復活(ベルフェゴール)

差し出されたフロランタンを前に固まった彼女は、一拍置いてその意図に気付いた。ベルフェゴールの手からお菓子を食べさせられるという、まるで犬のような仕草に抵抗を感じながら目の前の男が諦める気配がないと分かるの心の内で溜息をこぼす。
「早くしろよ」
催促されてしまい、もうどうにでもなれという心意気でお菓子だけに集中する。そういえばこの生活を始めてから甘いものを食べるのも久しぶりな気がする。もしかするとラッキーなのかもしれない。
軽い音を立ててクッキーが砕かれ、咀嚼するほど口の中にバターの薫りが広がっていく。ボロボロとこぼれていくアーモンドの欠片を尻目に、まさか落ちたものまで舐めろとは言われないだろうかと冷や汗をかく。
「うまい?」
食べている途中で聞かれたので、慌てて頷きで返した。ベルフェゴールは表情を変えることなく、結局お菓子は最後まで手ずから与えた。