我儘で甘えた/玲流
そろそろかな、ってぼんやりと思いながらルキの背中を見る。
ワーカーホリックな恋人は、オフの日でも気になる事があればずーっと仕事してる訳で。
夜に飯食った後、パソコンにかじり付いてるルキ。
まだ自室に籠ってないだけマシ。
自室に籠ると外の世界全部遮断して没頭しちまうから。
ルキがパソコン画面にかじり付いてて。
その後ろのソファで片足をソファに上げてその上の膝に丸まって寝てるコロンがいる中、根詰めてるルキの背中。
頭を掻いて、苛立った仕草でルキが煙草ケースからまた煙草を取り出した。
パソコンの隣に置いてる、ルキが選んだロックな灰皿は結構な大きさなのに満杯になってて。
肺ガンで死ぬ気ですか、ルキさん。
俺の膝で気持ち良さそうに寝てるコロンには悪いけど。
そっとコロンをソファに下ろして(起きて欠伸しながら伸びてた)ルキに近づく。
普段着のラフなルキの格好は、最近痩せて来たルキのラインを顕著に醸し出してて。
眼鏡を掛けて視界はクリアに見えてる筈なのに眉間にめっちゃシワ寄ってる。
咥え煙草のまま肘付いてパソコン画面と睨めっこ。
「お前、吸い過ぎ」
「…だって出来ねーんだよ」
「休めば?それ締め切りもう少し先っつってたじゃん」
「んー…」
俺の方をチラッと見て、またパソコン画面に視線を戻したルキに苦笑いを浮かべながら、ルキの指に挟まれた煙草を取り上げて、満杯になった灰皿も持ち上げる。
ルキが不満そうな顔をして俺を見た。
「お前、自分が禁煙成功したからって何だよ」
「はいはい、何箱吸う気だよヤニで壁汚れんの嫌とか言ってた癖によ」
「……」
舌打ちをしたルキを無視して。
吸いかけの煙草を消して、ゴミ箱に吸い殻を捨てる。
キッチンで、灰皿用のスポンジで洗って水滴を拭く。
ルキと一緒に暮らすようになって、綺麗好きのルキは部屋汚すとキレるし。
ルキがやってた事を何となくやってみたら癖になって、今では身に染み付いた事。
まぁ洗って戻って来たら、案の定ルキは新しい煙草吸ってんだけどね。
でも、さっきまでルキのただならぬオーラを感じて近寄らなかったコロンが、ルキの傍で尻尾振って撫でられてんのを見ると。
ルキの仕事に対する集中力は一旦途切れたっぽい。
またテーブルに灰皿を置いてルキの近くに座る。
「お前禁煙しねーの」
「出来たらしてる」
「そりゃそうだ。けど、あんまイライラすんなよー?お前が完璧主義なのも知ってるし、妥協しねートコも好きだけど。オフの日ぐらいは休めっつの」
「だって気になんだよ」
「コロンだって寂しがってるし」
「……」
ふ、とルキが撫でてるコロンに視線を移す。
伏せられた睫毛、コロンを見る表情が和らぐ。
また煙草を取り上げて、ルキの顎を持ち上げて唇に吸い付く。
いつもの、ルキの煙草の味。
綺麗になった灰皿で煙草を揉み消す。
「ベタに煙草吸いたくなったら、キスしてやろうか」
「冗談。パソコン画面見えねーだろ」
「見なくていいじゃん」
「んな片手間なキスいらねーから」
「…言うねールキさん」
コロンを抱えてニッと笑ったルキは、さっきまでピリピリしてたルキとは打って変わった雰囲気で。
ホントね、放置されて寂しいのはコロンだけじゃねーっつー話。
ワーカーホリックな恋人を持つと大変だね。
そう言うトコにも惚れてるってのと、身体が心配って言う2つが混じり合って。
「あーもう目疲れた」
「そりゃ何時間もパソコン見てたらな」
「れいちゃんお風呂入れて」
「もう入れてる」
「マジ?さっすがー」
「当たり前じゃね」
コロン抱っこしたまま、眼鏡を外したルキが俺の方に凭れかかって来たルキ。
ワックスがついてない髪は煙草の匂いが染み付いてた。
一気に甘えたに変わるルキ。
こう言うの、堪んないね。
だからコイツと一緒にいて、支えたいって思う。
恋人には甘いんでね、俺。
終
20120602
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