青春Destroy | ナノ


095


仙人掌こと不二との撮影会から帰って、撫子の猛勉強が始まった。部活がテスト前だからと言って休みにならないことを知ってしまっていたからなおさらだ。
腹いせに忍足のメガネを叩き割ったことは記憶に新しい。撫子の八つ当たり、舐めないでいただきたい。
しかしながら何故撫子がテスト週間だと忘れていたのか。本来なら良い子面している撫子はそう言った学校行事は把握しているはずだったのに。

その回答は簡単。頭を悩ませるほどの大したことではない。答えは、『目の前に沢山の萌えがあった』である。

子猫ちゃんや舎弟を相手に萌えて妄想し、さらに部活では観察して妄想して、楽しすぎて、家に帰ってからサイト更新フラッシュであった。もうそれはそれは毎日が充実していたのだ。だからこそ、テストなどと言った負の行事なぞすっかり忘れていたのであった。

しかしイヤだからと言って避けれるような行事ではない。むしろ学び舎である学校ではそれが一大イベントと言っても過言ではない。
撫子のそれに従い、いい成績を収めようと真面目に妄想や落書きなんかもせず残りの授業に出席、10分休みも無駄にはしない。常に参考書、教科書が机の上に広げられ、目を通していた。
放課後だって勉強三昧。と言いたいところだが、放課後は部活があった。撫子はドリンク、タオル、その他諸々を最低限度の準備をしてからマネージャー室に引きこもった。

そんな折、レギュラーメンバーは何時もガン見してくる撫子の視線がないことに気づき同じクラスの忍足にどういう事か聞く。

「なぁ侑士、撫子はなんでいきなり勉強し始めてんだ?先週まで余裕ぶっこいてたのに。」

「あー…撫子ってなんかのプロジェクトで氷帝に来たやん?なんでもその条件に明日から始まる定期テストでは5位以内に入らんとあかんらしい…。」

なんという対価か。いや、プロジェクトの一環だから元々そんな条件の元撫子は都会の学校にやってきたのだ。
授業料もただと言う家計には大変優しい作りとなってる。それらを考えると定期テストで10位以内と言う条件は安いものだとも考えられる。

「5位以内!?うっそ!」

驚くメンバー。それもそのはず、氷帝学園の在籍生徒数は1652人。単純に三学年で割って、ざっと、550人。それの5位以内なのである。

「ホンマの事や…書類見せて貰ったんや。
…ついでに言うならテスト前でも部活があるっ言うたときなんて…俺のメガネ、叩き割られたわ。伊達やって分かってからのメガネの扱いが酷くなっとるで…。」

伊達ならばいいじゃない。生活に支障はきたさないのだから。

「まぁ、侑士のメガネは放っておいても問題ないとして…撫子…頭良かったんだなぁ…。」

「俺、撫子は…頭悪いかと思ってたC…。」

「ジローそれは酷いな。」

しみじみと天使系男子、岳人とジローが話す。
あんなに行動が馬鹿げている撫子が、学年5位を目指すとは…。

「しっかしよー、いきなり詰めても意味あんのか?」

「俺もそう思ってなぁ…ちょっかい出したら…メガネ二号が宙を舞ったで…。」

思い出されるあの一場面。
熱くなる目頭を押さえながら忍足は言葉を発した。そんな様子を見て宍戸は提案した。提案と言うか、命令した。

「……長太郎、説得してこい。」

「何でですか!?俺、そんな椿崎さんに関わりたくないです!」

「せやせや、お前ら撫子に無理すんなって説得してや。
俺は撫子の萌えレーダーに引っかからんから、岳人らで気を紛らわせてやってや。」

「なんで俺名指しなの!」

「俺、席隣やけん知っとんやけどな…休憩時間もずっと勉強しとるんや。怖いわ。いつもなら表紙ピンクな小説読んどるはずなんに…。」

「でもテスト前って他の人も同じ様な事してるC。」

「そうだぜ、トップ5のメンツは大体がり勉してるぜ?まぁ、跡部は…まぁ跡部だしよ。」

「せやけど!
目の前に現れる会長さんや、舎弟のかわい子君が現れても、何時もなら暴走して頭撫で回してるのに、今日はいっこも反応せんかったんや!!一大事やで!!」

「なっ、それは本当なの!?忍足!?」

「ジロー!!分かってくれるか!?」

「分かるC!!そんな撫子なんてメントスコーラだC!」

「……ジロー…お前の価値観が分からねぇよ。」

「岳人!!俺らの出番だよ!今こそ撫子を助けるんだ!」

ジローが岳人の腕を引っ張りマネージャー室に向かおうとする。

「ちょっ助けるんだって何から!?」

「…岳人ー、ノリ悪いC。」

「考えてなかったのか…ま、助けてやらぁ!これ以上平均点が上がったらたまったもんじゃねーし!」

岳人とジローがマネージャー室にダッシュ。

「そんな呑気なこと言ってますけど…皆さんは平気なんですか?」

「お!ピヨシート、俺らの成績の心配してくれるんかぁ?」

「いえ、ただ頭の悪い先輩の後輩なんてしたくないので。椿崎先輩ぐらい努力してほしいですよ。
あとピヨシートってなんですか。俺の名前は日吉です。先輩は人の名前もろくに言えないくらい頭が弱ってたんですね。」

「…日吉…何時にもまして毒舌のキレが増しとらへん?」

いつもの毒舌が斬りつけるような物なら、今日のはなんだか、抉る様な感じである。

「こちらも勉強と部活のストレスがあるんですよ。目の前で勉強する人の邪魔をする計画をされたら、より苛立ちが増すだけだったんで。」

「…なんか…すんません。」

「謝るくらいならその馬鹿らしい計画を止めてあげて下さい。」

「なんだよ日吉、やけに椿崎の肩もつじゃねーか。」

「宍戸先輩はバカですか?あぁ、馬鹿だから一時期椿崎先輩を無下にしていたんですね。」

過去に自分が撫子を罵ったことは闇の彼方である。

「バッ…!?」

「椿崎先輩の参加してるプロジェクトはまだ成績を残してませんから、先輩が5位以内に入らなかったら…プロジェクト失敗ってことで椿崎先輩、前の学校に帰りますよ?」

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