崩壊5※/玲流





あれからどれぐらいの月日が経ったんだろう。

いくら探しても、もう貴方の姿は無い。


仕事をしている方が気が紛れるから、食べる事も寝る事も疎かに打ち込む。
事務所に用意されたマンションの部屋で。


京さんと一緒に暮らしていた時の荷物に囲まれて。


何で。
何処にいるの、京さん。


心に穴が開いたような喪失感。


寂しい。


会いたい。


京さん。


情緒不安定な俺を心配して、れいたはよく勝手にやって来る。
取り留めの無い話をして適当に雑誌読んだり過ごしてる。

そして夜中になる前に帰って行く。

彼なりに気を遣ってる事はわかる。


れいたは優しいから。


だから。

仕事終わり、いつもの様にれいたは俺を車で送ってくれて。
結構遅い時間だから玄関で止まった。


「じゃールキ。もう夜中だしこのまま帰るわ」
「何で」
「…1人でいたくねぇ?」
「うん」
「そっか」


そう言うとれいたは靴を脱いで、お邪魔しますと上がって来た。
特に遠慮する事も無く、リビングへと通じる廊下を「ルキはこれから仕事すんの?寝る?」って俺に話し掛けながら歩くその背中に手を伸ばして。
後ろから抱き着く。


「………」
「今日泊まっていけよ」
「……それは、純粋な誘いじゃねーんだろうな」
「まぁね」


多分れいたは、こうなる事を何処かで覚悟はしていたんだろうな。
大きく息を吐いて、俺の方へと向き直った顔は真剣な表情で。


れいたは優しいから。
俺の寂しさを埋めてくれると思った。
そんな打算的な考えで誘ったんだ。


「シャワー貸して」
「いいよ。一緒に入る?」
「男2人入れんのかよ」
「どうだろ。前と違って狭いかも」


軽口を叩きながら、前の家では京さんと一緒に風呂に入ったな、と思い出して泣きそうになる。

男2人で入っても余裕のある風呂だった。


俺の表情の変化を読み取ったのか、れいたが眉を下げながら笑って。


「やっぱ恥ずかしいから1人で入るわ」
「…うん」


馬鹿だな、本当に。
京さんとの事忘れられる訳ねーのに。
















「俺、男相手にやり方あんまわかんねーけど…」
「…れいちゃん、女と後ろでした事ある?」
「一応は」
「じゃ、それと似たような物だよ。俺の方が慣れてると思うから乱暴にしても大丈夫」
「…そっか」


2人して裸でベッドのシーツに沈む。

俺の上にいるれいたの首に腕を回してグッと引き寄せると、覆い被さって来て唇を塞がれた。

何度か軽いキスをされて、れいたの舌が口内へと侵入して来て舌を絡める。

キスをしながら、れいたの指が耳から首筋、乳首へとなぞって。
その感覚がゾクゾクと皮膚を這う。

触れるか触れないかの指使いにもどかしさと快感が入り混じる。


「や、だ…ッ、優しくしないで…、酷くして」
「ダメ。これが俺のやり方だから。ルキが覚えて」
「やだ…っあ…!」


れいたの愛撫はとことん優しくて。


身体がふわふわする快感に飲まれる。


違う。

こんなんじゃない。

もっと乱暴で、自分勝手で、俺を痛め付けて。


声。

肌。

指。

舌。

キス。

セックス。


全部全部、貴方とは違う。


「……ッ、」
「………ルキ、もうやめる?」
「や、め、ない…っ」
「でも、」
「いいから…!!」
「………」


れいたは京さんじゃない。

いくら痕跡を探しても、京さんとは違う事を認識するだけ。


嗚咽を漏らして顔を腕で覆った俺にれいたは優しく声を掛ける。

泣き喚いても続けて欲しい。


こんな俺に優しくしないで。


「…そーかよ」
「れぃ…ッ、あ…!」


れいたの声がしたと思ったら、足を広げられて胸に付くぐらい折り曲げられる。
れいたの眼下に全て晒される格好でそこにれいたは顔を寄せて、穴にぬるっと舌の感触。

そんな事、された事無かったからビクッと身体を震わせて。
拒否したくて手を伸ばすけど、れいたにがっちり足を掴まれて逃げられない。


「やめ、やだ…ッ、ぁあ…!」
「女にするようにっつったのルキだろ」
「ローション、あるから…!」
「後でな」
「ッひ…!あ、ぁ…っ」


背中を仰け反らせて悶えながら、後ろの緩い快感に喘ぐ。

首を振ってその刺激に耐える。


ぐりぐりとれいたの舌に抉られて、挿入とはまた違った気持ち良さに口から勝手に声が漏れた。


「あ、指1本だったら簡単に入るな」
「は…っ、あ…!もっと、奥…!!」
「気持ちいいの?」
「ん…ッ、ぅん…!!」


れいたの指が唾液に濡れた俺の後の穴をなぞって、ゆっくりと挿入された。
久し振りの行為。

身体は喜ぶように指を締め付ける。


れいたの唇が内腿に吸い付いて。
出し入れされる度、足が快感に震える。


「ルキ、ローション何処」
「ん…」


荷物の中にあったやつ。
これから必要だからって何本もストックしてたのに。

枕元に置いてあったそれをれいたに渡す。


れいたはボトルを開けると指にローションを垂らしてまた中に挿入して来た。


ローションでしつこいぐらい後ろを解されて、柔らかくなったそこにれいた自身が当てがわれる。
その感触に期待に後ろがヒクつくのがわかる。


「…ん…ッ、あ、あァ──!!」
「ッはー…ルキの中、気持ちいい…」
「れぃ、た…ッ、動いて…!」
「んー。ルキは何処が気持ちぃの?」
「や…っ、いいから、好きに…ッあ!」


一気にれいたのが中に入って来て、背筋がゾクゾクする。

息を吐くれいたを見上げて腰を揺らすけど、れいたは俺の足を抱え直してゆるゆると中を突いて来た。

何度か角度を変えて、俺のいい所を探るように腰を動かす。

緩い快感に悶えながら気持ちいい所を掠めた瞬間、勝手に腰が跳ねて声が漏れたから。
れいたがその変化を見逃す筈が無くてそこを集中的に突き上げて来た。


「や…っ!そこやだ…!!あっ、あ…!」
「は、気持ち良さそうじゃん…!」
「ダメ…ッ!!」
「逃げんなって」
「あぁあぁ…ッ」


さっきまでとは違う、強い快感になす術無く喘いで。
何も考え無くなるぐらいその刺激に支配される。


身体が上へと摺り上がろうとしてもれいたにまた深く繋がって、この快感に支配される感覚がいつものようにあの人を求める。


「あっ、こ、んな、すぐイくからぁ…!!」
「へぇ。ルキここが弱いんだな」
「…ッ、」


そしてすぐにあの人とは違うって現実に戻る。

意識してなくて、勝手に涙が溢れて零れ落ちる。


「ルキ、」
「あ…ッぁ、もっと、ねぇ、乱暴にしていいから…!!」


俺の事なんて気にしないで。

好き勝手に扱って欲しい。


そんな願望も叶わない、この行為。


れいたは髪を優しく撫で上げて、また俺のいい所を狙って腰を打ち付ける。


「イく、あッ、イっちゃう…!!あ──っ!!!」
「……っ、は…、」


背中を反らせて喘ぎながら自分の腹へと精液を飛ばす。

イく瞬間、れいたのを締め付けて。
眉を寄せてれいたの動きぐ止まった。


イって脱力して、荒く息を吐く。


「…ルキ大丈夫?」
「………」


何で俺の事気遣うの。

俺が最低な事してるってわかってんだろ。

京さん以外に足を開いて。

京さん以外でもイくんだな、俺。


「れいたも、イって…、」
「……じゃ、ちょっと我慢して」
「ん…ッ」


泣く俺の髪を優しく撫でて止まってた動きを再開させて。
れいたの律動が、俺を気遣うだけのセックスから雄の本能の動きに変わる。


喘ぎながら受け止めて、涙で視界が滲む中れいたの顔を見上げる。


京さんじゃない。

何もかも違う。

ねぇ、何で?


れいたの激しい動きから、いきなり引き抜かれて腹の上に生暖かい感触。


中に出して欲しかったな。


れいたの指が、俺の涙を拭って。
そのまま優しいキスが降りて来た。


全てに、泣きたくなる。


















「じゃールキさん。身体の関係もなった事だし。付き合う?」
「…は?」
「え、もしかしてやり逃げ?それは酷くねーかルキさんよ」
「いや、だって、俺…」
「うん。京さんの事好きだよな。ヤッてりゃわかるよ」
「……ごめん」
「いいって。俺もケジメみたいなもんだから。中途半端な気持ちでルキに付き合ってる訳じゃねーし」
「………」
「関係はっきりさせとく方が、色々言い訳出来るじゃん」
「…事務所にバレたら、ヤバいんじゃねーの」
「それなー。ま、2人の秘密って事で」
「は、」
「だから、これから宜しく、ルキ」
「……れいたって馬鹿だよね」
「ルキには負けるかなー」


笑って、俺の身体を引き寄せて抱き締められた。

何回、れいたの胸で泣いたんだろう。

あと何回、貴方の事を想って泣くんだろう。


未練だらけの俺に優しく手を差し出すれいたを突き放したいのに。
その手に縋り付く俺はなんて馬鹿なんだろう。


ねぇ、京さん。


会いたい。




20210323

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