敏京



「京君、ちゅーしよ」
「…何言うとんお前。此処スタジオ。もっと言うと廊下」
「うん、知ってる。今誰もいねーじゃん。ねーしよーよ。スタジオに缶詰でとっち限界!元気ちょーだい?」
「はぁ?我儘言うなや」
「やだ。しよ?こっち来て」
「ちょぉ、敏弥…!」


京君が自販機か喫煙所か何かに行く為にスタジオの部屋を出て。
その背中を追い掛けて捕まえる。


何日も曲作りにスタジオに籠もって。

少し疲れた感じの京君の顔。


仕事と言えば仕方無いけど、まともに京君に触れられない日が続いたし。


京君に触れたいキスしたい抱っこしたい。


訝しげに俺を見る京君の手首を掴んで引っ張って歩いてく。

京君は振り解かなくて、大人しく付いて来て。


廊下の行き止まり。
人目に着かないトコで京君を壁側に押し付けて、逃げられない様に両手で壁に手を付いて拘束。


「此処なら絶対誰も来ないから。ね?」
「…好きにしー」
「うん。だーい好き。京君」
「ん…っ」


視線を逸らして、ぶっきらぼうに言う京君に笑みを浮かべて。

頬に手を当てて自分の方へ向かせると身を屈めて京君の唇にキス。


柔らかい唇に角度を変えながら何度も吸い付くと。
京君からも誘って来て、俺の服を掴んで来た。


そう言うトコが、可愛すぎ。


京君の薄く開いた唇から覗いた舌に、唇を舐められて背中がゾクゾクした。


顔から手を離して、少し背伸びした京君の腰に手を回して支える。


「とし、」
「京君可愛い…」
「…可愛いないわ、ボケ」


お互いの唇を貪って、少し唇を離すと京君はじっと俺を見上げてて悪態を吐く。

もうホントに全てが可愛くて愛しくて、どうしようもない。


もう一回キスしようと身を屈める時、それを察知した京君も背伸びして来て。

思わず悪戯心が出て来て、屈むのを止めてみたら。

キスするつもりだった京君は届かなくて眉を寄せた。


「かーわいい、京君」
「敏弥ムカつく」
「…ッ、きょ、」


ムッとした表情を見せて、俺の胸元の服を掴んで思い切り引き寄せられた。

よろめきそうになって、壁に手を付いて身を屈めると。
京君に、さっきの仕返しとばかりに唇に噛み付かれた。

甘噛みみたいな感じだけど。


すぐに離された唇と共に、身体を押し退けられて。
負けずに京君の背中に腕を回して抱き締めた。


「退けや」
「御免って。怒らないで?」
「嫌」
「だって可愛かったんだもん。京君がちゅーする姿」
「死ね。ホンマ嫌い」
「やだやだ。可愛いのはホントだから否定はしねーけど、嫌いはやだ。怒らないで。ね?」
「……」


京君の身体をぎゅっと抱き締めて、頭に擦り寄る。

嗅ぎ慣れたシャンプーの匂いがして、髪にちゅっとキスをして頭を撫でて宥める。


顔を埋めた胸元から、京君の溜め息が聞こえて。


「ホンマ敏弥ムカつく…」
「御免って。もうしないから。ちゅーさせて」
「嫌」
「って言ってもするけどね」
「ちょ、」


身体を少し離して京君の顔を見下ろしても。
不機嫌そうな表情は変わらずで。


両手で京君の顔を挟んで、自分の方へ向けさせる。
そのまま柔らかく唇を合わせて。

宥めるようなキスを繰り返す。


「…機嫌直して?」
「知らん」
「もー」
「休憩終わるし。行くで」
「えぇー」
「えー、ちゃうわ。オラ、早よ」
「……」


そう言う京君に、手を取られて。
するっと俺の脇を擦り抜けて、俺の手を掴んだまま廊下を歩く。


後ろから京君の小さい背中と。
繋がれた手に視線を落として、笑みが零れた。


もう、可愛すぎて。
何もかもが。


「京君、大好き!」
「うわッ、危ないやろボケ!」


後ろから京君を抱き締めると、少しバランスを崩して持ち直す。


「…充電出来たん」
「うん、今日の分だけね」
「今日の分だけかい」
「24時間京君とくっついていたいから、俺」
「うわ、ウザいわーそれ」


首を巡らせて、後ろを振り向いて笑う京君。

京君も、俺で充電出来てたら嬉しいな。


大好きだから。




20100922

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