味覚の好き嫌い



「おい、散策ついでに買い物行こうぜ」
「んー?」
「買い物。近くにスーパーとかコンビニとか、あるのか見てみたいし」
「えー」
「えー、じゃねぇ。ホラ起きろ」
「しょーがないなぁ…」


お互い一週間のオフの中で、ルキ君と休みが被ったのが3日。
その3日で、慌ただしく選んで引っ越した同棲の為の部屋。


家具は時々一緒に見に行ってたけど、ほとんどルキ君の趣味で揃えられて。
そんなルキ君色が強いバカみたいにデカいソファに寝転がってゲームしてると、整理が終わったらしいルキ君が目の前に仁王立ち。

もう、部屋決める時も散々周り見たじゃん。


俺引っ越しでオフ潰れたし、昨日ルキ君に急かされまくって整理したから疲れて動くの超怠い。

なんて思いつつ、ソファから起き上がる。


ルキ君はそれで買い物行くのかよって言いたくなるぐらいの服装。
今日も決まってんね。

格好良いよ。


「スーパーって徒歩圏内?」
「おうよ。駅もコンビニもTSUTAYAも徒歩圏内。敏弥さんも覚えろよ」
「ルキ君わかってんならいいじゃん」
「同棲してお互い飯作ったりするって決めただろ」
「それもそっか」
「他に何か店あるかも見てみたいし」
「迷子になるなよ」
「そっちこそ」


お互い軽口を叩き合って笑って、玄関へ向かう。


昨日、これから宜しくお願いしますって挨拶したルキ君と、屈んで玄関でキスをした。
いいね、こう言うのも。

お互い時間が合わなくてギスギスしてた時よりかは、精神的に安心する。


夕方になる前の時間。
買い物に行くだけだからルキ君も俺も眼鏡掛けて髪をセットしてない状態だけど。

男同士、この平日昼間は目立つらしい。

ホントに徒歩圏内な大型スーパーで、俺らは悪目立ちしてる気がする。

まぁいっか。


カゴを持ちながら、野菜を選ぶルキ君の小さい後ろ姿を眺める。

似合わねー(笑)

面白い。


「ルキ君、何作るの?」
「んー…最初はやっぱ無難にカレーかな、と」
「えっ、カレー?」
「何、嫌い?」


人参、玉葱、じゃがいもって、カレーの定番の材料をカゴに入れてたルキ君は俺の声に顔を上げた。


「嫌いじゃねーけど…俺辛いの無理だからアレ買って、アレ」
「何」
「『星の王子さま』」
「…は?」
「アレなら食べられるから」
「…名前からしてガキ用じゃねーの?」
「そうだよ。だから甘いの」
「カレーが甘いって」


苦笑いするルキ君。

だってしょうがないじゃん!

辛いのマジ無理なんだもん。


肉を選んだルキ君の後を付いてって、ルーがいっぱい並んでるコーナーへ。


「…『星の王子さま』ってこれか」
「うん」
「ファンシーだな」
「子供向けだからねぇ」
「お前いくつだよ、このXX歳が」
「だって家のカレーはこれしか食べらんない」
「外に出た時、どうすんの?」
「あー…カレー屋さんとか行った場合は大抵ハヤシライスあるから、それ頼むよ」
「カレー屋でハヤシライス…邪道だな」
「カレー屋のは甘口でも辛いもん」
「ガキが」
「辛いのが食べらんないだけですー」


子供向けのファンシーな絵柄が書かれた箱を眺めて、ルキ君が鼻で笑う。

これだと甘いからカレー食べられるんだもん。


「ルキ君も食べてみなよ。美味しいよ」
「…甘いんだろ?俺敏弥さんとは別に辛口のルーで作るから」
「別々ヤだ!一緒に食べよ?ねぇ」
「はぁ」


俺がちょっと駄々を捏ねる仕草をすると、ルキ君は溜め息を吐いて辛口のルーを棚に戻した。

何だかんだで我儘言うと、ルキ君聞いてくれるんだもん。

言い過ぎるとぶちギレるけどね!


言っとくけど、俺の我儘よりもルキ君の我儘の方が酷いから!


「味覚も中身もガキだな」
「わーい、ルキ君大好き!」


俺がリクエストした『星の王子さま』だけをカゴに入れるルキ君に言うと、満更でも無さそうに笑う所が、ルキ君の可愛い所です。

超可愛い。

大好き。


「でも敏弥さんが辛いの苦手なのは知ってたけど、ここまでとは」
「俺の事一つ知れてよかったね」
「ホントにな」
「これからもっと知っていっていいと思う」
「お前こそ」


広い店内で話する事じゃねーだろって思うけど。
これから2人一緒に暮らしてく中で、お互いの事知るのは大事な事だろ。


「アイス買って帰ろうぜ」
「いいねー、食後のデザート」


何も知らない人間と一緒に暮らすの煩わしいって思ってた。
でもルキ君となら、知りたいって思う相手だから。

だから知ってね、俺の事も。



END



「うわ、甘っ!これ甘っ!!」
「美味しいじゃん」
「甘すぎ…辛さが一つもねぇ…」
「そこがいいのー」
「(今度からハヤシライスにしよう…)」



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