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「撫子さーん、助けてくださぁい!」 英語の教科書を枕にぐだっとぐだっていた。 「…これは……末期だわね。」 「あぁ、いくら言っても右耳から左耳に抜けていった…。」 「……ここで便利な真田君は?」 赤也は真田が見張っている状況だったら底力を発揮すると思うのだが…。 「それは、もう使えない。」 「なんで?」 「あちらを見てくれ。」 向こう側を指差し、柳は向くよう促した。撫子が向いて目に飛び込んできた光景は真田が壁に身を任せ、意識がログアウトしている図。 「……精市君?」 「あぁ、精市だ。」 「そっか。」 多くは聞かないよ。多分、奇声を上げまくって精市君が五月蝿いって言って鉄拳でも食らわせたのだろう。 「よく分かったね。」 ナチュラルに読んでいたもよう。 「あー…うん。……赤也君、どこが分からないの?」 「…こことこことこことこことそこです。」 「ほとんどじゃないか。」 「すんません…。」 「まぁ、分からなくもないよその気持ち…私も一ヶ月前は君みたいな『英語何ソレ美味シイノ?』状態だったから…。」 「本当っすか!?」 「マジですー。夏休み中血反吐吐くかと思うぐらい頑張ったんですぅ。」 「どうやったんすか?どうやったんすか!?」 「フッフッフ、教えてやんよ。」 いつも妄想の材料になってもらってる礼だ。撫子は教えた。そして程なく赤也の課題が終わった。 「終わったぁあああ!」 「良かったね!」 「撫子さんのおかげっす。」 「やー、そんなおめめをキラキラさせながらこっち見ないで、私が溶ける。」 「えへへへへー、柳さん、俺やりましたよ!」 「あ…あぁ、よくやった。」 フラグON。 柳×赤也は健在だった。 そんなBL展開になる出来事を見せられては妄想しないわけ無いだろう。柳はその撫子の視線を感じ取って行動を自重しようとしたのだが、目の前に「褒めて、褒めて!!」と訴えている赤也が居るのに、どうやってシカトをすればいいのだ。 「マスター…ごちになります!」 「……どうぞ。」 全てを諦めた目をしていた。 「撫子ー!」 忍足が何かを引っ張ってきながら撫子に近付いてきた。 「ぁあ?今度は何さ。」 「ちょい、これと英会話してや。」 引っ張られていたのはリョーマだった。 「…忍足ってショタコンだったっけ?」 「ちゃうわ、アホ。ええか?越前はアメリカからの帰国子女なんや!」 「マジで!?リョーマ、マジで!?」 「っすよ。中学入る少し前に日本に来たんす。」 「うわー!帰国子女ってポンポン居るんだね!しかもアメリカ!ワシントンD.C.ーD.C.ーオッオー!」 「ついでに言うなら跡部も小学まではイギリスに居たらしいで。」 「えっ…イギイギ?跡部の癖にハイスペック、私今めちゃめちゃ跡部にときめいてる…。パブッパブッパブッてGo!フィッシュアンドチィップス!!」 「まー、後からお国柄のことは聞きぃや。今はちょい英会話やて。」 「…なんで?」 「やって…あんなに喋れるとかあり得へんもん!どうせあれやろ?適当な単語を適当に言っただけなんやろ!?」 忍足はどうやら焦っているようだ。学業で英語だけは勝っていたのに、もしかしたら負けるかもしれないという危機感。 |
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