西村さん家のゴキ/京流
朝、起きてるきがご飯を作っとる間、るきが淹れた珈琲を飲みながらボーッとテレビを見る。
ニュースしかやってへんし、つまらんなー。
起きたばっかで何もやる気せぇへんなー。
珈琲を啜りながらるきが朝飯作るんを待つ。
起きたばっかやのによう動くわぁー。
似た様な時間に仕事やから、起きた時間も一緒やったけど。
寝る時間バラバラやしな。
「京さん今日は遅いですか?」
「…んー……わからん」
「俺も何時になるかわからないんで、晩ごは…って、あ゛ぁあぁ゛…ッ!!」
「…ちょ、煩いボケ」
るきが喋っとったら、いきなりるきが大声を上げた。
「うわ!ありえねー!京さん京さん!何か叩く物!下さい!」
「はぁ?何やの」
「ちょ、逃げる逃げる!ゴキブリ!マジありえねー!何で高層マンションの最上階に出んの!」
「あぁ…」
るきがキッチンで一人ギャーギャー騒いどって、眉を寄せて振り向く。
何かと思ったらゴキブリが出たらしい。
叩くモンったってなぁ…特に何もないやんなぁ。
ソファに座ったまま、キッチンからテーブルの方に視線を戻す。
パッと見、見渡してもゴキブリ叩く様なモンはなかった。
「踏み潰したらー?」
「俺このルームシューズお気に入りなのに!」
「脱げ」
「素足は厳しいでしょ!ちょっ、逃げ、あ、あー…棚の奥に入りやがった…」
「あーぁ、早よ踏み潰さんからやで」
「つーか綺麗にしてる筈なのに何でゴキブリ出んのマジありえねー…」
「汚いからちゃう?」
「…そりゃ、キッチン棚の奥まで細かくはやってないですけど…あー…ショック。殺虫剤常備してた方がいいですね」
ゴキブリよりも、ゴキブリが出るキッチンって言う事が綺麗好きなるきは嫌らしい。
ブツブツ言いながら、また朝飯を用意し始めとるようやった。
「京さーん。朝ご飯出来ました」
「んー」
るきからの言葉で、テレビを消して立ち上がる。
テーブルには白米と味噌汁と鮭と厚焼き卵が並んどった。
「はー…これってゴキブリホイホイのヤツ買った方がいいですかね?」
「あー、うん」
「絶対インテリアに合わないですよねー」
「うん」
るきと向かい合わせに座って、食べ始めてもるきはまださっきのゴキブリが出た事に何か言うとった。
から、適当に返事。
1匹おったら30匹はおると思えって言うしな。
すぐにどうこうは出来んやろ。
職業柄、家空ける事多いけどキッチンはるきがよう使うし。
そんな事を考えながら、黙々と飯を食う。
毎日食べ慣れた味。
適当に返事をしとってもるきの口は止まる時がない。
食べながら煩い奴や。
「あ、そう言えば俺ファンからよくゴキブリって言われるんすけど」
「え?ゴキブリっぽいから?」
「や、COCKROACHって曲作ってから…って、俺ゴキブリぽくないですよ!?」
「何か…しぶとそうやん。ゴキブリ並みの生命力みたいな感じで」
「そりゃしぶとく京さんにしがみつきますけど…」
「うわ、僕ゴキブリと暮らしたない。出てけ」
「絶対嫌です。言っときますけど、俺がゴキブリだったら京さんはゴキブリホイホイですからね!」
「………」
「…何ですかその物凄く嫌そうな顔」
また変な事言うとるなコイツ。
コイツの思考回路って突拍子もないと言うか、ワケわからん。
「アホな事言うとるなぁこのゴキブリはって思って」
「えー、京さんにまでゴキブリ言われるんすか俺」
「自分から話振ったんやん」
「あ、確かにそうですね」
眼鏡を掛けた奥の目が笑みに細められる。
確かにるきは僕に色々されてもしつこく寄って来たしな。
ゴキブリって、ファンはおもろい事定着さすなぁ。
「もう俺、京さんだったら凄い勢いで捕まりに行きますよ」
「僕をゴキブリホイホイにすな」
「だから、絶対逃がさない様にがんじがらめにしてて下さいね。死ぬまで離れませんから」
「……」
ホンマ呆れる。
呆れるけど、そう言うて笑うるきが僕は気に入っとるから。
僕に引っ掛かっとんや、前からやんそんなん。
もう捕まえとるしな。
終
20110119
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