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愛を叫ぶ


何を考えているのか分からない。

これはよく、私が人に言われる言葉だ。よく、というか、必ず、と言ってもいいかもしれない。けれど、そんな中で唯一、真逆の事を言う者が一人いる。

「どっちがいいですか?」
「どっちでもいい」
「はい、こっちが肉まんです」

そう言ってピザまんではなく肉まんの方を私に差し出したのは黒子テツヤ。

「…ありがとう」
「いいえ。灯は分かりやすいですから」

そう、唯一私が分かりやすい、などと言うのがこの黒子テツヤだ。私の親ですら分かりにくいと言うのに。

「テツヤだけ、そう言うの」
「僕は幼馴染ですから」
「でも、最初からずっとそうだった」

家が隣同士のテツヤとは、記憶があまり残っていない頃からの仲だった。いつの間にか一緒にいて、それから今に至るまでずっと一緒。気付けば私の隣にはテツヤがいて、それはもう当たり前になっていた。感情表現に乏しい私の考えをなぜかテツヤだけは見抜けて、私の気持ちを汲み取ってくれた。

「分かりますよ、灯の事は」
「何で?」
「分かりやすいですから」
「…答えになってない」

どっちがいいか言わなくても、私の好きな方を差し出してくれる。何がしたいか言わなくても、私のやりたい事をやらせてくれる。どこに行きたいか言わなくても、行きたいところへ連れて行ってくれる。言わなくても分かるなんて、まるで双子みたいだ。私とテツヤは顔も性格も全く似ていないけど。

「あ、黒子っちー!」
「…騒がしいの来た」
「灯は黄瀬君が苦手ですからね」
「あ!肉まんっスか!?いいなー俺も買おっかなー!」
「残念ながら僕達が食べているので最後です。蒸し上がるまでないですよ」
「えーーー!ズルイっス!!」

せっかく久しぶりにテツヤと二人で静かな帰り道だったのに。黄瀬のせいで周りからの視線が集まってきた。うるさいし、目立つし。黄瀬が来るまでは平和だったのに、なぜかテツヤが黄瀬になつかれてから私達二人だけの平和な世界が一瞬で崩壊する。

「テツヤ、私は黄瀬が苦手なんじゃないの。嫌いなの」
「ぐさっ!!!ひどいっスよ灯っち!」
「その変な呼び方やめて」

テツヤがバスケ部に入ってしばらく経ち、幻のシックスマンとやら呼ばれるようになってからだ。黄瀬だけでなく、テツヤの周りが騒がしくなったのは。

「黒子っちも部活ないからって先に帰るなんてヒドイっスよー」
「僕、別に黄瀬君と帰る約束なんてしてませんよ。それに灯と一緒に帰りたかったので」
「そこは三人一緒に仲良く!」
「イヤ」
「と、いう事なので」
「灯っち!?黒子っちー!?」

まるで、私一人、テツヤに置いていかれたみたい。