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12 「意馬心猿の情」


12


 翌日からいつもの日常が始まった。

朝早く出勤して夜遅くになったら帰ってくる。


 ある程度のお金を佐助さんに預けて自由に帰ってもいいし、出かけてもいいと言い残してから、会社へ向かう。

笑顔で見送る佐助さんはまるで新妻のように甲斐甲斐しい。



「ねぇ、行ってきますのキスは?」

「ああ、もう電車の時間があるので行ってきますね。」



――ただし「行ってきます」のキスをせがむ茶番はやめていただきたい。


 どこで覚えたのかは知らないが、現代ナイズされていく忍に頭を抱えつつ、会社へ向かう。

ここからはいつもの風景。

唯一、違うのはいらないと言ったのに持たされた弁当。

満員電車の中、揺れたそれになんだか元気づけられたような気分になり、思わず微笑みを浮かべてしまった。


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