21
もはやクリスマスパーティーとは言えない酒宴が終わり、皆で雑魚寝をして(これについても片倉さんからの説教があった。オトンが怖い。)迎えた翌朝――結局、宴のタッグプレイによって2人同時に帰還できることが徳川さんと慶次さんのプレイによって分かり、主に帰還はPS3で行うことにした。
ちなみにせめてものクリスマスプレゼントとして私はそれぞれ安物ながらもひざ掛けをプレゼントした。
だって暖房もないあちらの世界の冬は寒そうだし、夏は夏でお腹にかけてもらえばいい。
皆には大いに喜ばれた。
多分向こうでは手に入らないような触り心地の好い代物だったからだと思う。
続けて帰還していったのは謙信様とかすが。
帰る前にかすがは私にそっと耳打ちをした。
「…アイツが…猿飛が何か名前を傷つけるようなことをしてきたらいつでも言え。私はいつでも謙信様と名前の味方だ。」
「…かすが、ありがとう!」
謙信様と同列に語ってくれたかすがに感極まって、かすがと私は抱きしめあう。
そんなかすがを見て、謙信様はふっと微笑みを浮かべ、「いいともができてよかったですね、うつくしきつるぎ。」と呟く。
名残惜しかったが、時間もないのでそろそろ離れると、謙信様とかすがも帰還していった。
次に帰還に名乗りを上げたのが伊達主従。
特に片倉さんは片づけまで手伝ってくれていて、本当に頼りにしていたが、帰るとなると少し残念だ。
私のそんな表情が出ていたのか片倉さんは言った。
「テメェら、夫婦仲睦まじいのはいいことだが…羽目は外すなよ。お前がこちらの世界に来た時は奥州の地を見てもらいてぇ。こちらに来た時は必ず文を寄越せ。」
「よく言った!小十郎。別に猿は一緒でなくていいぜ。あのilluminationは綺麗だった。今度は奥州で月見でもどうだ?」
政宗さんの言葉に佐助さんは詰め寄る。
2人が睨みあいを続けていると、「おやめくださいませ。」と政宗さんを片倉さんは叱りつける。
うん、片倉さんは最後までオトンだった。
――残ったのは武田軍だけだった。
幸村さんは私の方を見たりと御館様の方を見たりと、何だか逡巡しているようだった。
そんな幸村さんに御館様は豪快に笑って言った。
「幸村よ、ワシらは一足先にあちらに帰るとするかの。」
「だが、某…何やら名前殿のことが心配でなりませぬ。恐れながら佐助と共に後に帰還致しますゆえ……。」
「嫌だな〜、真田の旦那。そんなに心配しなくとも俺が名前ちゃんを守りますって。だから、旦那は安心して御館様と共に武田の地へ帰ってください。」
「佐助もそう言っておる。それに幸村よ……夫婦仲は少しくらい破廉恥なのが長続きする秘訣よのう。」
――御館様の言葉に赤くなって固まる幸村さんと「さすが御館様!」と指を鳴らす佐助さん。
…何だ、この図。
すっかり置いてきぼりを食らった私は我に返り、幸村さんに包みを渡す。
包みの中は余ってしまったケーキの詰め合わせ。
きっと幸村さんに渡せば何とかなると思った。
体のいい残り物処分である。
「幸村さん、これ早めに食べてくださいね。昨日のケーキの残りです。」
「…よいのか、こんなに頂いて。」
「すみません。残り物処分です。お願いできますか?」
「あい、分かった!佐助、名前殿を泣かせたら承知せんぞ!」
「分かってるって、旦那。」
名残惜しいような表情を浮かべた幸村さんとどこか愉快そうな表情を浮かべた御館様。
御館様は消える直前、呟いた。
「佐助がそのような顔をするとは思わなんだ。お主、まっこと不思議な嫁御よのう……。」