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幸村からのお墨付きをもらいいざ青学陣地へ。青を基調としたユニフォームを着た一団が目に入ってきた。リョーマに飛びつこうとしたが寸のところで立ち止まる。 「リョーマー!!…………じゃない、リョーマはどこだ、リョーマは…myエンジェルリョーマはどこだ!」 「撫子さん落ち着いてよ。確かにリョーマじゃないよ。同じ一年の堀尾っていう子だよ。」 「……どもっす…。」 「おk把握。でリョーマはどこだ?」 「軽井沢に居たのを先ほど跡部達に頼んで連れて帰ってもらった。軽井沢でリョーマの親父さんと合宿的なものをしていたらしい。」 「か、軽井沢ぁ!?乾でんちさんそれホント!?」 試合前に合宿なんて、言っちゃぁ悪いが…愚か者ぉ!体調崩す原因でしかないだろう! 「そうなんだ、体調崩すより大変なことになったんだよ。」 「ワー、周助君ナチュラルに心の中呼んできたー…。って大変なことってなんだい?」 「どうやら記憶喪失らしいんだ。」 「へー…え?ぇえ!?そんな、バカな!」 「本当だよ。越前を迎えに行った桃が連絡を寄越してね。」 「記憶喪失…え、リョーマってこれから試合…。」 「そうだよ?だからね、撫子さんも協力してよ。」 「…何をだい?」 「越前の記憶を取り戻すために、ちょっと会ってほしいんだよ。」 「お安いご用だぜ!じゃリョーマの所へ…。」 「あそこのコートに居るよ、多分。」 不二にリョーマの居所を教えてもらい、いざリョーマの下へ。 「リョーマァ!」 「ヒッィ!?だ、誰ですか!?」 コートに入り、今まで戦ってきた人たちとゲームをしている。そして、撫子を誰だ?と聞いた。 「リョーマァア!本当に忘れてしまったのか…。」 ずーん…と重い空気を纏う撫子。周りだけじめじめとしている雰囲気だ。 忘れられるなんて悲しいなぁ、オイ。でも、不覚にも萌えてしまっている私が居る。何あのキュルンのホワワンのペカー!って感じの少年は…、いつもの可愛らしさとはまた別の可愛さがあるっつーか。 「撫子、そんな気ぃ落とさんでもええでぇ。」 忍足に話しかけられた。 「あぁ、忍足か…や、気を落としてなんか無いさ。ちょっと妄想しかけてただけで…。」 「それは少々不謹慎とちゃうかな?」 「しょーがないでしょ、私はそう言う人種なんだから。」 「ちょっとは自重覚えたらどうや?」 「え、何それ。自重なんて私が覚えた日には地球最後の日並みの衝撃だよ?」 「何やそれ、冗談に聞こえへんのんやけど。」 「フォローして!」 「…すまんな、俺フォロ方フォロ四郎みたいにフォロースキル無いねん。」 「リョーマを見ていると…ムラムラします。」 「アホかぁあ!」 「ツッコミだけは冴えてんのかよボォアッ!?」 これで何度目、背後から強烈なアタック。 「撫子さん!」 「リョ、リョーマ!思い出したのか!?」 「ハイっす!…一瞬でも撫子さんの事を忘れてたなんて、恥ずかしいっす…。」 「照れるリョーママジ可愛い。よし、これから試合だよな!頑張れよ!」 「俺は、負けませんよ。」 「ワォ、大きく出たね。じゃ行くかい?」 「っす!」 記憶を取り戻したリョーマとともに試合会場へ。そしてリョーマをコートに送り出し、撫子も観客席に移動する。 神の子vs王子の試合の開始である。 「ねぇ、忍足?あの二人とガチ試合しろって言ったら試合する?」 隣で同じく観覧していた忍足に聞いてみた。 「冗談。幸村とやるぐらいなら、始めから棄権しとくわ。」 氷帝の天才をここまで弱気にさせる試合のクオリティ。見ていて楽しいが、実際に相手をしろなんて言われたらただの死刑宣告にしか聞こえない。 「ですよねー。でも私、明日からの合宿的なやつで精市君と試合するの約束してるんだよねー…アハハハハハハ…どうしよう。」 「撫子…達者でな、骨は拾うといちゃる。」 「あぁ、冗談に聞こえない。」 精市君のイップスってチートだよなぁ。ほらリョーマの動きだって……え?リョーマが、リョーマが…スーパーサイヤ人に!?すごいオーラだ。なんだあれ。 「なにあれ?」 「天衣無縫の極みや。あんなん出来るんはサムライだけか思うとったんやけど……あのチビ…やりよったわ。」 「さすがリョーマと言うべきかなぁ…。」 幸村もリョーマも全力を出し切って決着が付いた。 負けた者も勝った者も、 ここでテニスに青春を捧げた者達の夏は終わった。 |
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