DVD/京流




京さんは今日はお仕事。
掃除とか洗濯やっちゃったし、暇だし京さんいないから京さんのDVD観よ。
京さんがいたら観えねぇし。
俺のDVD用の棚から、DVDを選ぶ。
どれにしよ。

あ、これがいい。
久々に。
FC限定モンだよ。
そりゃ買っちゃうだろ。


缶カンの中から取出し、DVDデッキにセットする。

『Tour05 It withers and withers』

この時の京さんの衣裳が左足ジーンズ切って豹柄タイツなんだけど。
京さんがやると、格好良すぎる。
もうやってくんねぇのかな。
また見たい。


映像からは、少し昔の京さん。
歌も、声も、姿も、全部好き。


この頃の京さんを見てると、初めて京さんちの鍵を貰った事を思い出す。
ちょうど、この時期。
俺が金を渡さなくなった時。
貰った鍵を握り締めて、毎日寝てた。


ってかあの時。
京さんに携帯折られたから切った蜜の女にも連絡せず、そのままだったんだけど。
自宅知ってる蜜の女に包丁持って待ち伏せされたりしたなー。

いやいや、生きててよかった。
でなきゃ京さんと一緒に暮らせるとか、そんな事出来ねぇし。
女って怖いね。

…ま、一歩間違えば、俺がその女の様になってたかもな。

でも京さんを殺して〜とかは思わねぇなぁ…寧ろその腕で殺して欲しい。
まぁいいや。
今は一緒に暮らしてるし。
幸せだし。


俺がぐるぐると下らない事を考えながらDVDを観てると、鍵の開く音。
…今日は早ぇな。
嬉しい。
でもDVDを止めたく無い。
観てたら怒っかなぁ…。


「おかえりなさい」
「……何しとん。お前何観とんねん」
「京さんの…」
「消せ」
「えー…」


玄関から靴を脱いで、カバンをソファに投げると、ダウンジャケットを脱ぐ京さん。
眉間に皺を寄せて、自分の歌ってる映像を睨み付ける。

いいじゃないですか。

反射的に京さんの上着を受け取り、ハンガーへとかけに行く。
今日の晩ご飯、何にしようかな。
そんな事を考えながら、京さんの元に戻る。


「あ!京さん消さないで下さいよ!!」
「無理。死ね」
「観たいんです」
「本物見とるんやからえぇやろ」
「本物も格好良いんですけど、DVDも観たいです」
「アカン」
「………」
「………」
「………」
「………」
「…ケチ」
「あぁ"?」


う。
睨まれた。


取り敢えず、さっきまで俺が座ってた場所に京さんが座って、その隣に腰を下ろす。
くっついてみる。
…うん、振り払われ無い。

から調子乗って停止されたDVDを再生したら叩かれた。


「ウザイ。しつこい」
「いいじゃないですか。この時の京さん、思い出深いんです」
「なん、現実より思い出を取るんか」
「まさか」


ぎゅぅうっとキツく抱き締める。
確かに思い出深いけど、鍵じゃ無くて本物の京さんを抱き締められる方が、ずっといいに決まってる。


流れるBGMは京さんの声で、耳元からは舌打ちが聞こえるけど気にしねぇ。


「ってか俺あの時、女に刺されそうになりましたよ」
「はぁ?お前の扱いが酷かったんちゃうんか」
「うん。確かにそうかも」

あん時は、京さんに金を渡すのに必死で、女の事なんて考えて無かった。


「…後悔しとんか」
「え?」
「後悔しとるん?」
「何でですか。それがあったから、今こうして京さんといられる。これ以上無いくらい、幸せです」
「ふーん」


本当によかった。
今ここに、こうして一緒にいられる事が。
後悔なんて。
京さんとの繋がりを諦めた時にするモンだろ。


画面の京さんと、隣にいる眉間に皺を寄せて自分を観てる京さんを見比べる。
生きててよかった。


無機質な鍵よりも、温かくて愛しい、京さんを抱き締められるとか。
人生捨てたモンじゃねぇな。




20090118


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