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4 「置いてけぼり」





 「猿飛佐助」の元の世界はゲームである。




 唯一の手がかりでもあり、ある意味ジ●リの人間だったのかという事実に私は眩暈を覚えつつも、しきりに彼が見つめていた戦国BASARA関連のグッズを土産と一緒にレジを通していく。



 土産物屋を出た後、ずっと無言を貫いていた彼は遂に口を開いた。



「なんかこれから世話になるっていうのに余計なものまで買わせちまったね。」



 彼が言う世界がこっちの世界にも形は違えど存在しているという事実を彼はどう受け取ったかはわからない。

なんて言ったって今自分が生きている世界がゲームの中だと言われても、私は信じられないし、信じたくもない。



それでも手がかりは手がかりだ。



「とりあえず手がかりは見つけたじゃないですか。今日は予定変更して、家に帰るついでに生活用品とこのゲームソフトを買いに行きましょう。何か他に見つかるかもしれないし。」

「そうだね。」



 私の言葉に少し元気を取り戻したのか佐助さんはいつもの調子で応えた。





 上田城を出てから駐車場へと向かおうとしたのだが、私の手を取ったまま佐助さんは固まる。

 また何か引っかかることでもあったのかと首をかしげると、佐助さんは引き攣った微笑みを浮かべていた。


あ、そういえばこの人戦国時代の人だった。


 あまりにも現代の服装が似合っていたために(上田城の中では少し驚くことはあれども普通だった。さすが忍びといったところか。)思い出すことのなかった事実が頭をよぎる。


 様子をうかがうように、一言一言許可をとるようにこれからの予定を告げてみる。



「えーと…これからあの鉄の箱、絡繰りっていうんですかね?あれの中に乗って家に帰ります。馬よりはたぶん乗りやすいとは思うんですが、大丈夫そうですか?顔色がかなり悪いんですが。」

「…俺様、忍よ。これくらい何てことないって。何なら乗らずに横走って行ってもいいよ、尾張ならいつも走っていっていたからさ。」

「お願いしますから、車の中に乗ってください。」



 半ばお願いするような形になってしまったが、無理やり佐助さんを助手席に乗せ、シートベルトを締める。

自分は運転席に座ると助手席に(強制的に)座っている佐助さんを見やる。


…まるで戦場に向かう兵士のような顔をしている。これは長くもちそうにないな。


 ショッピングモールに到着するまでの数十分何も起こらないことを祈りながら私はエンジンをかけた。



 ショッピングモールに向かう車の中、少し車に乗るのに慣れてきたのか佐助さんは車内を見渡していた。


さすが適応能力は高いようだ。
 

変な感心をしていると、佐助さんは窓の外の風景を眺め始めた。



「ここが上田ねぇ……名前ちゃんの世界では随分、変わっちまってるんだな。それにこの「くるま」っていうの初めて乗ったもんだけど、馬より速くていいね。足も疲れないし。それにこんなに絡繰りだらけの世の中じゃ、鬼の旦那が面白がりそうだな。」

「もっと速い乗り物もありますよ。それより鬼の旦那とか真田の旦那とか魔王とか…佐助さんの話にはいろんな人出てきますけど、どんな人だったか教えてくれませんか?」

「いいよ〜、名前ちゃんが知りたいんだったら教えちゃう。」



 口笛を吹きそうなくらい機嫌の直った佐助さんが「真田の旦那」を皮切りに、次々と元の世界について話し始める。

 楽しそうな彼の姿を少し横目で確認しつつ、ショッピングモールへ車を走らせた。



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