元彼と蜜/敏京流+薫




ライブ前。
衣裳を着て開演間近で、各々イメトレに入る中、敏弥が何かの雑誌読んどった。
まぁ、あんま気にせぇへんのやけど何となく敏弥に話し掛ける。


「…なん、それ。見慣れん雑誌やな」
「あ、薫君。これねーインディーズばっか載ってる雑誌だからね」
「ふーん。珍しいやん。そんなん読むん」
「うん。だってこれ、京君の貢ぎが載ってるから」
「………うん?」


何やて?


「ほら、この子。この子が京君の貢ぎだよ」
「………」


敏弥が指差した先には、赤髪黒メッシュの、誰か。
着物姿の様な衣裳と、白い軍服姿。
若干、若い時の京君に似てなくも、無い気がする。


「何で敏弥がそれを知っとん?」
「ん?前ねースタジオ内歩いてたらね。偶然こいつらも同じビル内だったらしくて、階段下で話してんの聞いちゃった」
「はぁ」
「あと京君の態度とかね」
「ふーん」


立ち聞きかい。
まぁ何て返事したらえぇかわからんから、適当に相槌を打つ。

敏弥は俺の方は見ずに、何か思い出しとる様に遠くを見ながら話出す。







階段下?ってか裏?とにかく人目につきにくいトコでね、男2人が何か真剣に話してんの。
普段だったらスルーするんだけど、何となく会話聞いちゃった。
そしたら京君の名前出たから、ビックリしたよー。


『ねぇ、ルキ。今日撮影だってわかってたよね?』
『……うん』
『もうさ。こんな事言いたく無いけど、京さんと会うの止めて』
『…無理』
『無理って…。ねぇ、仕事があるの、わかってるでしょ?そんな顔に殴られた痣作って…プロなら仕事に支障をきたす事はしないで』
『…御免』
『……泣かないで。目ぇ腫れるから』
『御免…御免、戒君…御免』
『謝るなら、京さんと会わないで。ねぇ、仕事の事じゃ無くても、ルキが心配なんだよ。他のメンバーも…』
『うん、御免…わかってる…』
『プライベートにまで口出したく無いけど…今のルキは自分自身に対しても、女関係でも見てらんない』
『………』
『…そんなに京さんの事好きなの?』
『うん…』
『そっか』
『御免…』
『泣かないでってば』


ルキって言われた奴は、顔にタオル当てて泣いてた。
人が来なさそうなトコで話してるから、ホントに心配してんだなって思ったよ。
俺には関係無いけど、バカだよね、この子。








そう経緯を話す敏弥の顔は、ほんまに馬鹿にしたような嘲笑した顔。
なぁ、関係無いって言うなら、何でそんなに気になっとん?


「敏弥…」
「ん?」


そんなんなら、何で。
別れたん?


それは聞いても意味が無い事やとわかっとる。

ただそれによって京君と敏弥の間は、いつもぎこちない空気が漂っとって。
バンドには影響せぇへんのはプロ意識か何か知らんけど。
そこは褒めるべき事なんか?


「もうすぐライブ始まるね」
「あ?あぁ…」


雑誌を閉じて、目を細めて笑う。
ほんまに笑っとらん顔で。

あぁ、何でほんま、こうなってもうたんやろ。

京君も、敏弥も、笑う事は無くなった。
ほんまの笑顔で。


2人の問題やから、俺にはどうする事も出来んけど…心配やねん。


「頑張らなきゃねー。今日も」
「せやな」
「……御免ね、薫君」
「は?」


何に対しての御免なん?
聞き返そうとしても、敏弥は立ち上がってどっか行ってもた。

テーブルの上。
京君が言うとった『新しい玩具』であろうその子が載ってる雑誌を、じっと見つめる。


ほんま子供やで。
皆。


皆が笑える日なんて、来るんやろか。




20090123

[ 36/500 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -