傍にいる人が重要



「あーハワイ行きてー」
「…え?何?ハワイ?」
「うん。行きてー」
「どしたのいきなり」
「結構前に社員旅行でハワイ行ったんだけどさー、結構良かったから」
「そうなんだ」
「敏弥さんハワイ行こーぜ」
「大型連休取れねーよ」
「だよなー…どうせ行くなら一週間ぐらい仕事忘れて過ごしたいし」


ソファの上に座る敏弥さんに背中を預ける形で、足も上げてべったり寄り掛かる体勢。


読んでた雑誌から視線を外して。
頭を上げて、敏弥さんの肩に置く。
横目で敏弥さんを見ると、ゲームをしてた視線をチラッとこっちに向けて苦笑い。


だよなー。
俺も敏弥さんも大型連休取れねーよなー…。

社員旅行だったから行けた訳だし。


「でも何でハワイなの」
「だってハワイだと俺らの事知ってるヤツほとんどいねーじゃん。海行きてーけどさぁー」
「あぁ、外国の方がオープンだし堂々とイチャつけるしね」
「だろ。だからハワイがいいなーって」
「日本の海で我慢しなさい。ルキ君が海とか泳げんの?って感じだけど」
「馬鹿にすんなよ。泳げるっつーの」
「えー?そう?」


敏弥さんはゲームを一時中断して、笑いなからソファの前にあるテーブルに置かれたビアグラスに手を伸ばす。

体勢が変わったから、敏弥さんから身体を起こしてソファの上に胡座を掻いて。


テーブルの上にはペアのビアグラス。
敏弥さんが気に入って買って来たヤツ。

俺、家でビール飲まねーよって言ったら、ソフトドリンク飲めばいーじゃんって言われて。

ビアグラスなのに、俺の方はアイスコーヒーが入ってる。


敏弥さんは缶ビールをそのグラスに淹れて飲む程、お気に入り。


そのビアグラスを傾けて、ビールを飲む敏弥さん。


「俺のも取って」
「んー…はい」
「ありがと」
「カルーアとか、ミルクで割る甘いお酒買って来てやろっか」
「いりませーん。俺はソフトドリンク飲むんですー」
「お子様」
「うっせぇ」


ミルクもガムシロップも淹れたアイスコーヒーを口にする。
俺はあんま家ではアルコール飲まねーし。

敏弥さんは飲むから、冷蔵庫にはストック半端ねーけど。


ビールを全部飲んだ敏弥さんは、ソファの背凭れに深く身体を沈めて。
またゲーム再開。


「海ねぇ…沖縄の海とか行きたいね」
「沖縄でライブしねーかな」
「それどんだけ公私混同だよ」
「あ、でもバンギャ集まって敏弥さんと海で遊べねーか」
「なーに、ルキ君。俺とそんなに海行きてーの?」
「そーなんだよ。だからレンタカー借りて行こうぜ」
「ちょ、」


笑ってゲームしながら受け答えする敏弥さんにちょっとムカついて。
グラスをテーブルに置いて小型のゲーム機を敏弥さんから奪う。


敏弥さんは不満そうな顔をして取り返そうと手を伸ばして来た。


ソファの上で、大の大人が奪い合い。
それはやがて笑ってじゃれ合いになる。


「ちょ、敏弥さんくすぐってぇ…ッ」
「るせー。ルキ君が悪ィーんだろ」


敏弥さんにソファの上に押し倒されて、脇を擽られる。
身を捩ってもマウント取られてるから逃げらんねーし。


ゲーム取り返す目的はもうない。


「あはは…っ、も、降参降参」
「よし」


荒く息を吐き敏弥さんの腕を叩くと、敏弥さんは満足そうに笑って手を止め、下にいる俺にキスして来た。

唇が触れるだけのキス。


「…今度、海行こっか。コロンも連れて。家族で夏休み」
「…おぅ」


間近にある敏弥さんの顔。
鼻を擦り合わせる、甘えた仕草を見せてそう囁いた。


日本の海じゃイチャつけないかもしんないけど、そう言う敏弥さんの頬に手を当てて。

首を持ち上げて軽くキスをする。


「いーよ。敏弥さんと海行きたいだけだから」
「なーに可愛い事言ってんの」


だって夏の思い出欲しいじゃん。


お互いイチャつくの好きなんだから、異論はねーだろ。



END


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