偽りを貫けば正義



物陰から目的地を覗いてため息をつく。何でため息をついたかは簡単デス。

ボクはあそこ(新選組)に入隊しなければならないのデス。

なんでボクがこんな目に会うのデスカ。本当に風間千景には腹が立ちマス。



『新選組で女鬼を見つけた、そいつを見張っておけ』



禁門の変と呼ばれる騒動から帰ってきた風間千景に言われた一言。今思い出しても実に不愉快デス。なんでそんな面倒な仕事をボクにさせるのデスカ。理不尽にも程がありマス。


まぁボクが以前に入隊してやる的な啖呵を切ってしまったのも悪いですケド…。


「何故私が人間なんぞと一緒にいなければならんのだ」

ボソッと口から不満が溢れる。いけないいけない、つい口調が素に戻ってしまいマシタ。気を付けないとすぐに口調が荒れてしまいマス。






「おい、そこで何をしている」


後ろから声がかけられるのと同時に首にヒヤリとしたものが当てられる。それが刀だと認識するのに時間はかからなかった。ボクとしたことが後ろをとられるとは不覚デスネ。


「そこで何をしていると俺は聞いている」


チャキ、と刀に力がこもったのを感じてボクは心のなかでにこりと笑った。首を出来る限り捻らせ後ろにいる人物を見れば、巡察から帰ってきたのか隊服を着て襟巻きを巻いた男が立っている。

ボクは彼の姿に驚いてしまいマシタ。なぜなら彼は左手で刀を持っていマス。そんな方、今まで見たことがなかったデス。


「いつまで黙っている。黙っているなら…」


「新選組の屯所を見ていたんです」


ボクがそう言うと眉間に皺を寄せた彼。ボクはそのまま言葉を紡ぐ。


「俺、新選組に入隊したいんです。だからここに来たんですけど、緊張してなかなか入れなくて」


もっともそうな理由を口にする。もちろん口調は変えマシタ。ボク…じゃなくて俺はすでに桝屋の一件で新選組の男と遭遇しています。もしかしたら、あの口調では俺の正体が露見するかもしれないですからね。念のためです。




「……そうか、ならついてこい」


少し考える素振りを見せた後、刀を納め歩き出した男。俺はただ彼についていく。



とりあえず、第一関門は突破しました。



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