お互いにその充電時間/京流




新年会を兼ねてとか。
超めんどくせぇ。
何かアホみたくボーリングに夢中になって、途中で飽きて、飲みに行って帰りは午前。

まだ冬だから、薄暗い。
夜から朝にかけてのコントラストが栄える前。
幻想的な空が見えんのはこの時間特有のモンで。
後少ししたら見えるであろうソレを見るのが目的では無くて、感傷に浸って朝になるのを待つ暇は無い。

早く、帰りてぇって思うだけ。

エントランスを抜けてエレベーター。
無駄に高層マンションの最上階は、まぁファンも入って来れねぇし見晴らしもいいし。
気に入ってはいるけど、早く部屋に辿り着きたい時には邪魔な距離。

まぁ…メンバーとスタッフと、ボーリングは楽しかったけど。
せっかくの正月だし、京さんがオフだしって事で。

何だかんだで、擦れ違って声しかまだ聞けてねぇ。
生身の京さんに会いてぇ。
まだ寝てる時間だけど。


そう思いながら、エレベーターが最上階に着いて部屋のドアの前まで歩く。
鍵を差し込んで回す。
音を立てない様にドアを開けると、静まり返った薄暗い部屋が視界に広がる。

京さんの靴はあるから、よかった。

軽くシャワーを浴びたいけど、京さんが寝室にいるってだけで気がはやって、もういいやってスルー。
上着とかサングラスとか帽子とか装飾品とか、全部とっぱらって寝室へ向かう。

暖房の効いた部屋。
エアコンつけっぱなしは喉に悪いですよ、京さん。

デカいサイズのベッドに横たわる身体。
布団を身体に巻き付ける感じで寝てるから、髪の毛しか確認は出来ねぇけど。


京さん。
明けましておめでとうございます。
今年も愛してます。

カウントダウンライブお疲れ様でした。

直に会って言いたかった事を、心ん中で呟いて。
その愛しい相手が寝てる隣に、自分の身体を滑り込ませた。


京さんの身体は、布団を巻き込んで直接触れらんねぇけど、ちょっとピッタリと寄ってみたり。


「………なん、帰ったん」
「…ッ、きょ…!」


京さんの声。
寝てるかと思ったのに。
ビビッたし。


「お、はよう、ございます…?」
「何時」

えー…と。

「朝の6時前、です」
「ふーん」


沈黙。
だけど、京さんの目は薄暗い中でも俺を見てんのがわかる。


「え…ッ!?」
「…何やねん、お前冷たいやん」
「スミマセン…さっき帰って来たばっかなんで…」
「へー」


いきなり京さんの腕に身体を引き寄せられて、そのまま京さんの肩口に。
上半身は素肌のままで、ホールドされた身体はその行動について行けず固まったまま。

京さんの匂い、大好きだ。

やっぱ嬉しい。
こうしてんのが。
擦れ違いの分、余計に。

ゆっくりと、京さんの背中に腕を回して擦り寄る。


「…うん」
「え?」
「やっぱこれやな」
「何がですか?」
「別に」
「え、気になるんですけど」
「………」
「京さ…」
「黙っとり」
「ん…ッ」


京さんの方に、視線を合わせると口を塞ぐ様にキスが。
深くは無く、お互いの唇を啄みながら角度を変えて何度も。


少しの間、会えなくて声だけで我慢して。
久々のキスは嬉しさと気持ち良さ。

あぁ、こんなにハマってんだって自覚させられんの。

我慢とかに慣れた方がこの仕事をお互いやって行く上では絶対いい事なのに。


「きょ…、さん」
「るき」


キスが終わると、名前を呼びながら俺の髪を撫でる仕草。
絡まる視線が、堪らなく好き。

何かその全て一つ一つが、俺を甘やかすモンに感じて。
会いたかったです。
京さん。
たった数日でも。
離れるのが嫌とか、どんだけ我儘になったんですかね、俺。


でも。


「好きです愛してます、京さん」
「ほうか」


否定も肯定もしない言葉と。
また抱擁された腕に京さんの気持ちが込められてんのだとしたら。

愛しさが込み上げて来て。
どうしようも無く甘やかしたいと感じる瞬間。




20090212


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