トリップ 番外編B | ナノ
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▼ 【砂糖】



イチゴミルクを作る粉が安かったからと買って来てくれたのを最近ホットにして出してくれる。甘くしてくれてんだろう、上にクリームが乗ってるのに何処か優しい甘さ。

仕事に行ってる不在の間、何となく冷蔵庫の冷えてるやつよりそっちが飲みたくなって記載通りに作ってみれば、知ってたけどやっぱり俺には甘味が足りず砂糖を加えたら確かに甘くはなった、けど違う。いつもあいつが出してくれるのと何か違う、甘さが足りねぇのかと更に追加しても甘くなったけど余計程遠くなった気がした。

もっと優しい味だった、けど盲点。クリーム入れてねぇじゃん。

飲み干したカップに再度粉と牛乳、砂糖を入れて温め客に出す用のコーヒーに使うクリームを垂らしてから飲んでも、やっぱ違う。

何だこれ、あいつどうやって作って来てんの? 何入れてんだ? 愛情?


甘くはなったしまぁ良いかと片付け、その日の夕方帰宅し台所で暫く作業した後に何故か俺の所に向かって来たあいつの手には、少なくなった砂糖のケースが持たれていて足すのを忘れていた事を思い出す。


「銀さんお砂糖使った?」

「あー、うん使った。悪い足すの忘れてたわ」

「それは良いんだけど何に使ったの?」

「飲みモンに入れた」

「そんなに沢山飲んだの?」

「沢山つーか、2杯だけど? お前買って来てくれた粉のやつ」

「2杯!? え、嘘でしょ、たった2杯にこんな砂糖使ったの!? 」

「……」


そっちか。まぁそうね、確かにそうね、補充とかの話じゃなくて消費の方だよね。確かに2杯に入れた減り方では無ェな、途中から良く分かんなくなって結果甘けりゃ良いかと言う結論に至った。


「何で! 駄目だよこんな大量に砂糖摂取しちゃ!病気になっちゃうでしょ!」

「おお、わ、悪い、お前が作ってくれる味になんなくて」

「えっ!? 」

「砂糖入れても甘くなるだけで違ェんだよなぁ、お前何入れて作ってんの? 愛情たっぷり入れてくれちゃってんの?」

「いや入れてないよ、ただの市販のイチゴミルクだもん。」


入れてねぇのかよ、そんな真顔で否定しなくても良いだろうに。
「待ってて」と言ってまた台所に消えた姿に多少なりとも落胆してる自分がいる、そこは嘘でも入れたって言おう?


「はい」

「んー? お、なに、作ってくれたんか」


イチゴミルクだ。もう昼間に2杯も飲んだけど思う味にはならなかった、ただのクリームじゃなくてホイップクリームだったか? そんなモン家にあったっけか。

一口飲んだだけで全然違う、甘さだけなら砂糖大量に入れた俺のやつの方が甘かったけど、こっちの優しい甘さのが旨い。


「あー、うま。これ何浮いてんの?」

「ん」


渡された袋には真っ白なマシュマロ。
マシュマロ……、ココアに入れると美味しいやつか、んな洒落た飲み方しねぇから考えなかったな。つー事はこれマシュマロ溶けたやつ浮いてんのか。


「砂糖は入れてないよ、これ1つ浮かべて温めてるだけ。」

「えっ! 砂糖入れてねぇの? なのに旨いなこれ、甘いし。」


俺はマシュマロから愛情を感じていたらしい、確かに旨いがほんの少しでもお前からの愛情は入って無ぇの?


「……もう、こんなに摂取しちゃって。折角砂糖控えてたのに。」

「砂糖控えてた? 何に?」

「ご飯とかデザートとか全部違うの使って甘くしてたの、なのに一気にこんな食べちゃって。」

「え? でも結構甘いの多く作ってくれてんじゃん?」

「黒砂糖とか蜂蜜とか良く煮たりとか、砂糖で甘くするよりはマシかなって。それでも沢山入れたら変わらないかも知れないけど砂糖取りすぎは病気になっちゃうもん、嫌だよ。」


知らなかった、自分の知らない所で健康管理されてたのか、甘くしてくれてんだなってのは知ってた、旨ぇし。けど工夫された甘さとは知らなかった。


「……愛情たっぷり入れてくれてたの?」

「そりゃ勿論、溢れんばかりに入れてますよ。美味しく出来てる?」

「うん、すっげェ旨ェわ。」

「ふふっ、ありがとー!」


少し処じゃなかった、毎日たっぷり込められたモン食ってたんだ。そりゃ自分で作れねぇワケだよな。


俺は毎日こいつからの愛情を取り込み生きてたのか、しかも気付かぬ内に摂取して他じゃ満足出来なくさせられてる。

けど与えたのはお前だかんな、最後まで責任持って与え続けてくんねェと餓死しちまうかんな?




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