晩酌/京流




夜。
飯も食って、風呂も入って気ぃ向いたりしたら白ワイン飲んだりすんねんけど。
るきがおったらワインに合うモン作って来たり。
今日もそうやねんけど。

お互い仕事柄、スタジオに籠もったり飲みに行ったりが多い中、意外とるきと過ごす時間があったりして。
まぁ僕はあんま出歩くん好きちゃうし、家でおる方が好きやねんけど。
るきはるきで極力、家を空けたりせぇへんから。

何でかはわかるから、可愛いけど。
言わんけど。


ソファに座って煙草を吸いながらグラスに入った液体を眺める。
キッチンで何かしとるるきの気配が背中から感じる。


「京さん。シーフードクラッカー作ったんですけど、いいですか」
「ん」
「あんまり飾り付けが上手く出来なくて…」
「は、お前そんな見た目気にしてどなんするん。味アカンかったら意味無いやん」
「確かにそうですけどー…」


るきが作ったクラッカーの上にチーズ乗せて、その上に味付けされたサーモンとか乗せとる。
ほんま、コイツは本とかわざわざ買ってやっとるから、凝ると感心するわ。

僕もB型やけど、多分拘る部分とか違うし。


「なん、お前それ飲むん」
「だってワインとか飲めないですもん」
「ガキ」
「…京さんだって飲めなかったじゃ無いですか…」
「知らん」


るきが僕の足元に座り込んで、小さい缶チューハイのプルトップを開ける。
苺味とか。
何か凄い甘そうやな。

グラスを傾けて、飲みながらるきの方を見とると、ちょっと飲んだだけでも目が潤んで来とる。
どんだけ酒弱いねん。


「京さん、明日も晩ご飯一緒に食べれます?」
「んー…いけるんちゃう。夕方頃には終わりそうな気ぃするし」
「あ、じゃぁどっか食べに行きませんか?俺も夕方頃終わるんです。京さんと食事行きたいです」
「別にえぇけど…」
「終わったらすぐ京さんのスタジオ向かうんで。待ってます」
「はいはい」


足元で、片手は僕の膝に置いて見上げて来るるき。
酒の所為で微かに赤らむ顔と見上げる目ぇと。
無意識下で甘えのその仕草と表情に、別に断る理由も無いから同意したら、目を細めて嬉しそうに笑った。

そんな事でって思うけど。
まぁいつも思うんは、コイツん中での僕が絶対やからやろうな。


チューハイの缶を煽りながら、ちょっとそのままソファにもたれる様に僕の膝に擦り寄って来た。
何か甘えて来よる。
普段ならキモいって蹴るけど、僕も今アルコール入ってえぇ気分やから、そのまま。


「俺もワイン練習しようかなぁ」
「別に練習してまで飲むもんちゃうやろ」
「んー…でも京さんと一緒の、飲みたい」
「お前…自我無いんか。呆れるわ」
「京さんと一緒がいいんです」
「きっしょ…」
「まぁでもビールとか美味しく飲めたらいいなぁ、とか」
「ふーん」
「後、昔牛乳飲めばよかったなぁとか」
「……お前ソレ僕に喧嘩売っとんか」


そんな白い液体飲んでどなんするん。
つーかもう無理やろ。
その身長は。


「つーか、お前仮定の話多すぎ。グダグダ言うとらんとやりたい事あるならやったらえぇやん。女々しい」
「…………」
「…何やねん。何しとんお前」
「…やりたい事やったらいいって言われたからです」


…チッ。
あぁ言えばこう言うと言うか、このエロガキ。
いつ発情してんコイツ。

缶を床に置いて、僕の膝の上に置いとった手を滑らせて僕の太股を撫でて、ジャージの上から撫でて来た。
誰がそんな事していい言うたん。

目ぇ覚ませや。


「……ッ冷た…」
「何勝手にしとん」


手に持っとったグラスを傾け、下におったるきの頭にそのまま残っとったワインを浴びせる。
髪の毛とか、顔がワインで濡れたけど、白やからつまらん。
赤は嫌いやけど、これなら赤が栄えるやんな。
また赤買って来よ。

るきの腕を掴んで、無理矢理引き上げる。
容赦無い力でやったから、るきが小さく悲鳴を上げたけど無視って目線を同じ高さへ。

濡れた頬に舌を這わせる。


「ん…ッ」
「顔舐めたぐらいで感じんな淫乱。僕ワイン飲みよるだけやねんけど」
「あ…京、さ…」


服を握る仕草とか。
酒と欲で濡れた目とか。

晩酌しよっただけやのに、なしてこうなるんやろか。

るきの好きにさせるんがムカつくから、乗る僕も僕やけど。
えぇか、るきやから。
頭弱いんは前からわかっとった事やし。

…まぁそこが気に入っとるし?




20090212


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