「…という訳でさ。まさか局長が反対するとは思わなかったよ。副長の方が反対するかなって思ってたんだけど」

話を聞いた菜々はクスクスと笑う。

「やっぱり大切にされてるんだね、退」

「違うよ、やっかみだよ。それより…」

山崎は菜々の肩に手を回して、自分の腕の中に収める。

「今日から…宜しく」

「うん、退…」

菜々が顔を上げると、照れた顔の山崎が目に入った。菜々はニコリと笑い、ソッと目を閉じる。
その仕草がどういう意味か分かった山崎も目を閉じて、菜々のふっくらとした唇に自分のを近づけた。

「ムラムラ禁止だと言ったでしょォォォ!!」

不意に天井から声がして山崎と菜々は目を開け、そこを見上げた。

「何してんだ、アンタはァァァァァ!!」

天井裏から顔を出している近藤を指差して、山崎は怒鳴る。

「お父さんの言い付けを破ってないか、見張りです!」

「アンタお父さんじゃないから!言い付けを約束した覚えないから!俺をストーキングしてないで、いつものように姐さんをストーキングしてろよォォォ!!」

山崎の言葉を無視して、近藤は屋根裏から降りてくる。

「初めまして、お嬢さん。局長の近藤勲です」

「あ、初めまして。退とお付き合いしてます菜々と申します」

ペコリと頭を下げて自己紹介をする菜々。

「いや、礼儀正しいお嬢さんですな。山崎には勿体無い」

「煩いよ?ねェ、邪魔だから帰ってくんない?邪魔しないでくれる?」

「なんでそんなに必死なんだ?あ…。あれだな、俺が帰った後にチョメチョメするつもり…」

「いいから帰れェェェ!!!」

しつこい近藤に、山崎は鉄拳を食らわして追い出した。

「はーもう。まさかここまで来るとは…」

深い溜め息を吐いて菜々の傍に座る。

「ごめんね。初日から変な物が乱入しちゃって」

謝る山崎だが、菜々は笑顔で首を横に振った。

「いいえ、楽しい局長さんでした。大切にされてて羨ましいな」

「ん…と。…俺が菜々の事を、凄く凄ーく大切にするからさ。羨ましがる必要ないよ」

山崎は菜々の頬に手を添えて唇に口付けた。
この不意打ちに菜々は頬を赤らめて戸惑っていると、段々深いものに変わってくる。

「んっ…ぁ…ふ」

息苦しくて漏らした菜々の声に気付いた山崎は、唇を離した。

「ごめん、苦しかった?」

申し訳なさそうな顔をしている山崎を見て、菜々は抱きついた。

「苦しかったけど…なんだか気持ち良かった」

「菜々…」

「退、大好き」

「俺も…」

山崎は再び菜々の唇に口付け、菜々も今度はしっかりとその口付けに応えた。


=終=


→あとがき


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