京流
京さんとオフが重なった時。
前からわかってたから、京さんと買い物行きたいって言ったら、OKもらって。
色んな店を見て、買い物して、飯食って。
久々に買い物したし、何より京さんと一緒だし、めちゃくちゃ楽しい。
「あ、京さん。ここ寄ってっていいですか?」
「あーうん」
俺がいつも行ってるアクセ店まで歩いて見つけて。
京さんを呼び止めて中に入る。
煙草を吸ってた京さんは、俺が渡した携帯灰皿に煙草を入れて店内に入る。
「ネットで新作とかチェックしてたんですけど、なかなか店舗まで来れなくて」
「えぇ趣味やん」
「でしょ、京さんに似合いそうなのもありますよ」
「ふーん」
久々に来たら、いつも接客してくれる人と少し話す。
京さんも店内の商品を眺めてて。
何か欲しいなー。
買おうかな。
つーか、指輪とかこの前、京さんに欲しいから買って下さいって言ったら却下されたんだよね。
まぁメンバーが新しい彼女出来たーとか言って、真新しいシンプルな指輪を左手薬指にしてたのが羨ましくて。
素直にそれ言ったら、京さんに『アホか』って一蹴されたんだけど。
京さんのケチ。
「るき」
「えっ、はい」
そんな事を思いながら、ディスプレイされた指輪を眺めて、京さんの方を見る。
京さんがいつの間にか隣にいて、名前を呼ばれるとは思って無かったから、声に出してたのかなって一瞬焦る。
「買ったるから、10秒で選べ」
「は!?え?」
「はい、後8秒ー」
「え、ぇ、すみません一番シンプルなのでXX号ありますか!?」
京さんの言葉に焦って食い気味に店員さんに聞くと。
少々お待ち下さいって言われて、差し出されて来た指輪は何の装飾もない、シンプルな指輪。
右手薬指に嵌めると、サイズもピッタリだった。
普段だったらそんなシンプルなの嵌めたりしねーんだけど。
「京さん、これがいいです」
「うわ、ホンマに選びよったわー」
そう言いながら、会計をお願いさて、マジで買ってくれる京さん。
え、いいの?
マジでいいの?
包んで貰った小さい紙袋を受け取って、店内を出る。
「京さん有難う御座居ます」
「んー」
「大事にします」
「当たり前やろ」
京さんが買ってくれたって事実も嬉しいんだけど。
俺が少し前に言った事を、流してたと思ったのに覚えててくれたって事が嬉しい。
あの後、晩飯食って帰って、リビングで買った物を床に置く。
買った服よりも何よりも、先に京さんに買って貰った指輪を開ける。
「京さん京さん」
「あー?」
「京さん付けて下さい」
「は?お前に買ったんやからお前が付けろ」
指輪が入った箱を、ソファに座って煙草を吸う京さんに差し出す。
京さんは訝しげな顔をして、俺を見下ろした。
「や、京さんが付けて下さい、俺に」
「はぁ?何で」
「漏れなく俺が喜びますから」
「お前が喜んだってしゃーないやん」
「ねー、京さん、付けて?」
「……」
強請る様に甘えた声を出して、京さんの足元に擦り寄る。
もういいじゃん、俺にこれを買ってくれた時点で、十分甘やかしてんじゃん。
指輪付けてくれたって、変わらないですって。
京さんは俺がしつこく強請ると、キレるか諦めるか。
今日は後者であって欲しい。
舌打ちをした京さんが、指輪の箱を奪って。
ジェルネイルが施されたキラキラした爪が見える左手を乱暴に引き寄せられて。
無理矢理指輪突っ込まれた指は、中指。
いや、俺薬指のサイズに合わせて買って貰ったから入らねーって。
「痛ッ、痛い、京さんそこじゃねー!」
「うわ、入らん。お前サバ読んだんちゃうんかサイズ」
「違う違うそこ中指です!薬指に付けて下さい!」
「めんどい奴やなー」
舌打ちをした京さんは、わざと中指に突っ込んだ指輪を次は薬指に嵌めてくれた。
うん、サイズはピッタリ。
すげー嬉しい。
左手を翳して、指輪の付いた薬指を眺める。
「…ニヤニヤすんな、きっしょい」
「だって嬉しいんだもん!ねー。何で買ってくれたの?京さん」
「いらんなら返せ」
「いりますいります!明日メンバーに自慢します!」
「指切り落としたるわ」
「やです!もう外さねー」
眉を潜めた京さん。
好きとかそう言うの全く言ってくれない京さんが。
時々見せる行動が好きで好きで堪らない。
だから、俺がお強請りするのもやめらんない。
だってこんなのしてんのって、京さんの物って感じがして。
超好き。
もっと俺を縛り付けて、ね。
終
20120318
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