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さあ寝るぞ、とベッドに入った途端に携帯が鳴り、紫亜は思わず声を上げて驚いた。
こんな夜更けに誰だろう、と確認してみると土方だった。
「もしもし土方さん?どうかしたんですか?」
『ああ、ワリィ…。今、お前んちの前にいるんだが、開けて…』
「紫亜ーー開けて下せェェェ」
『バカ!夜中に大声出すな!』
受話器と玄関から声が聞こえてくる。紫亜は電気を付け、玄関を開けた。
そこには苦い表情を浮かべた土方と、土方の肩を借りてうなだれている沖田が居た。
「2人揃って、どうしたんですか?」
「いやな…」
「紫亜ー、会いたかったぜィ」
俯いていた沖田が顔を上げ、紫亜に抱き付いてくる。沖田の体重がほぼ自分にかかり、紫亜は尻餅をついた。
「総悟…ってお酒くさっ!酔ってるの!?」
土方から話を聞くと、先程まで警察庁長官の付き合いでお酒を飲んでいたらしい。酔った沖田が「紫亜に会いたい、紫亜の所へ連れてけ」とうるさかったので土方が連れて来たのだった。
「こんな夜中にインターホン鳴らしても出ねーかと思って、電話したが…本当にワリィな。寝てたか?」
「いえ、寝ようかな、と思ってた所でしたので…」
「紫亜ー胸枕して下せェ」
「は?胸?」
沖田は突然、紫亜が着ている寝間着の胸元を大きく開く。その為、下着を着けていない胸が土方の目に飛び込んだ。
「ちょ、おまっ、なんで下着着けてねーんだ!?」
土方は顔を赤くし、慌てて後ろを向いた。
「わ、私っ、寝る時は着けてなくて…」
紫亜も紫亜で、恥ずかしさで顔を真っ赤にした。そんな原因を作った当の沖田は、紫亜の胸に顔を埋めたかと思うと、今度は突起に吸い付いてくる。
「あっ…やぁ、総悟っ、吸わないで…っ!」
「総悟は明日っ、夕方から仕事だから!それまでに戻るよう言っといてくれ!!」
紫亜の艶やかな声を聞いて、気まずくなった土方は早口で言うと、急いで出て行った。
後に残った紫亜は、胸を見られた事にしばし呆然としていた。だが、直ぐに沖田の頭をペシッと叩く。突起から口を離し、沖田は不満げな顔を上げた。
「なんでェー。イテェじゃねーかィ」
「バカバカバカ!!土方さんが見てる前で、なんて事すんのよ!!」
怒っている紫亜とは対照的に、沖田は不思議そうな表情を見せる。
「…土方さん?いやしたっけ?」
「連れて来て貰ったでしょ!」
「土方は夜勤だから、酒飲まずに行っちまった筈でさァー」
(ダメだ、完全に酔ってる…)
いまいち話が繋がらず、紫亜はガックリと肩を落とした。
「…総悟、大丈夫?立てる?」
今怒ったりしても仕方ないし、ここまで酔ってるのは初めて見るので、今度は心配になってきた。
「あー無理…」
「もう…」
紫亜は寝間着を整えてから沖田に肩を貸し、居間まで連れて行く。ひとまず、ソファーに座らせ、
「ちょっと待ってて」
と、玄関の鍵を閉めに行った。そして水を持って沖田の所へ戻った。
「はい、お水。飲める?」
差し出されたグラスを受け取った沖田だが、暫く無言でそれを見詰めていた。
「……甘いもんが飲みてェ」
「甘いもの?ココアでいい?」
ようやく発した言葉を聞いて、紫亜は再び台所へ行こうとする。
しかし沖田に腕を掴まれ、あっという間に組み敷かれてしまった。
「紫亜の…マン汁飲みてェ」
「はぁぁぁ!?」
真面目な顔でありながら、とんでもない卑猥発言に紫亜の頬が赤く染まる。
「何言ってんの!?あんなの、甘いものでも、ましてや飲み物でも無いでしょ!?」
「紫亜のは甘いし、飲めるくらい溢れるから問題ないでさァ」
意地悪とかで言ってる訳では無く、極普通に当たり前のように言っている。
色々と物事の判断が出来てないようだった。
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