京さん@※/京流
2月16日。
京さんの誕生日。
長野でライブ。
まぁ例に漏れず、張り切ってチケット取ったけど。
馬鹿な俺の申し出でも、チケ取り手伝ってくれたメンバーに感謝。
バンギャかよって自嘲しながら、新幹線で開演ギリギリの時間に向かう。
どんな格好で行ったらバレねぇかな、とかそんな事ばっか考えて。
サングラス越しに0時ピッタリに送った京さんへの誕生日メールを読み返す。
相変わらず京さんからの返事はねぇけど。
別に誕生日だから変な思い入れをせず、あの人はあの人のままで歌うんだろうなって。
もう会場入りはしてんだろって時間に着いて開演直前。
ギリギリに入る。
まぁ皆ライブが目的だからって事で周りなんか気にしてぇだろ。
センターの、一番後ろ。
壁に寄り掛かる。
でも、何度行ってもこの場の空気だけは慣れねぇ。
やっぱステージに立ってんのがいいな、とか思ったり。
前の方突っ込むのとか。
無理無理。
皆頑張るね。
暗転して、SE。
歓声と重低音が交差する中、メンバー達が出て来て。
京さん。
シルエットだけでもわかる、その姿。
大好きです。
誕生日おめでとうございます。
貴方の誕生日に、この空間を一緒に過ごせるだけでも幸せです。
ここにいる誰よりも、俺が一番に京さんが好きで。
一番の京虜ですから。
音を聞きながら京さんの声に集中する。
必死に歌うその姿も。
自らを追い込むその精神も。
変わらない。
俺が憧れから、愛しい姿へ変わっただけ。
今日のライブは、特別京さんに連絡してるワケでも無くて。
ただ俺の我儘でライブ見たかっただけだから、アンコールも終わって捌けるまで待って。
早々に出てった。
挨拶してった方がいいのかとも思ったけど。
あんまり京さん、メンバーに会わせてくんねぇから。
嫌なのかなって。
公私混同しねぇ主義とか?
わかんねぇけど。
さすがにライブ終わった後に長野から東京への新幹線は無かったから。
長野に泊まるかって思ったけど、まだホテルも何も予約してねぇし。
まぁちょっと高いホテルなら空いてんだろ。
煙草を吸いながら、何となく街中を歩く。
ライブの余韻に浸ったりして。
いつも通りのライブの様で、ちょっと違った。
誕生日だからとかそんなんじゃ無く。
少し感じた京さんへの違和感が。
ライブへの興奮が冷めて来た今、段々と考える。
何かあったのかな、とか。
まぁそんな事問いただせるワケも無く。
ただでさえ内緒でライブ来るとかストーカー紛いの事してるし。
考えながら深く煙草の煙を吸い込み。
何か飯でも食おうかなーって考えながら歩いてると、いきなりポケットに入れた携帯のバイブが震えた。
取り出して見てみる。
…と、その名前を見て心臓が跳ねた。
『京さん』
一瞬煙草を落としそうになりながら、慌てて通話ボタンを押す。
「ッ、もしもし」
『お前今からホテル来い』
「え?」
『とぼけんな。お前来とったやろ。ライブ』
「……はい」
『早よ来い』
「わ、かりました」
物凄ぇ不機嫌な声で言われて、身体が強張る。
何。
何で。
目ざとく見付けたのは、逆に嬉しい事だけど。
やっぱ来たら駄目だったのか。
ホテル名と部屋番号を京さんが聞いて、電話を切った。
場所がわかんねぇから、タクシーを見つけて乗り込む。
何か、この感じ。
昔に似てる。
京さんの誕生日に京さんに会えるのは嬉しい筈なのに。
胸騒ぎ。
タクシーに乗ってる間。
近づいてるであろう京さんが泊まってるホテルに着くまで気が気じゃ無かった。
携帯を握り締める。
気の所為だったらいい。
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