最終下校時間を過ぎた学園都市は非常に閑散としていた。
もちろんそのようなことを気にすることもなく、能力を使用し風に乗って走る。
訪れたのは学園都市ではそれほど珍しくはない、小さなビルの研究所である。
ドアを開けようとすればどうやら電子ロックがかかっているらしく、第三位のような応用性をもたない楓は仕方なく風の刃でドアそのものを破壊した。
「…待ってたわよ、檸絽楓さん」
「……その子を放して、話はそれからよ」
くすりと微笑を浮かべたその科学者は、奥の部屋から一人の少女を連れ出した。
その少女に意識はなく、科学者の腕に抱かれている。
「……」
「嫌ねえ、そんな怖い顔しないで欲しいわね、眠っているだけよ」
「…そんな言葉が信用できるとでも?」
睨みつけられた科学者は少し不服そうな顔で諷を傍にあったソファーへと寝かせる。
どうやら諷は本当に楓をここに連れ出す材料の一つでしかなかったようで、呆れた顔の楓を窘めた。
「それじゃあ話をしましょう。私は木原、とだけ名乗っておくわね」
「…あの、木原なの?」
「ええもちろん」
木原家とは。
学園都市は超能力開発という科学の発展に関して優れた街というのは周知の事実だろう。
そしてそこには勿論多数の科学者が存在する、そんな科学者の中でも屈指の頭脳を持つ家系と呼ばれるのがこの木原家だ。
実際に楓が木原家に遭遇するのは始めてのことだが、この暗部に属したころからロクな噂を聞かない連中というのも本当だ。
「科学者風情が、よくもまあ」
「あら、貴女のその能力だって、科学者様の産物よ?」
口角を上げ楽しそうに微笑む科学者を、心底憎そうに侮蔑の視線を送る。
「さあ、愉しい愉しい実験を。……始めましょうか?」
Beginning Experiment
(科学者の遊び)
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05/19
お久しぶりです!
アニレー2期も始まってきてテンションは上がってるんですけど文章は進みません!
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