精神も極限状態。
学級裁判を無事終えたので、今度は4階が開放された…!!
4階にあったのは音楽室や学園長室、情報処理室に化学室!
ついに化学室が開放された。

「きゃーー!どうしよ、苗木くんどうしよう!」
「あはは、…よかったね汐海さん」
「うん!これでわたし、あの研究が思う存分できるよ…!」

それもあったのだが。
わたしのホームであり、最も才能が活かされる場所。
…娯楽室が開放されたときのセレスさんも、こんな気持ちだったのかな。

自室の資料を全て持ち運び、アルターエゴのファイルのメモを並べて、研究の準備はばっちりだ。
もうお昼もすぎているが、今は昼食なんて食べてる場合じゃない!
とりあえずこの薬だけは作っておきたい、…これは多分、わたしが全てを知らなければならないものだと思う。
ファイルに書いてあったわたしの名前…あれはどういうことなのだろう。
それに、松田夜助って誰だ…生憎のところ、わたしにはそんな知り合いはいない。
研究に没頭していると、既に2時をすぎていた。
今日の2時からはアルターエゴの解析の結果を聞くんだっけ…それは流石に行った方がいいだろう。

『みんな!このパソコンに隠されてた資料の解析が終わったよ!』

流石アルターエゴ。
不二咲くんの遺した希望は、わたしたちにとって道標となるものだ。
アルターエゴ曰く、この学園では過去に『希望ヶ峰学園最凶最悪の絶望的事件』が起きたらしい。
その責任を取った学園長は今もこの学園のどこかにいる可能性が高いとか。
それとは別に、生徒たちを学園に閉じ込めて、場合によっては一生学園から出られないのも承知で籠るという計画が進行していたようだ。
それはまるで、今のわたしたちと全く同じ状況で。
謎は解明されるばかりか、さらに深まっていく。
今までの話を整理しようとしたところで、モノクマからの校内放送……また動機の提示だろうか。

「悲しいお知らせですが、……オマエラの中には内通者がいます」
「フン、やはりな…俺の予想は当たったようだ」
「誰!?誰なの!!」

本当にいたなんて、…今までの動機とはレベルの違う驚きと、そして悲しさ。
誰だか気になると同時に、誰だかわかってほしくない。
そんなわたしの心情なんていざ知らず、モノクマは非情にもその名前を告げた。

「内通者はー、大神さくらさんでーっす!後はオマエラの好きにして下さいね!」
「さ、くらちゃん…?嘘だよね、さくらちゃんがそんなこと、あるはずないもんね!」
「………」

内通者の正体は大神さん。
わたしたちの中で一番礼儀正しく、殺人とは対極の存在にいた大神さんが…まさか。
大神さんの親友である朝日奈ちゃんはそんなことを全く信じてはおらず、大神さんの発言を待つ。

「……黙っていて、済まなかった……」

とても悲しいが、どうやら真実のようだ。
大神さんが内通者とわかった途端、腐川さんや葉隠くんが責め立てる。
無理もないけど、それでも本当にそれはあの大神さんの意思なのか…。
すると、苗木くんは昨晩大神さんとモノクマが争っているのを目撃したらしい、…人質がどうとかこうとか。

「内通者なら言ってみろ、黒幕の正体は誰なんだ」
「済まぬ……、それは我も知らんのだ」
「ますます怪しいな」

大神さん曰く、黒幕に命じられたのは殺人が起きないで膠着状態になった場合、誰かを殺すよう指示されたらしい。
…なるほど、そうすることで次への殺人を繋げようとした訳だ。
朝日奈ちゃんへの謝罪を残して大神さんは体育館から出て行く。
すると十神くんが零した言葉が、朝日奈ちゃんの逆鱗に触れたらしく、ますます悪い雰囲気になってしまった。
霧切さんの静止で、その場は何とか収まったが…これからどうすればいいのだろう。
本当はお腹が空いていたのだが、食堂へ行く気分にはなれずに化学室へと戻った。
…とりあえず、大神さんのことは苗木くんたちに任せて、わたしはこの研究を終わらせることに集中する。
我ながら最低だと思うが、下手に朝日奈ちゃんを怒らせてしまったらと考えると何もできないのが本音だった。


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次の日の朝、食堂へ向かおうとすると葉隠くんの悲鳴が聞こえた、また…何かあったのか。
急いで食堂へ行くと、朝日奈ちゃんとジェノサイダー翔が対立していた。
どうやら朝日奈ちゃんは怪我を負っているらしく、わたしは苗木くんと朝日奈ちゃんを保健室へ連れて行った。
怪我の手当が終わった後、何があったのかと聞いてみると、やはり大神さんの事らしい。
すると当の本人である大神さんが保健室へ現れ、朝日奈ちゃんへと問い詰める。

「あ、朝日奈…!何があったのだ…!?」
「ああさくらちゃん、…な、なんでもないよ」
「違うべ!俺じゃなくてジェノサイダーの仕業だべ!!」

自分の親友が自分のせいで傷つけられた事に耐えられなかったのだろう。
大神さんは行き場のない怒りを何とか抑え、何かを決意したかのような顔つきでその場を離れた。
それを追うように朝日奈ちゃんも保健室から出て行く。
…とりあえず、一旦食堂に戻って、虚しく一人朝食をとった。
最初はわたしたち、16人もいたのになあ……。


オール・オール・アポロジーズ(1)


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02/11


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