恐怖のおねだり
礼央×有紗(有紗攻め)
恐怖のおねだり
***
俺、もしかしたらとんでもないお願いを聞いちゃったのかもしんない。
生徒会室のソファに身体をあずけ、響は天井を仰いだまま溜息をついた。
目下を直視できないのには理由がある。
有紗が……あのあーちゃんが、目の前で膝をつき、まさに響の下半身に顔をうずめているからだ。
今は子犬みたいに、ペロペロと舌をだしてはヘソの下のあたりを懸命に舐めている。
ベルトとホックは緩められてはいるが、なんとかスラックスが腰にひっかかった状態。
しかし、このまま行けば、なにかとヤバい結果になりそうだ。
「あ、うぁ……あーちゃん、待っまって……っ」
僕も朔夜さんみたいに、エッチの上手な人になりたいです。
響にとって、悪友兼腐れ縁な上條朔夜の恋人である有紗から、とつぜんセックスの練習に付き合って欲しいと言われたのは、ついさっきのこと。
何でも、事に及ぶたび上條に一方的に喘がされることが不服だったらしい。
こと有紗に関して、凶悪なほど溺愛している上條のことだ。
おそらくベットのうえでも、手も足もでないほど、好き勝手に愛撫しまくってきたに違いない。
それはそれで、いいことだ。だって、俺が朔ちゃんに殴られなくて済む。
まことに勝手な話だが、二人が痴話げんかで仲たがいを起こすたび、上條の怒りの矛先は、なぜか響に向くのだ。
この際、有紗には悪いが、上條の思い通りに事が運ぶほうが響にとっては都合がよかった。
だからこそ尚更なのだ。有紗が上條とのエッチに不服があると言ってしまえば、確実にボコられる。
だったらこの際、俺の健康のためにも人肌脱いじゃおうっと、軽い気持ちで引き受けてみたわけだ。
「ふ……っんっ……ん、ん……っ」
言われるがまま、ソファに寝そべってはや小一時間。
響は、何ともいえない抑制心と本能との狭間で苦しんでいた。
思った以上にたどたどしい有紗の愛撫は、見ているだけで何とも愛らしいものがある。
どこをどう舐めれば気持ちがいいのか、まだよく分かってないのだろう。
ところ構わず舌を伸ばしては肌に這わせる感触自体はむず痒いだけなのだが、こまった事にアレが変に興奮をはじめてるのだ。
まだ何にも知らなさそうなあーちゃんが、俺を相手にこんな事をしてる……。
愛撫が的外れであればあるほど、有紗の懸命さがつたわり、ずっきゅんどっきゅんと心拍数がみるみる上昇していく。
このままいけば、本当に悪い出来心に背中を押されてしまいそうなのだ。
「あーちゃん、それ、すごくいいよ。その、ペロペロって舐めるやつ」
「こ……こう?」
頭をナデナデしながら褒めてあげると、恥ずかしそうに頬を染めた有紗が、上目遣いに舌を出してきた。
ぐああ……っ。
「ああ、うん。凄いかーいいよ……。それ朔ちゃんにしたげたら、絶対喜ぶからさ」
あーちゃん、本当けなげだなあ。
「ほ、本当……?」
褒められたことがよほどうれしかったのか、たどたどしい舌の表面を、いっそう響の下腹部に這わせていく。
まるで子供みたいな有紗の反応が、響の男心をさらに擽った。
「う、ん……っ。はぁ……っ。だ、だから、もうやめよう?ねっ?」
もし、このまま歯止めが利かなくなって、有紗とエッチしてしまったら。
それこそ本末転倒。
間違いなく朔ちゃんに殺されちゃう。
やだ。
朔ちゃんてば俺には全然遠慮しないから、尚更殴られんのは絶対嫌だ。
確かに有紗はめっぽう可愛いが、ここで我慢しなければ、自分の身が危ない。
「はい。それじゃあ、これでおしまい……」
と、ソファから起き上がって、有紗の頭を両手で持ち上げたときだ。
動いた反動で、とうとうスラックスが腰から落ちていく。
あ、と思ったときにはすでに、見事に勃起した響の分身が、黒いボクサーパンツの下から存在を露わにさせていて……。
「礼央―。もう、俺ずっと待ってたのに。いつ保健室に来てくれんの……」
またまた最悪なタイミングで最愛の弟、茉央が室内に現れる始末。
ヒイ……ッ!!
あまりの不運さに、もう声さえ出てこなかったが、床に膝立ちになった有紗と完勃ちしたあれをほぼむき出しにした響の姿を見れば、ここで何をしていたか、簡単に察しがつくわけで。
「うわぁぁぁ!!礼央のアホー!!礼央なんか死んじゃえ!ばか!」
この後、ワンワン泣きながら部屋を去った茉央と入れ替わるように、まるで死神のような顔をした上條が乗り込んできたのは、言うまでもない。
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