青春Destroy | ナノ


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「さて、この物語はこれでおしまい。ケイゴとサンドリヨン…いや、撫子は来世で結ばれることが出来たのでしょうか?それは皆々様でお考えください。テニス部による演劇『サンドリヨン』これにて終焉。」

幕が下りて体育館内に一瞬の静寂が訪れた。そして一気に拍手がなる。歓声も今まで聞いたことがないのではないか、と思うぐらいのものであった。
そしてカーテンコールを済ませ、何もかもが一段落して、やっと一息つけた。
撫子は更衣室に戻り緑のツインテールのウィッグも取ってソファーにダイブした。衣装も脱いでしまいたいところだが、一動作でさえ動きたくない。むしろソファーと一生一体化したい。

「はー…疲れた。疲れた。もう愛してるのゲシュタルト崩壊だっつーの。」

コンコン、と扉を叩く音が聞こえた。

「はーい?開いてるから入ってどーぞ。」

扉を開けて出迎えることすら面倒くさい。声をかけると、扉が開いて入ってきたのは白石達だった。

「あぁ、蔵さん達か見てくれたかね?」

ソファーにうつ伏せになったまま聞いた。

「めっっっっちゃ感動した!メバチコ出来てまうっちゅー話や!」
「創作でありがちな転生ネタやったのに、こんなパンピにも受け入れられる完璧な劇やった!めっちゃエクスタシーや!」
「撫子さん、今の格好めちゃエロいっすわ。写メってもええですか?」

「おいちょっと待て、一人だけ着眼点違うぞ。」

撫子は財前の言葉でソファーから起き上がり服を正した。

「チィ!」

「やけど撫子さん、自分昨日KAITOの服着とったからKAITO役や思うとったのに…騙されたわ。」

「騙されてくれてありがとう。それを狙ってましたぜ!ビビったでしょ。」

「ホンマ…俺らの周りの人も撫子さん=王子役みたいな方程式やったらしくてな、度肝抜かれとったで。」

「ふっ…計画通り。ぶっちゃけあんな王子様つーかキングを差し置いて私がキングなんて出来るわけないじゃなぁい。さて、蔵さん達もう閉会式だから帰ることをお勧めするよ。」

「せや、ついでに帰ることを言いに来たんや。流石に帰らんと明日から学校やし。」

「あー、そっか。…貴重な休みを使って来てくれてありがとう!楽しんでいただけていたなら本望だ!」

「むっちゃ楽しむことが出来ましたわ!」

「本当!?それは良かった…。」

「じゃあ、撫子さん。次会えるんは多分冬の祭典やな。」

白石達と別れの挨拶をして白石達を見送りに控え室を出ることにした。校門でバイバイ、と再び言って見送った。それから姿が見えなくなって撫子は後ろを振り返るとそこにはたくさんの子猫達が居た。その子猫のほとんどがハンカチを目元に当て涙を拭いている。

「…えっと……何かね?」

「お姉様と跡部様は生まれ変わりだったのですね!あんなに辛い別れがあっただなんてッ…!」

「………はぁ!?ちょ、待て。子猫ちゃん、なにを言ってるんだ。」

「お姉様!恥ずかしがることではありませんわ!争いのない今に生まれたのです!跡部様と結ばれるべきですわ!」

「…オーノー!二次元と三次元を一緒にしないでぇ!?いや、創作と現実を一緒にしないでくれたまえ!」

どうやらあの劇は撫子と跡部の前世だと完全に勘違いをしてくれたようだ。役の名前と自分の名前を一緒にした方が面白いと滝に言われたから…滝、に……。

「まさか、滝…これを狙って!?」

今ここに滝が居たら「あれ?今更気付いたの?」とか満面の笑みで答えてくれそうである。ので、今から直談判に行ってくる。

「滝!これどういう事!?なんでこんなに勘違いされてんの!?なんか入れ知恵でもした!?」

「あれ?今更気づいたの?」

「のぉぉおぉぉぉお!!?」

文化祭が終わって撫子と跡部は当分の間、生まれ変わりと言う設定が蔓延っていたのだが、撫子が物凄い勢いで否定したのとテニス部の失笑で直ぐに事態は沈静化した。


これで中学生活最大で最後の行事が終わってしまったのである。

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