朝起きたら床(毛布付き)/京流
仕事が終わって真夜中。
24時間開いてるスーパーに寄って帰って来ると、玄関には京さんの靴。
飯は一応作ってったし、食ってくれてっかなー。
俺はちゃんと食ってねーけど、もう夜中だし疲れたし食う気しねーからいいや。
軽いモンなら食ったし、アレ買ったしな。
そんな事を思いながら、ブーツを脱ぐ為に廊下に置いた買い物袋をまた手に取って。
リビングの明かりだけを頼りに廊下を歩く。
「京さんただいまー」
「…おー」
「ご飯食べました?」
「食った」
リビングの扉を開けると、京さんはジャージを着てソファに座ってDVD鑑賞中。
部屋ん中は暖房が効いて暖かい。
加湿器もちゃんと作動してるし。
京さんの後ろ姿を見ながら、キッチンの方へ向かってテーブルに袋を置いた。
「京さん明日は?」
「…昼からー」
「あ、じゃぁ俺と同じですね。今日アレ買って来たんですよ。解禁になったボジョレーヌーボー。飲みます?」
「赤ワインの?」
「はい」
「ふーん。淹れて」
「はーい。つまみも作りますね」
「ん」
スーパーに行ったら見つけた、この時期に解禁になる赤ワイン。
京さん赤あんま飲まねーし、俺もワイン苦手なんだけど毎年の事だし一回は買っとこうかなって。
テーブルの上に買った物を並べていって、ワインの瓶を取り出す。
2人分のワイングラスを取って。
ワインにはクラッカーだろって思って買ったクラッカーを剥いて、皿の上に小分けして並べて行く。
その上に溶けるチーズを乗せて、オーブンレンジん中へ。
最近はネットで色々調べられるから楽だなーとかそんな事思ったり。
チンしてる間、グラスとワインを持って京さんの元へ。
「この映画面白いですか?」
「まぁ普通ちゃうー」
「へー。あ、京さん開けて下さい」
「はいはい…」
画面に目をやると結構グロいシーン。
面白そうだから、また借りよ。
京さんにワインとコルク抜きを渡すと、怠そうに身体をソファの背凭れから起こして瓶を受け取った。
京さんの方が確実力強いんだもん。
またキッチンに行って、レンジの中を見ると、イイ感じにチーズが溶けてた。
美味しそうな匂い。
それを持って来ると、ワインは開けられてて。
「あ、有難う御座居ます」
「これ美味いん?」
「どうなんですかね?一応、高い方選んで買って来たんすけど…安いのとか1000円以下だし、味もそれなりかなって」
「ふーん…何やこの時期んなるといきなり出て来るよなコレ」
「ですよねー。まぁ流行りは一応押さえておきたいなって」
「アルコール弱いのにか」
「あはは」
京さんの足元のラグに座って、2人分のグラスにワインを注ぐ。
少し香るワイン独特の匂い。
まぁ、俺はあんま味とかわかんねーけど。
飲めるか飲めねーか、だし。
「じゃ、京さん乾杯」
「ん」
京さんにグラスを渡して、軽くグラスを打ち付ける。
軽快に鳴った音。
何か、時々見てる光景だしワインにはワイングラスだけど。
京さんとワイングラスってすげーミスマッチな気がする。
いつも。
一口飲むと、意外に飲める。
口当たりがまろやかな感じだった。
「…意外にイケるやん」
「ですね。美味しい」
「…おい、飲み過ぎて潰れんなよ。知らんぞ」
「大丈夫ですよー。頑張ります」
「は」
「あ、京さんつまみも食べて下さーい」
美味しくて、ちょっとペース早めたら京さんに注意されたけど。
そんなに注いでねーし、早々潰れねーだろ。
「…やっぱ潰れとるやん」
「つーぶれてませんよー」
「ウザ…」
「ウザくないでーす。きょーさんもっと飲みますー?」
「いや、もういらんし」
「えー」
「………」
何か気分がふわふわして来てテンションが上がって。
京さんの足にベッタリ寄り添う。
京さんからはうんざりした声が聞こえて来たけど、今は全然気にならねぇ。
あーもう京さん好きー。
「きょーさん、きょーさん」
「…なん」
「すきー」
「はいはい」
グリグリ足に顔を擦り寄せたら、京さんの手が俺の頭をガッと掴んだ。
「もう寝たら酔っ払い」
「きょーさんも!」
「いや僕まだ映画観るし」
「あー俺も俺も」
「いや、お前完璧観てへんやん。足から離れぇや」
「嫌です!」
「僕も嫌やわ酔っ払い死ね」
「ふふー」
「笑うなキショい」
とか言いながら、京さんは嫌そうな顔をしてても振り払わない。
そう言うトコ、好き。
甘えさせてくれんの。
普段ここまでベッタリしねーけど、アルコール入ると怖い物なしになんね。
酒の力ってすげー。
「…素面んなったら覚えとけよ」
地を這う程の低い声で呟かれて、一瞬現実に引き戻されかけたけど。
京さんの足にしがみついて俺は寝ます。
おやすみなさい。
終
20101130
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