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「さて、とりあえずお目当てサークルの新刊の交換から始めようか。」 「あぁ、まずは忍足のから分けるとしよう。」 忍足は袋を逆さにしドサッと中身を出した。 「オイゴラ忍足、テメェ宝の中の宝、キングオブトレジャーをどんな扱いしてんだよ。ワイルドに吠えるぞコラ。」 「は?ただ袋から出しただけやん。」 「忍足…さすがに今の行動は目に余るものだぞ。それにどのくらいの価値があると思っている。」 二人がいきなり怒りだした。そんな忍足だけがアウェイな空間。謝っておくことが最善の行動だろう。 「…なんか…すんません。」 二人は忍足の謝罪を受け入れ作業の開始。続いて柳の戦利品も分けられる。 「ッハー…神が居られるー。」 うっとりと新刊を眺める。 「全くだ。撫子さんのも分けよう。」 とさっさとご開帳。 「ん?何だ?これは…。」 撫子がTOMOとSAKURAから買った新刊を手に取る柳。 「お、マスターお目が高いね。それたまたま見つけたサークルさんでね。小説も挿し絵も申し分ないんだ!」 柳はペラペラとページをめくっていく。 「これはッ…!?撫子さん、あなたのレーダーは尊敬に値する。」 「ふふん、もっと誉めても良いのよ。」 柳も納得のクォリティーだったようだ。 「これをどこで?」 「えっとー…。」 そう言いながらカタログをバサッと広げTOMOとSAKURAのサークルを探す。 「ぅお、鈍器や、鈍器があるで。」 「これで撲殺されるなら本望。っとこれだ。」 柳に見せるように指を指す。 「……『love.R』…?初めてみるが…。」 「そうだよ、初参加らしいよ。サイトもあるみたいだけど、見たことないんだよね。ね、これものスッゴい掘り出し物じゃない!?それにSAKURAちゃんのほむらちゃんコスマジクォリティー高かった!結婚したい!」 興奮気味に柳に語る。 「……ずいぶん楽しんだようだな。」 「勿論さ、悔いは…一応無いよ。でね!相互リンクする約束もしたりあわせもする約束もしたんだ!もう夏コミ最ッ高!」 「確かに。」 「俺は…もう、行きたない。」 忍足だけは疲れ切っている。 「ぁあ?そんな戯言聞こえねぇな。冬コミも巻き込むに決まってんだろ?」 「そうだぞ、冬コミは仁王や柳生も誘う予定だ。隊員は多いに越したことはないからな。」 「え°?」 忍足が有り得ない発音をした。しかし撫子と柳はそんなことは気にせず会話を続ける。 「そうだね。次は仁王とかも呼ぼうかな。あ、コス参加しながらでも良いかもしんね。」 「コス参加か…良いのではないのか?冬だとメイクも崩れにくくなるだろう。では俺はサークル参加をしようか、撫子さん俺のブースに委託しないか?」 「え?マッジー?いいの?もちするよ!絶対抽選受かってね!」 「もちろんだ。」 話が続きお開きの時間だ。バイバイ、と柳と忍足を帰らせた。忍足は放心しながらも家に帰った。帰ってもボーっとしている。 「………ッハ!?無意識に心を閉ざしとった…俺はもうコミケ行きとうないわぁ!」 叫ぶが時既に遅し。むしろ叫んだところで忍足の意見など聞く気もない柳と撫子だ。叫ぶだけ無駄。 哀れ忍足、清く犠牲になれ。大丈夫だ。次に巻き込まれる人物は君だけではないはずだから。 |
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