拍手ログ(4)
 2人でと作った肉じゃがを鍋から大皿によそり、昴さんが食卓へ運んでいく。私も他のおかずがよそられた小皿を持って、昴さんの背中を追う。
 昴さんの反対のイスに腰掛け、箸を取る前に両手を合わせる。
 ……昴さんと食事を作り、一緒に食事をとる。昴さんも作るのに慣れてきたと、ちょっと油断した日のことだった。
 いざ食べようと箸で取ったしらたきが、なかなか切れない。昴さんの方をちらりと見ると、彼の左手の箸も同じ状態になっていた。

「……あれ」
「すみません、切り忘れたようですね」
「もう……最初にも言ったのに」

 まあ、味は具に染み込んでるはずだから、食べられないわけじゃないからいいんだけど。
 しょうがないなあと思いつつ、昴さんとほぼ同時にしらたきの端を口に運んだ。つるつるとしらたきを啜る音が2人分、台所で小さく鳴り続ける。

 そろそろ終わってもいい頃の、は、ず……

「「・・・・・・」」

 しらたきは大皿から僅かに浮いた。でもそれはもう一つの端が見えたからじゃない、どこかで私と同じように誰かが口にしているからだ。
 そんなの、目の前にいる昴さんしかいない。じっと彼を黙って見つめてみれば、彼もじっと私を見ていた。

 なに、このどこかのアニメで観たような状況。あれは犬だから可愛げがあったけど、これいい歳した大人の人間だよ?
 しかもスパゲッティじゃなくて、肉じゃがのしらたき。ああもう、面倒、箸で切っちゃおう。

「んっ!?」

 え、ちょっと、昴さんなに啜ってるの。あなたまで私と同じのを思い出して、あろうことかそれをやろうとしてるの?
 しかも口の端が少し上がってる、なんてノリノリで馬鹿なんだこの男は。いや、私はやらないからねそんなふざけたこと。

 箸で私と昴さんを勝手に繋いだしらたきを切ろうとした時、昴さんの左手に手にしているものを箸からスマホに変え、何か打つと私に画面を見せてきた。

「……?」

【そのまま】

 私が画面を見てすぐ、昴さんはスマホをテーブルに置き、私の右手を掴んだ。私から箸で切るって選択肢を奪わないでよ。
 その内昴さんはイスから立ち上がり、空いた手で私の二の腕を掴んで半ば強引にイスから立たせる。随分と昴さんとの距離が、近くなっていた。
 ……どうしよう、もうここまできたら昴さんに乗ってあげた方がいい?
 でも終わった後に何かしら言ってからかいにきそう……ああ、それは私が途中で噛み切っても同じなのか。
 だったら乗ってあげよう、私達を繋いでるのはパスタじゃないけど。

「ねえ、2人とも何遊んでるの?」

 コナン君の声がしたちょうどその時、昴さんとの距離はなくなった。
 軽く昴さんの唇が軽く接触し、すぐに離れると昴さんは何食わぬ顔で元の姿勢に戻ってコナン君へ視線を向けた。

「ああ、コナン君。何か用があったのかな?」
「メガネのメンテナンスで博士の家にね……ねえ、なんでしらたきで遊んでたの?」
「ちょっと映画のシーンを再現していたんだよ」
「しらたきを啜ってキスする映画なの?」
「コナン君、何も聞かないでもう帰って!」
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