 唐突すぎる言葉である。 「え、ちょ、私料理を食べようとしてたのに!今日朝に菓子パン食ってそれから何も食べてないんだよ!?」 朝起きて、昼は例の事例発表会的なもので食べるタイミングを失い、やっと胃袋が満たされる状況であったのに…なるたる仕打ち。 「え?文句ある?それよりも、僕、ミスコンで優勝したから撫子を一日自由にしても良い権利あるんだよね?」 「グア!?なぜ知っている!滝は居なかったはずなのに!」 そうだ、その事を言ったのは女子更衣室の中だった。何故滝が…。 「僕だからだよ。」 「デスヨネー!チクショー!」 「一日って言っても今日残り少ないんだから喜んでよ。」 「実にあざーす!」 「よし、じゃあ僕も親の代弁としての役目をするから撫子は榊監督と居たように大人しく、大人しくしててね。」 「二回言うところに悪意を感じる今日この頃である。」 いっそ泣き出したい今日この頃である。撫子はお腹を空かせながら滝の後ろを従者の様について回った。 それから数時間、数時間である。そんなに時間が経っても撫子は解放されない。そもそも滝が大人達の輪から抜け出していないのだ。ただ単なる撫子への嫌がらせかと思っていたが、どうやら違うらしい。滝の口角がピクピクと微妙にひきつってるし、灰色のオーラが見えるんだもの。多分、滝の親に取り入ろうとする輩が息子である滝に媚びでもってしつこく売っているのだろう。何とも迷惑な話である。 ……モブ×t ハイ止めたー!速攻で止めたぁあ!俺自重したぁあ!セーフセーフ、危ないな。暇だと雑念が入ってあらぬ妄想がウフンアハン。 「撫子。」 撫子が失せろ煩悩的に適当に反省をしていたら滝が撫子にこそっと話かけてきた。 「アウトでございましたか!?すみませんでしたぁああ!」 「僕、トイレに行ってくるから適当にクソじじ…あの方達の相手をしててよ。」 「え、あ…うん。適当に表面よくしとけばいいんだよね?」 「うん、それでいいよ。そろそろ気分転換してこないと、おっさん共…パキュ、しちゃいそうなんだもん。」 「ちょっと待て、その擬音語はなんの音だ。」 「じゃ、後は頼んだよ。」 「……。」 どうやら滝はストレスが溜まっていたようで発散するための口実でトイレに行くそうだ。撫子が言えることはただ一つ、ストレスの解消先が自分ではなかったことだ。 ……しかし、何を話せばいいんだ? 分からないので輪の中に入るだけ入っておこうと思う。 「おや?よく見たら、君は確か榊さんと居た女性ではないか。今は滝家のご子息と居るのだね。」 どうやら榊先生と挨拶まわりをしたときに出会っていた人も居たらしい。 「はい。滝君とは友人として関わらさせていただいておりましゅ。」 ……噛んだ。物凄く、恥ずかしいなう。 「ハッハッハ、喉が渇いているのかね。おい、そこの、飲み物をこちらの女性に。」 男がウエイターらしき人に声をかけ、撫子に飲み物を渡した。 …ダンディー! 撫子は受け取り、それを飲んだ。しかしこの飲み物飲んだ事の無い味がするな。 |
<< TOP >> |