真夜中と睦言/敏京
『敏弥、今何しとん』
「んぁ?京君…?」
『うん』
「…寝てた」
『そやろな』
「どうしたの」
『何となく』
「眠いよ」
『寝たらえぇやん』
「電話したいんじゃねぇの?」
『別に』
そう言う彼の言葉に言葉を続けようとすると、玄関の方からガチャガチャ鍵を開ける音が。
え、え?
何だよ。
誰だよって思ったけど、まぁ犯人は。
「敏弥」
「…どうしたの京君。こんな夜中に」
今まで電話口で声が聞こえてた京君が、合鍵で入って来て上着を脱いだ。
携帯を切る。
「来たらアカンのか」
「まさか。大歓迎だよ」
「ふーん」
「…寝るの?」
「うん」
上着を脱いだら京君は、俺が寝てるベッドに潜り込んで来た。
外が寒かった所為か、抱き込んだ京君は外気の雰囲気を纏っていて、冷たい。
「何で電話したの?」
「別に」
「寂しかった?」
「何でやねんアホ」
「そっかそっか」
「……」
ポンポン、と京君の背中を優しく叩いて抱き締める。
京君から甘えるとか、本気珍しいし。
さっきまで寝てたし、京君が腕の中にいるからまた眠気が襲って来た。
あー…京君の匂い。
「京君…」
「ん」
「一緒に暮らそうよ」
「は?何でや。寝呆けとん?」
「んー…眠いけど…。ね、そしたらずっと一緒にいられるよ」
「嫌や。無理」
即答。
何でだ。
ちょっとヘコむんだけど。
「何でー…」
「ちょ、苦しい」
ちょっと悔しかったから、ぎゅぅうってキツく抱き締める。
鼻腔が京君の匂いに擽られる。
落ち着く。
眠い。
苦しいって言っても、抜け出そうとしない京君、好き。
「一緒に暮らしたいー…」
「まだ言うか。嫌や。今のままでもえぇやん」
「何でー…」
「寝ろや」
「聞くまで寝ない」
「ウッザ…」
京君に擦り寄りながら言うと、溜め息が腕の中から聞こえた。
酷ぇー。
何だ京君何でそんな同棲したくねぇの。
毎日一緒にいれるのに!
フテ寝してやる。
「…敏弥」
「……」
「寝たん?」
「………」
寝ました。
そうすると京君の溜め息が聞こえて。
「一緒に暮らしたら、なぁなぁになるやん」
ボソッと京君の言葉。
「お互い空気みたいな存在とか、嫌やねん。僕空気ちゃうし。敏弥とは存在意識しとりたいやん」
…うん。
何この子。
何か素直なんだけど!?
何だその理由!
可愛すぎるだろ畜生が!!
寝てるって事になってるから、身じろくフリをしてキツく京君の身体を抱き締める。
京君がちゃんと、俺との関係を考えてくれてんのが、凄い嬉しかった。
いい夢見れそう。
「京君。朝だよ朝。起きて」
「あ"ー?うっさいボケ」
「朝ー。ねぇ今日スタジオだよね?早く朝ご飯食べる時間無くなるよ」
「遅刻してもいけるし」
いやそれは京君だけだよ。
薫君は俺に怒るんだから。
「知らないよー。朝ご飯京君の分も食べちゃうよー?」
「…アカン。敏弥の癖に」
「何だそれ。いいから起きて」
「もー…何やねんうっさい…」
ガシガシ頭を掻きながら、ボーッとした顔でベッドサイドの煙草に手を伸ばす。
一服してから、のそのそと起きて来た。
「顔洗って来たらご飯ね」
「はいはい」
今日の朝ご飯は、ご飯と海苔と味噌汁と目玉焼き。
簡単だけど。
2人で食卓を囲む。
うん、幸せな朝だね。
いいね。
「敏弥ニヤニヤしてキモい」
そんな口叩いたって昨日の言葉ばっちり聞いたからね。
京君可愛いったらないよね。
終
20090117
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