2010〜2011@※/京流
31日。
名古屋で京さんのライブを観て。
観てって言うか、一番後ろでいたからステージは観えにくかったんだけど。
お立ち台に上がった時に微かに見える京さんのシルエットがめちゃくちゃ格好良い。
年末年始、俺の所の事務所が休みでよかった。
こうしてライブ来れるしね。
ライブ独特の箱内から、外に出ると一気に冷え込んで肩を竦めた。
ファンが出て来る前に、さっさとホテルに帰ろ。
ハットを更に深く被るような仕草をして、サングラスをかけてタクシーを拾うべく大通りに向かう。
いつもはスタが車用意してくれてるし、ホテルも取ってくれてんだけど。
捕まえたタクシーに乗り込んで、自分がチェックインしたホテルを言って、背凭れに身を任せた。
ホテルに向かうまで、携帯を開いてチェック。
何件かメールが入ってるけど、京さんからは無し。
一応ライブ始まる前にメールしたんだけどな。
溜め息を吐いて、流れる景色に視線を移す。
明日は正月。
京さんのライブ行くんだけど昼間どうしよ。
正月って店とか開いてんの?
名古屋。
でも一人で観光してもな。
場所もわかんねーし。
京さんにはあぁ言ったけど。
やっぱ呼んでくんねーかな、ホテルに。
昔はめちゃくちゃ呼ばれたし、行かなきゃって思いしか無かったけど。
今は行ったら迷惑なんじゃねーかとか考える。
良くも悪くも京さんの存在が近くなったから。
鳴らない携帯を閉じて、目的地に着いたタクシーの運転手に料金を払って降りる。
飯食いに行くのもなー…取り敢えず、ノーパソは持って来たしやりたい仕事を少しやって寝るか。
なんて考えながらフロントに鍵もらって部屋へと向かう。
「はー…」
部屋に入って、ハットとサングラスを外す。
暖房つけたばっかだからまだ部屋は寒い。
今日は大晦日。
年越し蕎麦も食ってねーし。
ホテルで一人年越しだしな。
………。
……やっぱ会いてーな。
でも京さん今日ライブで、明日もライブなんだよなー…。
ぐるぐる頭ん中で考えながら、部屋に入り携帯を開く。
ベッドに座って、見慣れた京さんの電話番号を呼び出してじっと見つめる。
今はそろそろ会場から出る時間か。
そしたらもうすぐ1年が終わる。
携帯を置いて、煙草を吸って一服。
俺が勝手に来てる事なんだけど、やっぱ会いたい。
一緒にいたい。
そう思う様になったのは何でだろ。
昔はそんなの気にしてなかった。
今の方が忙しい筈なのに。
ま、答えは簡単だけど。
京さんが好きだから。
この人が、本気で好きになった人って言うんだろうなって思う。
煙を吐き出し自嘲気味に笑って立ち上がる。
咥え煙草のまま、自分のノートパソコンを取り出して。
ドレッサー兼テーブルに置いて繋げ様としたら。
ベッドに置いた、携帯が鳴ったから一瞬驚く。
慌てて携帯を取って、通話ボタンを押す。
相手は誰かなんて見なくてもわかった。
「もしもし…っ」
『何や遅いわ。何しとん』
機械を通して聞こえる、少し掠れた高い声。
疲れてんのか、不機嫌そうな。
「御免なさい。パソコン繋げようと…」
『仕事?』
「一応」
『ふーん…』
「京さんのホテルって何処ですか?」
『は?』
「行きます」
『え、来るん?』
「えっ、ダメなんですか?」
呼び出しの電話だと思って浮かれた気持ちが一瞬下がる。
気紛れで電話して来たのかな、とか。
声聞けるだけでも嬉しい筈なのに、今はそれだけじゃ足りない。
会いたいって思ってる最中だったから、尚更。
『やっぱ名古屋来とんかお前』
「ライブ観ますよ、そりゃ。凄かったですホント」
『あっそー』
「……会いたい、です」
『…○○のXXXX号室』
「ッ、すぐ行きます!」
『お前…ほんまアホやなぁ』
電話口で、京さんが笑う気配がした。
こっちもテンション上がって嬉しくて。
ほとんど灰になった煙草を灰皿に押し付けて。
京さんと二、三言葉を交わして携帯を切った。
年越し、京さんと一緒に過ごせる。
嬉しい。
さっき帰って来た部屋を、携帯、財布を持ったのを確認して出てく。
アホでいいよ。
何だかんだで俺を呼ぶ京さんも、お互い様じゃん。
嬉しい意味でね。
[ 48/442 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]