海外での孤独と愛/京流+薫




京君は、あまり海外が好きでは無いらしい。
バスん中に引き籠もっとるから、ちょっと気分転換ならんかなって思って。
今日もライブあるけど。


「京君、散歩行かへん?」
「嫌」
「外の空気ちょっと吸おうや」
「嫌やて」


苦笑い。
やっぱなぁ。
京君は俺と目も合わさんと、携帯の画面をガン見。

…何があるんや。

その携帯を持つ手の、手首。
重量感のあるブレスが付いとる。
一回、それを誉めたら『るきがくれてん』と、ぶっきらぼうに言うとった。
値の張りそうなソレは、比較的よく見かけるモンやから、気に入っとんのか。
…それともルキ君がくれたヤツやからか。

そんな事を思いよったら、ちょっと興味が湧いて来て。
京君の前に座る。


「ほなら、ちょっと話しようやー京君が親離れしてもてお父さん寂しいねん」
「は、何やそれ。薫君頭沸いたん?」
「えぇからえぇから。ルキ君とはどうなん」
「親父臭い事言うなや」
「いやー1回しかちゃんと会ってへんけど、えぇ子そうやったやん」
「何処がや。煩い奴やでアレ」


携帯を閉じて、こっちに向いて顔を歪める京君。
何だかんだで話に付き合ってくれる京君も、俺にとったらえぇ子やと思うけどな。
言うたら怒るか。

夜中、寝んとルキ君に電話しよったり、何だかんだで京君もルキ君の事好きなんやなぁ…って。
そう言うのを見るとこっちも嬉しなって来る。


「…何笑っとんねんオッサン」
「や、またルキ君紹介してな」
「何で」
「そりゃ、息子のお付き合いしとる子が気になるからに決まっとるやん」
「誰が息子や。アホか」
「も〜…素直になりぃや、京君。なぁ、ルキ君の事好きなんやろ」
「んー…」


何か考える様に、ルキ君に貰ったブレスを右手でイジっとる。
何で目ぇ反らすねん。
え、好きなんやろ?
一緒に住んどるし。


「何かなぁ…好きとか、そう言う言葉や無いねん」
「…は?」
「るきの事」
「…へぇ、何なん?」
「わからん」
「何で?」


ぽつぽつと、喋り出した京君は、相変わらずブレスをイジりながら、俯き加減。
視線を彷徨わせとる。
まぁ京君から話してくれるんを待つ。


「あんだけなぁ…僕に懲りもせんと付いて来てな、僕の範囲に入れたけど」
「うん」
「信用しとる部分もあるし、でもどっかで『あぁ、コイツもその内おらんくなるんかな』って思うねん」
「………」
「そう思う自分が嫌やねんけど、好きとか、ようわからんし、人の気持ちや変わってくもんやん」
「…京君」


完全に俯いて、ブレスをイジる指が止まる。
何か、京君が小さく見えて、立ち上がって近づく。

そのまま、京君の頭を抱くように引き寄せた。


「…何すんねん」
「ん?まぁまぁ…」
「暑苦しい…」
「えぇやん。昔はようこうしとったなぁ…」
「あぁ…」
「お父さんの手ぇ離れて、寂しいけど。ルキ君と一緒におる京君を見るんは好きやねん」
「………」
「そう思う自分が嫌って事は、ルキ君の事を考えてなんやろ」
「………」


胸元に顔を埋めさせて、頭を軽くポンポンと叩く。
昔みたいに身体に腕は回して来んけど、振り払わん京君を宥める様に撫でたり。

海外で、ルキ君と会わへんから余計に考え込むんか。
まだ、解決出来へんのか。
人よりも数倍、傷付く京君。
ルキ君と付き合い出して、大丈夫だと思ったんは、まだ早かったらしい。

こうして思いを吐露してくれるんは、嬉しいけど。


「京君は、いけるで」
「…うん」
「ルキ君が、必要なんやろ?」
「………ん」
「ルキ君は、そう思ってくれとるだけでも、十分幸せやと思うで」
「当たり前やん」
「そやな」


顔を上げて笑った京君に、ちょっと安心。
軽く頭を撫でて、抱き締めとった手ぇ離した。
ちょっと、不安になる事はると思うけど、そん時はルキ君おらんかったら、また胸貸したるから。


「ほんま、またルキ君に会わしてな」
「何でそんな拘るん」
「息子を宜しくお願いしますと」
「は、こっちが世話してやっとんねん」


憎まれ口叩く京君に、思わず笑みが零れる。

左手首に絡むブレスが、主張する様に反射して光った。




20090130



[ 46/500 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -