どうしようもない/京流




夕食時。
何かるきと暮らし始めてから、るきが作る様になった飯。
別にそんなんせんでもえぇやんって思ったけど、るきはるきで僕の為に何かしたいからって。
まぁ、好きにさしたんやけど。
そっから仕事終わったら普通に家に帰るんが当たり前になって来た気ぃする。

るきと2人、並んでるきの手料理食べる空間は嫌いや無いから。
楽やねん。
…慣れって怖いな。


「京さん。明日はご飯どうしますか?俺打ち合せで遅くなるんですけど…」
「んー…明日は後輩と飲みに行くからえぇで」


一緒に飯食うと明日どうするかとか、恒例の質問。
一緒に食っとらん時はメールが来たり。
マメな奴やな。

明日は久々に後輩と時間がおうて、集まるから飯はいらんし。

そう伝えながら、焼き魚の骨取りよったら。


「…後輩と飲みに行くんですか?」
「せやで。最近交流持ち始めた奴もおるし、何か集まるらしいから」


明らかに声のトーンが下がったるきをチラ見したら、僕を見よる視線と目が合った。
何やねん、その不満そうなツラ。


「………」
「………」
「…早く帰って来て下さい」
「何でやめんどい」
「夜遅かったら心配ですから」
「嘘吐け」
「……仲良いんですね」
「うん」
「………」
「………」


わっかりやすい空気になったるきとの空間を無視って、黙々と飯食ってった。
るきもまた押し黙ったまゆっくり食べ出したけど。

辛気臭い空気出すなや、食事中に。
まぁ理由はわかるしガキ臭いモンやから、ほっとくけど。




食べ終わって箸を置いて、煙草を咥える。
るきもそろそろ食い終わるらしいて、火ぃ点けて横向い煙を吐き出す。


「…京さん」
「なん」
「俺も行っ…」
「無理。つーかお前仕事あるやろ。来んな怒るで」
「…店何処ですか」
「向こうに任しとるから知らんし、教えたら来るやろお前。キモいストーカーか」
「……」


るきの思考回路なんか単純で、すぐわかる。
今も面白くないって顔しとるし。

テーブルの上に置いとった灰皿を引き寄せて灰を落とす。


「俺も京さんと飲みに行きたいです」
「知らん。メンバーと飲みに行ったら」
「京さんとがいい」
「つーか、お前後輩に嫉妬しとるだけやろ」
「……そう、ですけど」
「ガキ」


鼻で笑うと、るきは拗ねた顔して視線を下に落として、2人分の食器を片付け始める。

アレやで。
そんな顔しても可愛い無いし。
嫉妬とか、アホくさ。
飲みに行くだけやん。


「何か…」
「なん」
「京さんが大事にしてる後輩がいいなーって」
「ふーん」
「信用してるってことなんで」
「せやな」
「羨ましい」
「はッ」


ぽつぽつ喋り始めるるきの言葉は、やっぱり稚拙でどうしようもなくガキ臭い。

何やねん。
後輩と飲みに行くんで不機嫌なるとか、何処の束縛癖のある痛い女や。
キモい。


「なん、後輩と同じ様に大事にされたいん」
「え、まぁ…京さんの信頼度とか、いいなぁって」
「へー…なら僕後輩と一緒に暮らす趣味無いから、出てって」
「え!嫌です!」
「我儘言うなや」
「京さんと一緒に住める方がいいです」
「は」


当たり前やろ。
後輩は後輩。
メンバーはメンバーで、全部が大事で全部が別物やから。
名目なんかどうでもえぇやん。
るきはるきやし。


「お前さぁ、そんな嫉妬ばっかしよったら身ぃ保たんのちゃう」
「京さんが好きなだけですから、全然」
「ふーん、変な奴やな」
「えー何でですか」
「何でもー」


言いながら煙草を揉み消す。
ホンマ僕に盲目っつーか、下らん事で嫉妬したり拗ねたり喜んだり、どうしようもない奴やな、るきは。


「でもやっぱ早く帰って来て下さいね」
「そんなん気分やし。わからん」
「えー」


そんなどうしようもない奴を傍に置いとる僕も、大概やけど。











次の日。


「京さん電話鳴ってますけど、出なくていいんですか?」
「えぇねん。ほっとけ」


僕の携帯に山程、着信やメールを残するきを、やっぱ躾たらなアカンかとも思った。




20090302


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