バスルームの意味/京流




一緒に暮らし始めて少し。
何やるきはまだ慣れへんのか、自分ちになったって言うのに部屋ん中では落ち着きが無い。
何なん、逆にウザいんやけど。

まぁ、お互い仕事が忙しいてあんまり家で一緒におる言う事無かってんけど。
何やお前、僕がおらん時でも1人そわそわしとんかい。

久々2人きりでゆっくり出来る時間が作れたって言うのに、るきは床に正座して視線彷徨わせとる。
別に僕は僕んちやから、ソファに座って雑誌読んどんねんけど。
何や時々チラ見すると、るきと必ず視線が合ってキモい。
僕ん事ガン見しすぎちゃう?


「…おい」
「うぁッ、はい!」
「………」
「な、んですか京さん?」


ちょぉ話かけた変な声出しよった。
呆れて逆に思わずガン見。
戸惑うるきがおもろいから。


「なして床なん。ソファ座ったら」
「いいんですか?」
「アカンなら言わんやろ」
「失礼します」


何でわざわざ挨拶して座るねん。
律儀っつーか、何つーか。

住む前から僕、そんな厳しく躾るんやめたった気ぃするのに。

いつまでも固くなられとったら一緒におる時ウザいから、しゃーない。

読んどった雑誌を前のテーブルに投げて、ソファの隣に座ったるきの肩を掴んで自分に引き寄せる。
また変な声出しながら引かれるままなるきは、僕と身体を密着させた。


「きょ、京さん…」
「なん」
「あの…腕…」
「文句あるん」
「ッ、すっげぇ嬉しいです!」
「ならえぇやん」


暫らく無言のまま、るきとくっついとったら、手持ち無沙汰だったるきの腕が、ゆっくり僕の身体に回って来た。
段々右肩にるきの重みが加わる。

最初っから、その位置におればえぇやん。


「京さん」
「んー」
「………」
「なん」
「呼んでみたけです」
「ウッザ」
「……俺、幸せですマジで」
「ふーん」
「大好きです」
「あっそ」


ちょっとは緊張が解けたんか。
そう言うて擦り寄って来るるき。
当たり前やろ。
そうでないと許さん。


「あ、京さんちの風呂って、めっちゃ広いですよね!」
「あぁ…」
「あんなデカい風呂、俺んち無かったんで感動しました!」
「………広い方が、リラックス出来るやん」
「あ、そうですよね!何にも考えずゆっくり出来る空間になりますよね、アイデア浮かんできそうで」
「せやな」


…自分を追い詰める意味でな。
広い風呂がイイ言うたんも、全部アイツやから。

リラックスどころか、死にたくなるわ。
そう言う意味では、全部音楽に繋がるから、あの風呂も役に立った。

つーか、なしてコイツはその話題。
話なくて気まずかったにしても、別の話題もあるやろ。
まぁコイツ元々よう喋る奴やっけ。


「あ、それに、大人数で入っても平気ですもんね、風呂」
「いや何人で入る気やねん。銭湯ちゃうで」
「それもそうですね…」


考える様に呟いたるきに、ちょっと笑いそうになった。
あぁ、今は、おるやんな。
一緒に入る奴。


「るき、風呂入るで」
「え!?」
「風呂」
「一緒にですか!?」
「うん。文句あるん?」
「無いです!」
「なら、気ぃ変わらん内に早よ風呂沸かして来いや」
「はい!」


ソファから立ち上がり、風呂場へと向かうるき。
あぁ、風呂洗わなアカンのやっけ。
風呂の湯入れるボタンはキッチンにあんねんけど。
何日か暮らしとるから、わかるやろ。


まさか風呂が広い部屋を探して引っ越した時には、るきと一緒に入るや思わんかったけど。

一緒に暮らしたり、そう言うトコに拘ったり、人間変われば変わるモンなんやな。
昔は拒否っとったのに。


そう思いながら、風呂洗い終わったるきがキッチンの風呂のスイッチを押す姿を目で追った。

まぁ別に、今思えば悪く無い提案やったなぁ。




20090131


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