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嗚呼ロミオ


テツヤがバスケを好きだという事はもちろん知っていた。だって、ずっと一緒にいたから。私だってそんなテツヤを応援していたし、今まではずっとその姿を近くで見てきた。でも、それをやめたのはテツヤがたくさんの仲間に囲まれる姿を見てから。私がその中に入れない事なんて言うまでもないし、なんだか知らないテツヤを見た気がして、怖くなったから。突然練習を見に行かなくなった私に、テツヤは何も言わなかった。それはきっと、テツヤの優しさ。

「テツヤ、」

もちろんテツヤを応援したいという気持ちに変わりはない。時々差し入れはするし、休みの日には一緒に公園に行って練習するテツヤに付き合ったりしている。

「灯、どうしました?」
「これ」
「また作ってくれたんですね、ありがとうございます」

テツヤが部活へ行く前に、作ってきたカップケーキを渡す。ずっと前はテツヤの練習が終わるのを待って、帰り道に一緒に食べたりもしたものだ。今はもう待ったりなんてしてないけど。

「練習、頑張ってね」
「はい」
「よー、テツ」

私は帰ろう、とした所にテツヤに声をかけたのがいた。私が黄瀬より苦手とする、青峰だ。

「お?なんだそれ」
「青峰君にはあげませんよ」
「ケチケチすんなよ、また佐藤の差し入れか」
「またね、テツヤ」

早く帰ろうとする私の手を、ガッと強く掴まれた。もちろんテツヤがそんな乱暴な事をするはずもなく、それをしたのは青峰だ。

「……」
「青峰君、灯が痛がっています」
「無言じゃ分からねーっての」
「…離して」

そう言っても離してくれない青峰の手を、テツヤが間に入って離してくれた。

「性格良けりゃ最高だったのにな、お前」
「人の胸ばかり見る人に良く思われても嬉しくない」
「はっ、それは失礼」

鼻で笑って、青峰は歩いて行った。本当に嫌なヤツだ。

「灯、手大丈夫ですか」
「ん」
「すみません。気をつけて帰ってくださいね」
「ん、また明日ね」

テツヤが謝る事ないのに。テツヤに背を向け帰ろうとして、助けてくれたテツヤにまだお礼を言っていない事を思い出した。そっと顔だけ後ろに向けると、テツヤはまだそこに立っていた。

「…テツヤ」
「はい」
「…ありがと」
「どういたしまして。また明日」

再び歩き出して、もう一度後ろを見てみると、今度はテツヤも歩き出していた。…テツヤって本当に不思議だ。