「……さ、……汐海さん!」
「え、あ…は、はい!」

目を覚ます。
ということは、わたしは寝ていたということだろうか。
空腹に支配された思考回路が働き出すまでに少しの時間を要したが、狛枝先輩の顔を見るにわたしはこの微妙な場所で眠りこけたのだろう。
今までのこれが、全て夢ならどれほどよかっただろうか。
現実は決して何の進展を迎えたわけでもなく、わたし達はまだまだ迫り来る餓死を怯える生活を続けなければならないらしい。
わたしに残された体力はほぼないと言っていいだろう、明日という日が迎えられるかどうかも今のわたしには残念ながら検討がつかない。
しばらく呆けていたが、やがて視界がクリアになってくる。
わたしが寝ているのは、やけにふかふかした高級感のあるベッドだった。
…あれ、わたしってマスカットハウスで寝てなかったっけ。
次に外装を見る、そこはマスカットハウスの緑とは全く違う赤一面の壁紙、つまりここがストロベリーハウスのどこかであることを表していた。
天井を見ればこれまたうんざりするほど整った内装。
使える思考を全て場所に費やした結果、わかったことは…ここが、ストロベリーハウス内の豪華な客室であるということであった。
そうして、豪華な客室を使っているのは田中先輩と狛枝先輩であることをわたしは知っている。

「え?ここ、まさか先輩の…」
「あはっ、本当に汐海さんには申し訳ないと思っているよ、ボクみたいなゴミクズが2日も寝たベッドにキミを寝かせてしまったなんてね」
「え……………?」

耐えられない空腹だったけれど。
裏切り者であることを責め立てられて辛いけれど。
それとこれとは、いろいろと訳が違う。

「あ、の…わたし、つまり先輩のベッドで」
「ぐっすり寝てたね、まあそうなるのも無理もないけどさ…」
「うう、うええ…!?ほ、ほんと…あの、すいません…」

大声を上げる体力なんてどこにもないはずなのに、思わず声が漏れる。
狛枝先輩が、どうしてわたしを…。
だって、マスカットハウスにいたわたしを…同じマスカットハウスの普通の客室じゃなくて、わざわざ先輩の使っているストロベリーハウスの豪華な客室まで運んだなんて。

「…あのさ、ちょっとボクの話を聞いてもらってもいいかな」
「は、はい!どうぞわたしでよければ、その…」
「うん、ありがとう。昨日あの後ボクは考えたんだ、…汐海さんはボク、いやボク達をこの島から出してあげたいと言ったけど…ボクだってキミをこの島から出してあげたい」

先輩らしくない、回りくどい表現だった。
そこから真意を汲み取るのは、流石に今のわたしには残念ながら不可能である。
だから、言葉のまま…余計な詮索をせずに、その言葉を受け取った。

「キミもここに来たのは不本意なんだ、確かに事情は違うかもしれないけど…それでもキミだってボクの愛しい超高校級の才能を持った人間なんだよ」
「そう、…ですね」
「もちろん彼らだってそうだよ。でも…そもそも、殺し合いが起きてしまったのはボクのせいだけど、こんなこと他の人に言ったらそれこそ殺されちゃうかもしれないけど、それでも…キミには死なないで欲しい。例えボクや他のみんなが死んだとしても、キミには生きて欲しい」

狛枝先輩がわたしに何を言わんとしているかは、よくわからなかった。
ただ…自惚れかもしれないけれど、わたしに少しだけ好意を向けてくれているのではないかと、そう思った。
狛枝先輩以外が死んでも、わたしに生きて欲しいとそう伝えた狛枝先輩は…どこか達観していて、それでいてどこか美しかった。
でも、ただ…わたしの願う結末は、とても欲張りで、狛枝先輩だけが生きることじゃなくて。
わたしも、狛枝先輩と共に生きたかった。

「もしさ、本当に餓死してしまいそうになったとしたら…ボクはこの中の誰かを殺してもキミに生きてほ」
「や、やめてください!!そんなの嫌です、わたしは…わ、たしは…!」
「……ごめん、何言ってるんだろうねボクは。本当に最低のゴミクズだよ…空腹っていうのは、本当に辛いね…」

今のは、狛枝先輩も空腹で辛いから。
だから、うっかりそんなことを言ってしまっただけに過ぎないの。
でも…あの狛枝先輩だってここまで追い込まれているんだ、他の人達が何かを起こしてしまっても、本当におかしくない。
わたしは本当に最低で最悪の人間かもしれないけど、ここから出たいし殺人を犯したくもない。
でも、ここから出なければ死ぬだけであるし、一番殺されるべきはわたしなのだ。

「…もし、殺し合いがまた起きるとしたら狙われるのは確実にキミなんだ。……裏切り者を殺したって免罪符になるんだから」
「それ、は…わかってます…」
「だから、もう汐海さんはこの部屋から…出ないで。ボクは、キミを失うなんてことしたく、ないんだよ…」

狛枝先輩は、わたしのことを心配してくれているのだろう。
優しくて、…少し狂っている彼だからこそ。
それでも、わたしの肩を抱きとめる狛枝先輩は…微かとは言えど確かに震えていた。
そんな繊細な感情を受けて、今のわたしには何ができるのだろうか。

「先輩がそう言ってくださるのなら…わたしは、ここから出ません。でも、わたしだって狛枝先輩が心配で心配で、仕方ないんですよ」
「あは、ならボクも今日はずっとここにいるよ…」

震えた狛枝先輩の手を握る。
そしてわたし達は何を考えることもなく天井を見つめ、ぼんやりとただその退屈な時間を過ごした。

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「そろそろ、夜なんですかね…」
「なんか、色々どうでも良くなるぐらい退屈だよ…寝ようか」
「あ…そう、ですね」

睡眠、というのにも体力は使われる。
かと言って寝ないわけにもいかず、きっともう夜であろう時間にわたし達は寝ようという話になった。
部屋に時計が着いていないのは結構面倒である、わたしは外に出るわけにもいかないし…狛枝先輩を外に出したくもないから正確な時間というものがわからないのだ。

「それじゃ、わたしはソファーをお借りしてもいいですか…?」
「え?いや、ボクのベッド使ってもらって…ってごめん、ボクみたいなゴミクズが寝たベッドは嫌に決まって」
「い、いやそういうことじゃないですけど…」

といういつもの狛枝先輩らしい冗談…いや多分本人は本気だが、そのもとわたし達は就寝することにした。
同じ部屋で狛枝先輩が寝ていると思うととても緊張したけど、それも長くは続かず意識を手放した。




そうして次の日。
狛枝先輩と一緒に外に出るのはまずいと思い、わたしは先に起きて連絡エレベーターへと向かう。
しかし、そのエレベーターが壊されているのだ…何か、とても嫌な予感がするのは間違いないだろう。
ならばイチゴ回廊を抜け、ストロベリータワー兼マスカットタワーに直で向かえばいいとも思ったのだが、こちらも扉が壊されている。
これは流石に非常事態だろうと思い、急いで豪華な客室へと戻り狛枝先輩を起こす。

「…とにかく、まずは合流した方が良さそうだね」
「は、はい…でも、そのわたしは…」
「大丈夫、汐海さんのことはボクがちゃんと言うから。…とにかく、ラウンジに行こう」

客室を出て、ラウンジへ向かうと九頭龍先輩が驚いた顔をしてわたしを見た。
それはもちろん、無理もないことなのだが。

「オイ汐海…何でお前がここにいるんだ」
「それはボクが説明するよ…とにかく、非常事態だから汐海さんのことは後だ。左右田クン達を待とう」
「く、九頭龍先輩…すみません…」

しばらくすると残りの先輩方も集まる…だが、弐大先輩の姿はなかった。
心配になったわたし達は、弐大先輩が使っている普通の客室を訪れてみたが、ここにも彼の姿はない。
マスカットハウスに行く手段がない以上、向こうのことがわからないが恐らくそちら側にいるのは間違いないのだろう…今のわたしがこのストロベリーハウスにいるように。
向こう側に連絡が取れるかもしれないということで電話をかけようとしたその瞬間、絶対に聞きたくないあのアナウンスがなってしまった。
そう、死体発見アナウンスである。

「お、おい…どうすんだこれ…」
「またかよ…!ふざけんじゃねえぞ…」
「だが、まずは向こうに連絡を取るべきだろうな…」

マスカットハウス側で、何らかの殺人が起きたのに間違いはない。
そのことも含めて、向こう側に連絡を取りたかったのだが…如何せん向こうが出る様子はない。
ちょうど、今向こうでは死体を発見したばかりなのだ…電話に気づいていない可能性もある。

「とりあえずかけ続けて…向こうに連絡行ってからこちらも捜査を始めましょうか」
「その方がいいだろうね…後、左右田クンにはエレベーターか回廊のドアの修理をお願いしたいところだけど」
「つーか何で普通に汐海がいるんだよ…!話はそっからだろ!」

わたしが何故ここにいるかを、狛枝先輩に誤魔化しながらもわかりやすく説明してもらえた。
その後しばらくして、日向先輩から電話の応答があったらしい。
犠牲者は、弐大先輩。
よりにもよってあの弐大先輩だ、彼は2回死んだと言っても過言ではないだろう。
わたしがここでできる捜査は何か、先輩方が朝聞いたアラームや地響きの音について詳しく聞いた後考えることにした。
そもそも、何故わたしと狛枝先輩はその音が聞こえなかったのか…。

「…さて、それじゃあ捜査を進めようか。左右田クンはエレベーターの修理、九頭龍クンには時計の時間のチェックをお願いしてもいいかな」
「こ、狛枝先輩は…どこへ行くつもりですか?」
「みんなが行きたがらない場所…、かな?」

ストロベリーハウスに会って、わたし達が寄り付かなかったところと言えば一つしかない。

「い、嫌です先輩!あんな、危険なところ…、」
「でも、捜査するにはあそこも調べておかないといけないよ…それにボクの命なんて他のみんなの尊い命に比べれば…」
「いえ、わたしが行きます。裏切り者のわたしが、この中で一番命の価値なんてないんですから!」

ファイナルデッドルーム。
命懸けのゲームに勝利すれば、極上の凶器が手に入ると言われていたあの場所だ。
場所はストロベリーハウス1階、わたしが行くしか…方法はない。

「あっ、待ってよ汐海さんッ!駄目だ、キミはあそこに入っちゃ…!」
「いいえ、行かないと駄目って言ったのは狛枝先輩です。それに、昨日も一昨日も、わたしが裏切り者ってわかった時も狛枝先輩はわたしのことを心配してくれた。それだけで、満足ですから」
「……どうしてボクは、キミを止められないのかな」

奇しくもそれは、あの学園生活で苗木くんがわたしにかけた言葉と同じだった。
あの時は、狛枝先輩を思い出すために。
そして今回は、事件の真相を暴くために。

「……わかった、キミがどうしても行くって言うなら。ボクも着いて行く」
「そ、それじゃ意味がありません!わたしは、先輩を危険な目に会わせたくなんてない!」
「それはボクだって同じだよ!それに、ボクは幸運なんだから…汐海さんが1人で行くより勝率は高いはずだよ」

それは確かに、そうだけど。
でも、それでも。
これは、未来機関の人間として、狛枝先輩の恋人として。
わたしは、ファイナルデッドルームでこの事件の真相を暴かなくてはならないのだ。

「さあ、行こうよ」
「だ…だめです、先輩」
「キミの要望とボクの要望、二つを叶えるにはこれしかないんだよ」

命懸けのゲーム、それは一体どういうものなのだろうか。
わたしは、狛枝先輩から逃げるように駆け足で例の部屋へ向かった。
扉を開けると、そこには奇妙な血文字の数々。
ファイナルデッドルーム、これが、命懸けのゲーム……。
狛枝先輩が来ていないか扉をもう一度開けようと思ったその時、急にわたしが扉を開けてしまったことでバランスを崩したのか、何とも不幸なことに狛枝先輩が部屋に入り込んできてしまった。
再び、扉を開けようとしたが…皮肉にも鍵がかけられ、わたし達は名実共に閉じ込められたことになったのだった。

「…あは、ボクの幸運も捨てたモンじゃないね」
「先輩の馬鹿…!もう、本当に…ッ」
「ごめんね、じゃあ…とにかくこんなのさっさと終わらせちゃおう」

というわけで、そこから脱出作業が始まった…つまりはリアル脱出ゲームと言ったところだろうか。
ここにある道具だけで、この場所から出ればいい。
ファイナルデッドルームなんて大仰な名前にもかかわらず…そこは意外と難易度も高くなかった。
お決まりの暗号パターンと、順序よく事を運んで行くだけ。
本当にこんなので凶器が手に入ってしまうのだろうか…?
20分もかからなかっただろう、わたし達は最後のパスワードを入力して、脱出ゲームをクリアしたのだ。

「…なんか、意外と呆気なかったですね」
「そうだね、あんなに覚悟を決めたっていうのに…なんだか拍子抜けだよ」

そう、笑っていたはいいのだけれど。
いつまで立っても、扉が開く様子は見られない。
代わりに、出てきたのは銃と、手紙。

「…へえ、つまりこの脱出ゲームは前座でしかなかったってことだね」
「ってことは、…この、ロシアンルーレットをやらなきゃここから出られない!こ、こんなのただの運じゃないですか…!!」
「…いや、むしろただの運で助かったよ。こんな茶番はボクに任せてよね」

手紙に書かれていたのは、あの脱出ゲームが単なるロシアンルーレットの参加権を得るためだけのものであったこと。
そして、このロシアンルーレットこそが命懸けのゲーム…弾数によって、得られる景品も違うらしい。
だが、そんなことはどうでも良いのだ…それより問題は、完全に運でしかないロシアンルーレットをどう攻略するのか。

「先輩、何やってるんですか…!」
「何って、ロシアンルーレットだけど…大丈夫、弾は1つだけ抜いておいたから1/6の確率で成功だよ」
「ちが、やめて先輩ッ…そんなこと、しないでください!」

確かに、狛枝先輩は超高校級の幸運である。
だからこんなロシアンルーレット、しかも1/6の確率を引き当てるぐらい動作もないことなのかもしれない。
実際、十神くんが殺された時だって彼は1/16の確率を引き当てたのだから。
だからと言って、こんな簡単に、人の命がかかっているものをやらせるわけにはいかない。
でも、これをしなければわたし達に未来はない。
ならば、…わたしは。


「……汐海さ、…ッ!!」


わたしのとった行動は簡単だ。
狛枝先輩の手に握られた銃を、その銃口をわたしの方に、向けるだけ。
そうして、彼の指を抑えてあげれば…カチャリという音が響くだけ。

「…ふふ、成功みたいですね。流石超高校級の幸運さんですよ」
「き、キミは…何てことを!」

成功、した。
本当は賭けだったけど、でも狛枝先輩の死ぬ確率が5/6であることよりも、わたしが1/6で生きる確率を引くことを信じたかった。
だってほら、なんか…運命みたいじゃないですか。
狛枝先輩の幸運が、わたしに作用する瞬間を。

「…ほら、空きましたよ」
「キミって本当に…、なんていうか」
「あはは、成功したんだからいいじゃないですか…へえ、なんだか歪な部屋ですね」

オクタゴンと呼ばれるその部屋は、非常に変な形の部屋だった。
だが、そこには山のような凶器の数々だ。
調べようと思ったのだが、そこにはモノクマが現れなんと狛枝先輩を連れて行ってしまった。
…ロシアンルーレットは、1人につき1回らしい。
つまり、先程のアレはわたしがカウントされたわけだから…狛枝先輩がここに来る資格がないということ。

「…せ、先輩!わたしが、この部屋の謎を解くので…だから絶対変なことしないでくださいね」
「あは、それはキミの頼みでも聞けないよ…やっぱりボクもロシアンルーレットをやるべきらしいし」
「ちょ、待ってくださ……!」

再びファイナルデッドルームに連れて行かれた狛枝先輩を止めることはできずに、わたしはモノクマからあるファイルを受け取った。
それは希望ヶ峰学園のマークの入ったファイルだった。
1ページ目を開いてみれば、そこに書かれていたのは……『希望育成計画』?
とても気になるのは山々だが、こんなものを見ている場合ではないと思ってオクタゴンの捜索に入る。
すると、再びファイナルデッドルームの扉が開いた。
この扉が開くということは、つまり。

「また会ったね、汐海さん」
「こ、狛枝先輩…ッ!」
「まあ、結局ボクは本当にこの才能に愛されてるってことかな…?」

再び、彼は生存を勝ち取ったのだ。
わたしと狛枝先輩が共に生き残る確率は、1/36である。
サイコロを2回振って、両方とも6の目が出るのと同じ確率。
そんなちっぽけな確率を、この狛枝先輩は引いたのだ。

「ばか、馬鹿じゃないんですか…」「あはは、だってキミは生きられたのにボクが生きられないわけがないよ」
「それはそうかもですけど…はあ、もう狛枝先輩には何を言っても駄目みたいですね…」

生きていたのだから、これ以上は何を言っても仕方ない…だからわたし達は、自分のやるべき事を進めるべきだ。
『オクタゴン』…極上の凶器の眠る場所。
確かに数々の凶器は見受けられるが、極上の凶器と呼ばれるようなものは見つからない。
ふと、窓があることに気づいてわたしは外を見る……ッ!?

「こ、狛枝先輩…外を見てください」
「……あは、なるほど。このドッキリハウスの構造が掴めたよ、やっぱり七海さんの推理は少し違ったみたいだね」
「…だから、この場所がオクタゴンって呼ばれるんですね」

六角形に四角形を置いた残りのスペースは、八角形になる。
つまり、そういうことだった。
そして、わたし達はさらなる発見をすることになる。

「…ねえ汐海さん、これを見てよ」
「こ、これって…マスカットハウスのモノクマ資料室ですよね」
「つまり、極上の凶器っていうのはこういうことだったんだね…」

このオクタゴンと呼ばれる場所は、流石命懸けのゲームに勝利した者に与えられるだけの価値はある。
犯人は、この建物の構造を使ったトリックを利用したに違いないだろう。

「…さて、大体わかったわけだけど。少しこの資料を見てもいいかな…?」
「はい、…あんまりいい予感はしませんけど、でも狛枝先輩が実力で手に入れたものですから」
「まあ、とりあえず日向クンの才能からかな」

日向先輩は、自身が予備学科であることをどう感じるのだろうか。
それに、学園時代のプロフィールだなんて…わたしや七海ちゃんはどう書かれているのだろうか。
未来機関ファイルの方は、懐かしいコロシアイ学園生活についての記録だった…こちらには、目を通す必要はなさそうである。
わたしも、『希望育成計画』についてのファイルを読みたいが…これは完全に学園内でも機密とされていたものであろう。
ちらりと覗いた時…関係者の欄に『松田夜助』と書いてあったのだから、全くもって良いことが書かれていないのは確実だ。

「ふふ、あははははははは!!」
「こ、狛枝先輩…?」
「あはは、おかしいや…そっか、そうだったんだね……」

狛枝先輩が見て笑っているのは、学園時代のプロフィールの方だ。
そこまで、面白い内容は書かれているのだろうか…日向先輩が予備学科であることぐらいしか、目新しい情報はないはすだが。

「…希望は、キミの方だったんだね」
「ど、どういうことですか…?」
「あはっ、この話は弐大クンの学級裁判が終わってからにしようか!ボクも、見極めたいことがある…」

意味深な発言を残して、狛枝先輩とわたしはマスカットハウス3階へと降りた。
そこからは、特に話すべきことはないだろう。
日向先輩に例の件を狛枝先輩が伝え、わたし達はマスカットタワーへと向かう。
弐大先輩の体は、鈍器で何度も殴られたような痛々しい傷痕だった。
それから、狛枝先輩とわたし、そして犯人だけが知っているこの建物の謎のヒントを狛枝先輩は提示する。
それが終わると同時に、見計らったようにアナウンスが鳴り響く。
またあの学級裁判をやらなければならないのだ。
と言っても、今回わたしは他の人に比べればわかることもかなり多いはずだ。
頑張らなくちゃ、そして…狛枝先輩の言っていたことの真意を聞かなければ。
もうこれが、最後の学級裁判であることを願うばかりだ。


超高校級のロボは時計仕掛けの夢を見るか?(3)


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05/06
【悲報】FDRが6行で終了


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