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こいのうた


来るな、来るなと願っている時ほど時間なんてあっという間にやってきて。今日はお昼の時間になってもなぜか赤司君も桃井さんもやって来なかった。テツヤがあらかじめ何か言っておいたのだろうか。

「灯。行きましょう」
「あ、うん」

テツヤと向かったのはいつも二人で食べていた場所。私は変わらず赤司君とここで食べていたけど、テツヤはここに来るのは久しぶりだろうな。

「いただきます」

内心ドキドキしながらテツヤを見ていると、テツヤは特に何を言うわけでもなく普通にお弁当箱を取り出して食べ始めた。テツヤにツッコまれないよう、いただきます、と私も普通にお弁当を食べる。久しぶりにテツヤと一緒に食べるご飯は、やっぱり美味しくて。赤司君と食べる時だって味は変わらないはずなのに、やっぱりテツヤと食べるのが好きだって思った。


「このままでは嫌だと思いました」

不思議なくらい普通にご飯を食べ終えて、このまま教室に戻るのかと思いきや。テツヤに顔を向けると、テツヤはじっと私を見つめていた。

「・・・このまま?」

とぼける私に気にもとめず、テツヤは再び口を開いた。

「灯が練習を見に来なくなったのは別にいいかと思いました。一緒に帰るとはいえ暗い中で待たせるのも遅い時間に帰るのも申し訳ないという気持ちもありましたから」

さっきまで楽しくご飯を食べていたのに、いつの間にかテツヤは真剣な顔をしていて。こうなる事、赤司君なら予想出来ていたんだろうか。

「ただ、ここまで距離を置かれるのは嫌です。どうして灯は桃井さんに遠慮するんですか」
「それ、は・・・、だって、」

どうして?

「だって、なんですか」
「桃井さん、テツヤの事が好きみたいだし、」
「・・・灯は僕が桃井さんと付き合ってもいいんですか?」

付き合う?テツヤと、桃井さんが?・・・そっか、そうだよね。だってもしお互い好き合ってたら、告白して、付き合って。一緒に帰ったりご飯食べたり、デートしたりして。テツヤの隣には私じゃなくて、桃井さんがいるのが当たり前になって。

「・・・や、だっ」

そうしたら私はきっと、テツヤのそばにはいられなくなる。

「やだ、だって私・・・、テツヤが好きだもん」

そうか。私は逃げてたんだ。そうなる事が怖くて。認めるのが怖くて。―――テツヤが、好きだから。

「好き、なんだもんっ」

あの時感じた胸の痛み。私、テツヤが好きなんだ。

「僕は灯が好きです」
「・・・え、っ?」
「灯も僕と同じように、僕の事が好きだって思っていました。その通りで安心しています」
「・・・ええ?!」

数秒前まで泣きそうだった私は、当然のように発せられるテツヤのその発言にただ驚き言葉を失う。

「僕が今までずっと灯を見てきたように、灯も僕の事を見てきたのに、どうして僕が好きな子は分からないんですか」
「すっ!?そっ、そんなの、だって・・・!」
「どうして自惚れないんですか。僕は灯が好きなのに、どうしてそう思わないんですか」

どうしてって、また?さっきから変に難しくて答えにくい質問ばかりで、頭が混乱しそうだ。ていうかもうしてると思う。

「いや、だって・・・」
「灯」

私でいいのかな、とか今までの行動がバカみたいだ、とか。自覚したばかりの気持ちやテツヤの言葉に何も考えられなくなりそうだ。

「今まで通りではもういけないと悟りました。だからしっかりと伝えます」

いや、考える必要はない。

「僕は灯が好きです」

こ い の う た

「・・・私も、テツヤの事が好きです」

とりあえず、私とテツヤは好き合っている。