明けまして/敏京




「京君、お参り行くよ」
「は?いきなり何やねん。嫌や」
「いいじゃん。行こうよー今年まだ初詣行って無いじゃん!」
「寒いし人混み嫌やし」
「もう三が日過ぎたから人少ねぇって」
「…髪の毛目立つやん。赤と青やで」
「帽子被ってサングラスかけてりゃわかんねぇから」
「チッ…あぁ言えばこう言う…」


舌打ちして心底ウザそうな顔してるけど気にしない。
だって京君と初詣行きたいじゃん!!
2人でお賽銭投げて願い事したいじゃん!!
おみくじ引きたいじゃん!!

そんな願望盛り沢山だから、どうしても京君と初詣行きたい。
せっかくの正月だし。



「……多分正月の神社だから屋台出てるよ」
「……」
「林檎飴やたこ焼きや綿菓子あるよ」
「………敏弥の奢りな」
「うん、だから早く行こ」
「ったくしゃーない奴やなー…」



よっしゃ。
京君のその単純になって釣られてくれるトコ好き。

心ん中でガッツポーズをしながら、いそいそと出かける準備をする。
正月過ぎると急に寒くなるんだよねー。



「敏弥遅いわ。早よぉ」
「ちょ、待ってよ京君!」


行くからには支度早い京君は、もう玄関で靴を履いて待っていた。
お互い帽子にサングラスにマフラーと言う出で立ちで、ハタから見たら怪しいけど。

玄関を出ると、冷たい風が吹く。


「ちょ、やっぱ寒いやんけ嫌や」
「ダメ。行くって行ったんだから行くのー」
「最悪やー」
「はいはい」



ブチブチ言う京君を、無理矢理手を引っ張って歩く。
いつもだと嫌がって手を離すのに、文句を言いながらもついて来る京君が可愛い。
寒いからね。
手、あったかいもんね。

でも、神社が近づくに連れて人が疎らにいて、無言で京君に手を払われた。
うーん、残念。
ま、仕方無いけどね。
人前でいちゃつくの嫌いだし。


「あ、敏弥。アレ、アレ食いいたい!」
「アレってどれだよ。ってかまずお参りが先ね。屋台は後でね」
「何やねんー。ほな早よ行こや」


三が日は過ぎたから、屋台は疎らだけどまたやっていた。
京君は目ざとく見つけると目ぇキラキラさせてる。
いや、可愛いけどね。
やっぱ先にお賽銭投げたいし。

少しある階段を一緒に上がって、あんま人がいないから並ばずにお賽銭投げる場所まで到着出来た。


「敏弥、金」
「え、京君財布…」
「持って来とるワケ無いやん」
「ソーデスカ」

そうですよねー。
俺は自分の財布から小銭を探し、京君に5円玉を渡す。
5円玉1枚しか無いから…いっか俺は10円玉で。

2人してお金を投げて、手を合わせてお願いする。




『京君と一緒に居れますように』
『バンドがずっと楽しく出来ますように』




そう願い事を心ん中で言い、チラリと京君を盗み見ると目ぇ瞑って真剣に願ってる。
珍しいー。
何願ってんだろ。


「よし。早よ食おうや」
「え、ちょっと待ってよ。俺おみぐじ引きたい」
「はァ?おみくじ?何そんな運に任せとんねんアホらし。早よ行くで」
「えぇー大吉が出るかもよ?」
「大凶が出てヘコむんがオチやろ」



残念ー。
でも京君はさくさく屋台の方へと歩いてくから、その小さな背中を追い掛ける。
何食う気なんだろ。



「敏弥。林檎飴のデカいヤツとフランクフルトとたこ焼きとベビーカステラと焼きとうもろこしとイカ焼きと綿菓子、買って来いや」
「…京君…太…」
「あ"?」
「いえ、何でも無いです」
「早よ買ってき」
「…はいはい」


言われたヤツを全部買って、京君は林檎飴を舐めながら歩く。
他は全部俺が持ってんだけど…こんなに本気で食べんのかな…。
いやでも食べ盛り?


「帰る?」
「ん、もう買うモン買おたし」
「お参りしたしね」
「ん」
「京君、何願ったの?」
「は?別に」
「何?教えてよー」
「嫌やし」
「いいじゃん」
「しつこいウザい」
「何だよー…ケチ」


少し膨れた様に言いながら歩くと京君が林檎飴を齧る音が後ろから聞こえて来た。


「願い事とかなぁ…」
「……」
「女々しいねん。自分で叶えろや」
「………」
「それに僕は叶っとるからえぇねん、敏弥と」


京君の言葉の意味を理解して、顔がニヤける。
ヤバい。
ヤバい嬉しい。


振り向くと、林檎飴を半分ぐらい齧った京君と目が合った。



「大好き、京君。今年も宜しくね」
「しゃーないなぁ」




20090105


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