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おいかけっこ


それからなぜか、毎回お昼は赤司君と食べるようになっていた。仲良しメンバーにやっとテツヤが加わったはずなのに、今度は赤司君が抜けてきていいのか不思議なんだけど。どうやらテツヤから離れつつある私を気にしてくれているのか。最近では廊下ですれ違ったりした時も赤司君に話しかけられるようになったり。周りの人はみんな赤司君は怖い、というみたいだけど、そんな事ない。すごく、優しい人だ。赤司君を知ったあの時から、私は多分ずっと赤司君の優しさに触れている。

「灯。最近、テツヤを避けているようだね」

今日も同じように一緒にご飯を食べていた時、いきなりそう言った赤司君。思わず持っていた卵焼きを落としてしまった。お弁当に入ったから良かったけど、いきなり何なのだ。

「別に、避けてないよ」
「それにしては動揺しているみたいだ」
「でも、避けてない」

ただ、桃井さんがテツヤに会いに来るから、私は邪魔しないようにしているだけ。

「テツヤが最近、調子が悪いようでね」
「私は関係ないよ」
「テツヤは、灯を大事に思っているよ」

いつもはほとんどしゃべらない赤司君が、今日はおしゃべりだ。

「僕が青峰に遅れた理由を聞いた時、青峰は女と遊んでいたと言った。つまらない女と、ってね」
「……」

――それは、あの時の事か。

「そしたら近くでアップをしていたはずのテツヤがいきなり青峰を殴ったんだ。さすがの僕もびっくりしたよ。あのテツヤがいきなり人を殴ったんだからね」

私だって、びっくりしたよ。テツヤは優しい人だから。


"いきなりなんだよテツ"
"言ったはずです、次はないと"
"別に手は出してねェだろ"
"それでも、許せません"


「聞いてもテツヤは何も言わなかった。けれど、幼馴染みの話は聞いた事があったからね。青峰が絡むといえば女の話だろうと思って少し笑ってしまったよ。テツヤに睨まれたけどね」

そこで笑われれば私だって睨むよ。

「灯」

黙って聞いていると、赤司君に名前を呼ばれる。咄嗟に顔を上げてみれば、私を見つめる赤司君と目が合った。

「君はもう少し、テツヤの事を分かってあげるべきだ」

その言葉の意味が、私には分からなかった。


"テツヤ、いつも誰と食べているんだ?"
"…幼馴染みです"
"幼馴染み?男子かい?"
"いえ。…理解されず、誤解されやすい、女の子です"
"へぇ、少し興味があるね"
"何かしたら赤司君でも許しませんよ"
"珍しいね、テツヤにそんな女子がいたとは驚いたよ"

"───とても、大切な子なんです"