「…そこをなんとか」
「……本当はもう少し入院していた方がいいんだけど、まあ君もいろいろあると思うからね?」
「ありがとうございます、それじゃ!」

めでたく楓に退院許可。
まず何をするか考えてみたが、あの一日を除いて楓は全部入院食、たまには少し高級なご飯も食べたいものである。
…と、そんなことを思いながら繁華街のような場所をふらふらと歩いていた。

「お、第八位じゃん」
「…え」

楓の後ろから発されたその声。
忘れもしない、つい先日に楓を病院送りにした男の声だった。

「…第二位」
「おーやめてくれ、俺には垣根帝督って名前があんだから」
「それはわたしも同感ね、わたしは八位じゃなくて檸絽楓よ」
「悪いね、えっと楓?」
「気安く名前を呼ばないでもらいたいんだけど、垣根さん?」
「じゃあ檸絽か?それなら俺も敬語を使って欲しいもんだ」

彼らをよく知らない者から見れば、その光景は仲の良い男女のように見えたかもしれない。
しかし彼らは数日前互いに殺意を向けた相手だったのだ。
表面上だけでは決して推し量ることのできない何か、二人の間には、確かにそれが浮かんでいた。

「…で、その第二位の垣根さんがどうしてこんなとこにいるんですかね」
「いや、ここを通ったのはほんとたまたまなんだけどな」
「へーそーなんですか」
「自分から聞いたくせに興味なさそうだなオイ」

楓は深い溜息をついて俯く。
その様子を訝しく見ていた垣根はあることを楓に尋ねる。

「そーいやお前さ、どんな事件起こしたんだよ、暗部入りなんて相当だぞ」
「その暗部なんだから自分で調べたらどうですか…女性には聞いてはいけないこともあるんですよ」
「…ふーん、まあいいけど」

楓の刺々しい敬語に含まれる意味を汲み取ったのか、少し面白そうに口角をあげた。

「…まったく、こうも人に負け続けると癪ね」
「お前その辺のやつには負けなさそうだもんなー、誰に負けたんだよ?」
「負けたのはあんたと三位と四位」
「おお、見事に全員超能力者じゃねえか、無理もねえな」
「超能力者はいつかわたしが倒すのよ」
「…俺もかよ」

不敵な笑みを浮かべた楓は、手を胸に当て自信ありげにそう話す。

「だからそれまでは、垣根さんって呼んであげますよ」
「…へえ」

邪気の消えた瞳で垣根を見つめ、本心を口に出す。

「第二位と手合わせできましたし、その点は感謝してもいいかもですねえ、…ただ一女子の目線からして、女子に手を上げる男は最悪だと思いますけど」
「あー、悪かった。…にしても、自分を殺そうとした奴のこと、そんな簡単に許せんのかよ、お前」
「許すも何も、あれは仕事ですし、わたしだってそうするつもりでした。それにわたしは誰より強くなりたいだけだから」

楓は迷いない瞳でそう告げた。

Srtong Expectation
(悪くない悪印象)

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03/07
次回ぐらいに原作に い い 加 減 絡みたいですね


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