FEELINGSA/京流+異端麺




居酒屋を出て。
皆でお金を払ってくれた京さんに頭を下げてお礼を言う。

先輩だからだろうけど、何だかそこまでしてもらうと気が引けてしまうけど。

もう一軒行こうやーと騒ぐ葵君と、麗。

ルキもちょっと飲んだから、テンション高くれいたとじゃれ合ってる。


「ちょ、れいた止めろよセット乱れんだろ!」
「はぁー?いつもそんな気にしてたらロックじゃねぇ!」
「うわっ!髪混ぜんな!」
「過去変なパーマしてた癖に気にしすぎだろー」
「変じゃねぇ!」


うん。
あの2人は馬鹿だから、ホントじゃれ合いって感じに見える。
何だか微笑ましい。

繁華街を、楽しそうに歩く前の4人組。


そこから少し離れて歩く、京さんを見るとサングラスをかけてはいるけど、楽しそうに口元を歪めてる。
視線の先は多分ルキ。

何かつい京さんをガン見してしまった。

そしたら視線に気付いた京さんは、顔をこちらに向けた。


「…なん?どしたん。僕の顔に何かついとん?」
「あ、いえ、すみません」
「何で謝るん。変な奴やな」
「はは…」


あ、何か。
笑うと雰囲気が凄い柔らかくなる、この人。

その雰囲気に飲まれて、少し言いたかった事が浮かんで来た。
今はルキも世話になってるし。
昔は、最低な意味で世話になってたけど。

今日の2人を見てたら、それは過去の事だと言うのはわかる。
だから、ちょっと、気持ちを精算させて下さい、京さん。


ルキと同じぐらいの背丈の、京さんの隣を歩きながら話し掛ける。


「京さん。ちょっと話聞いてもらっていいですか?」
「なん」
「昔の、ルキの事で」
「………」


視線は、前を行く4人を見つめながら、ゆっくり歩く。


「あの頃のルキは本当に生傷や痣が耐えませんでした。撮影がある日も、顔に痣を作って来たり」
「………」
「何度も言いました。京さん、貴方に会うのは止めて欲しいと」
「………」
「それでもルキは首を縦に振らなかったです。メンバーに、俺らに謝るばかりで」
「………」
「女関係も最悪でした。でも、それはルキが望んでした事で、俺らが口出しする事では無いのは、わかってました」
「………」
「だけど、ルキの身体も、心も心配で。俺は京さんを憎みました。ルキは大切な、俺らの仲間なんで」
「………」
「…でも、今日の2人を見て過去とは違うんだって確信が持てました。話には、聞いてたんですけど」
「………」
「俺が生意気言ってすみません。これからも、ルキを宜しくお願いします」


静かに聞いていた京さん。
一旦足を止め、京さんの方に向き直って頭を下げる。


「戒、やっけ?リーダーの」
「はい」
「…僕がるきに過去にした事は」
「はい」
「後悔もしとらんし、悪い事したとも思ってへん。そんなるきや無かったら、僕の今のるきに対する想いも無かったやろから」
「…ルキの事、愛してますか?」
「…せやな。ほんまあのアホは懲りもせんと僕んトコ来て…僕に此処まで想わせたん、感心するわ」


前方のルキを見つめながら言う京さんの表情と声のトーンは穏やかで。
あぁ、よかったね、ルキって心の底から安心出来た。


「…僕ちょっと酔っとるから。帰るわ。今の言葉、忘れぇや」
「わかりました」
「るきの事、宜しくな」
「はい。京さんも」
「ん」


2人で微かに笑い合ってると、前方から呼ぶ声が聞こえた。
ルキが小走りで近寄って来る。


「京さーん、戒くーん、皆でカラオケ行こうって話なんだけど、行こうぜ」
「二次会カラオケになったの?」
「おう」
「るき、僕帰るから」
「えっ、京さん帰るんすか?なら俺も…」
「甘えんな。メンバーと行って来い」
「えー…カラオケで京さんの歌聞きたかったー…」
「何言うとん。カラオケでの僕の声は、るきだけのモンなんやろ?」
「…ッ」


目の前でされるやり取り。
こっちが恥ずかしくなるぐらい。
るきは嬉しそうに大人しく、京さんに髪を撫でられる。


「ほなな」
「あ、はい、今日は有難う御座居ました」


挨拶をすると、踵を返して京さんはタクシー乗り場へと向かった。
他のメンバーも、京さんに向かって挨拶をして。


いつまでも京さんの後ろ姿を見送るルキに視線をやる。

今は痣が出来る事はない、その顔。
愛されてよかったね、ルキ。




20090125


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