トリップ続編 | ナノ
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銀さんのお陰で悩んでるのが馬鹿らしくなったけど、良く考えたらそれって凄い事だと思えた。
だってあれだけずっと脳内を占めてたのに一気に飛んでいったよ、銀さん凄い。それでも一時的に過ぎないからこれを機に考えないようにするんだ。


それを銀さんに言ったら暫くその思考が戻って来ないようにたっぷり飛ばしてみるかと提案されたの、そんな事が出来るなら是非お願いしたいよね。


「っ、……、ぅ、」

「そう、ちゃんと目で追って。息はゆっくりな。」

「ん、……、も、大丈夫っ、」

「何、また違う事考えてんの?」

「ぅっ、……っ、ちが、!……っ、銀さんの事っ、考えてる、っ、」


聞く限りでは怪しげな事ではなかったのに私の身体には刺激が強かったらしい。

銀さんの脚の間で背中を預けて座り、服の上から身体を撫でるから見ててと言われ眺めてたらゆったりとした動きで横腹やら脚やらを兎に角くまなく撫でられた。指先だけでなぞってみたり手の平で撫でたり、時折後ろから深呼吸や肩の力抜くように指示があり実行してると、ふと気付いた時には何だか身体がポカポカして来て何度も往復した筈なのに手が横腹に戻って来た瞬間身体が勝手に跳ねた。

変な声が出そうで手で口を覆えば手はサイドにある銀さんの膝に乗せるよう言われ、触り方が徐々に際どくなってるけど服の上からなのは変わらないし嫌がる程何かをされてるわけでも無い、寧ろこれで息荒くしてる私の方が変だよ。


「んっ、……、は、……あつい、」

「素直に反応出来んのはリラックスしてる証拠だから良い感じ、次ゆっくり脚の力抜いてくぞ。」


これはもしや催眠術か何かなのかな。

私の膝にある銀さんの左手がゆっくり滑らせるように内側を撫でてても力が入らない、しかもさっきからずっと頭がボーッとするの。なんか……


「…………ね、銀さん、」

「しー。大丈夫、変なモンじゃねーから。」


……やっぱり何か盛られたんだ。始める前にキスして来た時に何か流し込まれるからまた変な趣向をと思ったけど、あれ薬か何かだったんだ。


薬はたまに飲まされる時がある。前に仮死状態になる即効性の薬を飲んでも最初は効果が無かったのに突然効いたから、それを調べる為に銀さんが何処からか調達して来てくれた即効性の睡眠薬を飲んで確認したの。

そしたら効かないんじゃなくて効くのに少し時間が掛かるだけだった、銀さんが飲んだら直ぐ効く物も私が飲めば数分だけど時間がかかった。生まれた世界が違うから多少何かが違っても不思議では無いし特別困るわけでもないからちゃんと覚えておくって事で解決したけど、その後酔いやすくなる薬だと言って持って来るようになったから、また変なの持って来てたって事かな。


「……ん、……は、……銀さんも、飲んだ、?」

「飲んだよちゃんと。背中熱くねぇ?」

「熱い、……熱い、だけ?」

「熱上げるだけだからな、1時間くらいで下がるらしいし。」


こんなに熱いのにそれだけなの? 頭ボーッとするしドクドクする、何でそんなに普通なの銀さん。


「はぁ、……ん、……、」

「沢山汗かいたらスッキリするかなとも思ったけど想像より遥かに効いてんな、大丈夫か?」

「んん、……銀さんが、触るからぁっ、」

「あぁ、それで発熱倍なのね。そりゃツレェわな。」


不公平だ、どんどん上がって来た体温にもう意識さえ朦朧としてきたんだけど。額に触れた銀さんの手が最初は温かかったのに今は冷たくすら感じるよ。


「うわ、あっつ!? ちょっと待てヤベェわ、高過ぎじゃねぇか!」

「…………高杉さ?」

「いや違ェよ何言ってんだ。んなモン飲まなくてもスゲェ発熱すんのにそりゃそうだわな、馬鹿やったわ、ちょい待ってて。」


背中から温もりが消え布団に寝かされたらひんやりしてて物凄く気持ち良い、冷たさを求めて横を向いて転がったら頬がシーツに触れ少し熱いのが落ち着いて来た気がした。



「…………ん、きもち、」

「そっか俺が離れりゃ少し熱あるだけだもんな。けど水持って来るわ。」



熱が高いと頭がボーッとして何も考えずに済むんだな、確かに一旦スッキリするかもしれない。思考回路が正常に動いてないって事は分かるから銀さんのアイディアも一理あったね。



・・・



想像絶する高熱に焦ったが、急いで戻っても俺が触ってた時より安定してるらしく布団で大人しく転がってる。呼吸も荒くないし眠いのかゆっくり瞬きしながらボーッとしてるだけで特に動きも無い。


「平気か?」

「……うん……、でももうお布団、気持ちくない」

「お前の熱が移ったんだろ、ほら水飲んどけ。」


酷く遅い動きだが布団に手を付き起き上がり渡したコップも両手で持ててるし大丈夫か、チビチビと口に含んで少し幼げにも見えてくるけどな。

俺の方はもう熱が下がり始めてるし個人差はあるだろうけどそろそろ効果薄れて来る筈だ、酔い易くなる薬の方は全く効かなかったのに他は割りと効果あるって事か。

いつまで飲んでんのかずっと唇をコップに付け少量ずつ嚥下し喉が動いてる、前髪を避け手の平を当てれば熱はあるものの高熱では無ぇな。けどまだ薬は切れてねぇのか。


「……名前? 」



体温を計っていたら突然ホロリと一粒涙が流れ落ちた、スッキリさせる筈が熱で余計考えちゃったか? 逆効果だったかな、良い感じで意識飛ばしてやろうと思ったんだがあまりの高熱にそれ処じゃ無くなったんだよな。


「…………おねつ、……」

「え?」


聞き返しても見上げて来るだけで無言だ、ちょっと良く聞き取れなかったんだが……お熱? 熱はあるだろうな、俺が薬飲ませたから。……それが?
途中薬飲まされたんだって気付いたよな、熱がどうした、高くなってるって??

良く分からねぇから両手で頬の熱を確認したが、まぁ確かに高いっちゃ高ェが薬飲んでるしこれくらいは仕方ねぇよ。でも何かを言おうとしてるのか泣きそうな顔で唇が開いた


「……、…、」

「……眠りな、大丈夫だから。」


意識朦朧としてる、さっき1度上がり過ぎたのがいけなかったのか。
ハッキリとは聞き取れなかったが "お熱下がらない" と、目に涙を溜め不安と恐怖を訴えて来てる気がした。
熱があっても平気なふりして動きそうなこいつからして聞き間違いもあり得るが、まるで子供のような姿に手からコップを抜き抱き締めれば声を殺すように泣き、疲れたのか気を失うように眠り始めた。
気掛かりな行動ではあるが聞きづれぇ話題でもあんなこりゃ。









昨日の熱があった時の記憶は途中からあやふやであまり覚えてないらしい、多分1番高くなった辺りからだろうけど頭がスッキリした気がすると笑ってたから結果的に良かったと言う事にしよう。


元気良く、行ってきますと手を振りながら仕事に行ったが恐らく時間が経てばまた考え始めるんだろう。溜め込みまくって自分の手に負えなくなるまで隠されちゃ流石に腹も立つ、気付けなかった自分にもだが言って来ねぇ事も気に食わねぇ。それ処じゃ無ぇつーのはどう考えても言い訳だ、何度言い聞かせても言って来ねぇならその悩みやら不安の対象がどうせ俺だけだからだろ。

何で俺の事でんな悩むんだかな、他に悩み無ぇの?
……いや無ぇって事は無くても、そう言やあいつ基本的にまぁ良いやで済まさねぇか、良くない事も良いやっつーよな、なのに何でそうならねんだよ。


俺はてっきり一緒に行きてぇとかそう言った話かと思ってたが段々違う気がしてきた、けど自分自身分からねぇつってたからやっぱ俺が考えるだけ無駄なんだよな。








昼飯を食い終え、出掛ける二人をソファーの上で見送ったらまるでニートを見るような冷たい目で返されたが依頼が無ぇんだから仕方ねーだろ、とも思うけどこうしてる今もあいつは働いてると思うと……俺も悩むべきかと思えて来ないこともない。



…………が、結局寝てたらしく意識が飛んでる。けど時計を見ても30分しか経ってねぇし一瞬か、見に覚えのねぇ毛布が身体に掛けてあんのは何でだ。もう戻って来たのか、それとも忘れ物でもして戻って来てたのか?

まぁ良い

渇いた喉を潤わすべく台所へ向かえば微かに洗面所から聞こえる物音。この家は不法侵入者が多いからな、罰金っていくらだっけ、それで儲けられんじゃねぇのか。


「オイ勝手に侵入ッ、わっ、悪い!」


ビックリしたァァァァァ!? 不法侵入者じゃなかったわ、住んでるやつだった!つーか帰宅早ェな!? いつ帰って来た、毛布掛けてくれたの名前だったのか? 優しいな。なのに俺と来たら着替え覗いちゃったよ、いや見た事あるけどね、けど覗くのとは違ぇだろ。俺的には違ぇから焦った、でもあいつはどうだろう、恥ずかしがる所と大丈夫な所の差が激しいし俺の予想しねぇ所で照れたり意外と平気だったりする、……怒る? いやこんな事で怒るとか想像出来ねぇけど。


取りあえず逃げるように台所へ向かい糖分を補給し落ち着かせた、今は考えちゃいけない、一瞬だったのに脳裏に焼き付いて離れねぇが真面目に謝るべき所をふざけるのは良くねぇって事くらい分かる。ここは大袈裟にでも謝ってわざとじゃねぇって事を分かって貰うべきかと頭を悩ませていたが、チラッと顔を少しだけ見せてこっちを伺って来る姿に一気に脱力した。


「……あー、……悪い、帰って来てんの気付かなかった。」

「んーん、服にお醤油溢しちゃって、……ごめんね?」


すげェ照れてるよ、まさかの反応だった。そんな顔ちょっとだけ扉から出して照れんでも良いだろ、見せ慣れて無いからか? いやでもお前見られんの平気だろ、何でそんな照れる?


「ちょっとは怒るかと思った。」

「怒る? 何で?」

「いやだって覗いちゃったしよ」

「同じ家に住んでるんだからそう言う時もあるよ」

「ならなんで照れてんの?」

「……それとこれとは違うの、銀さんだって照れたじゃん。」


まぁそうね。不意打ちだからな、そう言うモンか。お約束な展開とか今まで無かったもんな、普通に気を付けりゃ避けられるし、こいつだってその辺で着替えたりしねぇから配慮くれぇ出来る。

……だがこんな反応見せてくれんならお約束な展開もアリだなと思えて来ちまうじゃねぇか、何でモジモジしてんの、可愛いね。


「今日早かったのな、あっち行かなかったのか?」

「今新人さんの特訓強化中なの。」

「ふーん、ならお前は俺と特訓する?」

「えっ!するっ!良いのっ?」

「いーよ」

「今から?」

「良いよ今からでも。」

「やったぁ!ありがとうっ、竹刀持って来るね!」


モジモジと可愛らしい姿から一変してパッと花咲いたように喜んでる。


あっちで結構やってるらしいから俺までやれば体力的にキツイだろうし俺が教えんなら戦うより違う方が良い気がしてあんまやってなかったが、あの喜び方を見るとやっぱりこっちの方が良いのか。









制限時間内に俺の攻撃を交わし続けるか俺に蹴りでも何でも当てられれば名前の勝ち。

避けれるギリギリを見計らって木刀振り落としてるが、俺はアイツに当てる事は出来ないから特訓つーより勝負にしてる。
自分で敗けを認めれば納得出来るだろうし、加減はしてるが受け止められないくらいには力を入れてるせいで受ける素振りも無くなった。
まぁ脚は別だけどな、足癖悪ィったらしゃーねぇよ、俺の木刀避けた瞬間に蹴り飛ばして来るしその脚掴まれてもまだ諦めずに攻撃して来る。粘り強さが増したつーか、しつこくなったつーか、マジでどんな特訓受けてんだろ。あの隊士の話じゃ飛ばされるとか言ってなかったか、どう言う事だ、それは特訓なのか?


「っ、……く、」



足もだいぶ速くなってるし反射神経も上がってる、真面目に特訓受けてる証拠だわな、ホント頑張り屋さんで感心するわ。


……にしても、さっきの笑顔が嘘のように睨んで来んだけど、蹴り当んねぇと舌打ちもな。
可愛いねぇ、汗流しながら必死に食らい付いて来んのも、その負けん気の無さも。ちょっとキスしただけで真っ赤になって照れるやつと同一人物だぞ?

はー、今日のお願い何にしよっかなぁ、さっきの下着姿が頭から離れねぇしお披露目して貰おうかな。もっかい頑張って貰うのもイイかも、正直アレはかなり良かった、……って、……やばい、





「っ!」

「っはぁ、っ、はぁ……っ、」



……頭ぶっ飛ばされるかと思った……。

俺の後ろにある木を蹴ってくれたお陰で頬スレスレで脚が止まった。威力に遠慮は無かったな、ガチじゃねぇか。

乱れた姿を頭に過らせちまって、振り落とした俺の木刀の威力が足りなかった。ずっと避けてた筈なのに威力が少ねぇと直ぐに気付いたのか蹴り飛ばされ、手からは意地でも離さねぇけど体勢整える隙も与えられず即座に戻って来た脚が後ろの木を蹴り付けて来た。完全に負けたわコレ、油断したな。



「もう銀さんとやらない。」



一回のミスで俺との特訓に興味を無くされちまったよ

肩で呼吸しながら不機嫌そうに顔を背け、鞄を置いてる場所まで向かう背中を眺めてたら竹刀を持ってない左手が上がって目元を拭くような素振り。

泣かせたか? あいつ真剣にやってんのに俺それ見て楽しんでるし良く考えりゃ腹立たしいか。


「あー、悪い。」

「……、良い、別に、そうかなって思ってた、……、でも、だったら最初から言わないでよ。優しさでして貰ったって嬉しく無い……、面倒くさいなら最初から言わないで……っ、私はっ、特訓って分かってても、っ、楽しんでやってたの、……っ、」

「……え? いやいやちょっと待て全然違うわ。俺の思ってるのとお前の思ってるのも違うし今言ったのも全然違ェ、思ってねぇからマジで!」


何か色々違い過ぎて焦る、面倒だと思われたのか。それは無ぇわ、なんたって俺のお願い掛かってんだから断じて適当にやってるわけねぇよ。



「……バカにしないでよ、気が散ってた事くらい分かるから。」

「バカになんざしてねぇって! 手ェ抜いたんじゃねんだよ、うっかり過っちゃって力抜けただけなんだって!負けるつもりは一切無かったし勝たせるつもりも無かったんだよ!」

「……私が勝てない勝負だったの?」

「いや俺に攻撃当たれば勝ちだし逃げ切っても勝ちだろ、けど俺に勝てると思うか?」

「…………いつかチャンスあるかなと。」

「まぁ足滑らせる事もあるかもな、負ける気無かったから無ぇと思うけどよ。」

「……なら、何が過ったの?」

「……あー、………………いや、別に適当にしてたとかじゃねんだけどよ、……ちょっと違う事考えてて……、悪い。」

「銀さんには余裕があるんだから違う事考えてたって面倒くさいって思ってるんじゃないなら良い、でも何考えてたの?」

「面倒くさいと思った事なんざ1度も無い、寧ろ楽しんでたよ俺も。特訓をつーかお前が食らい付いてくる姿見んの楽しいし。」

「何で何考えてたのか教えてくれないの?」

「……」


どうしても流してくれないんだな、それを聞かないと納得出来ねぇのか。けど真剣にやってるあいつを他所に俺の考えてた事と来たら……え、これはこれでダメじゃね? ふざけてると思われんだろ、至って真面目だが特訓に誠実では無いな。


「……言いたくない事なら良いや。」

「っ、いや、……あー、ごめん、勝ったお願い何にしよっかなって考えてた、前頑張ってくれたやつ良かったなーとか考えてたら、すげぇ乱れたお前の姿思い出しちゃって力抜けた。」

「……私、銀さんがこんなタイミングで嘘付かないって思ってる、だからそれ本気で言ってるって思うけど良いの?」

「うん、ごめん。」

「いや馬鹿じゃないの?」


……あれ、いつもの台詞だ、ただの呆れ。いや呆れられてホッとすんのもおかしいけどよ、でも許されるやつだよねこれ。何で? お前さっき怒ってたろ悔しくて涙まで流しちゃってたろ、この理由は許されんのか? いや何で??


「え、俺許されんの?」

「……怒ったわけじゃないよ、悲しくて。……沖田くんの影響で特訓しようかって言い出してくれたんでしょ? でも理由は何であれ私は嬉しかった、銀さんも怪しげな笑みだけど楽しそうに見えたし、…………でも、銀さんにとってこの特訓は何の為にしてるのかなってずっと思ってた。」

「……何の為に、」

「銀さんは、私が喜ぶからしてるの? この特訓に、銀さんの意思はあるの?」

「俺の意思? お前が喜ぶのは知ってるけど俺もそれなりに楽しんでるぞ? まぁ特訓をつーよりやってる時のお前の姿見んのとか終わった後のお願い聞いて貰えんのとかだけど、それはお前的に良しとされる理由に入んの?」

「入る。」

「えっ、入るんだ。なら楽しんでやってる、寧ろワクワクしながらやってるかも。」

「そう。……そっか、ありがとう」


こりゃあっちこっちに散らばってんだな、こいつの不安とやらは。しかもやっぱり俺の思考勝手に決めつけてるし間違ってるし大したこと無ェ事に不安感じてんじゃん。
そうやって全部吐き出してくれりァ解決しそうなのにそれが出来ねぇから厄介だ。けどこれは大きな進歩じゃねぇのか、ずっと不安だった事1つ解決したじゃん。


「他には? 他何か気になってる事無ぇの? 折角だし聞けよ全部。」

「……どうして私に教えてくれるの? 特訓もだけど、捕まる時のとか、」

「知ってて損は無ェと思って。けどやっぱそっちは好きじゃねぇ? 」

「ううん、凄いなって思って聞いてるよ。脳内でちゃんとシミュレーションしてる。」

「真面目かよ。まぁ使えたらラッキーってくれェだけどな、お前結構巻き込まれるから何も知らねぇより少しくれぇ知識あった方が役立つかも知んねぇし。」


だから終始真顔だったのか、楽しんでは無ぇが真面目に聞いてくれてたって事なのね、つまんねぇかもとは思ってたけど想像以上に学ばれていたらしい。

話し合いって素晴らしいとこいつと話してるといつも思う、勘違いが斜め上に行くが理解も納得も早いからちゃんと解決するしよ。

空いてた距離を埋めるように近寄ればあっちからも歩いて来るし、すげぇ平和に解決したわ。


「悪いな、真剣にやってんのに力緩んじまって。」

「力緩んだ理由があれなら私は悲しくないよ、それに確かに真剣にやってるけど銀さんとする時は戯れの一種と思ってやってるからね? 負けたら悔しいけど過度な手加減で勝っても喜ぶよ。」

「……え? ちょっと意味が分からねぇ、過度な手加減で勝ってもお前喜ぶの?」

「うん、やる気無くてなら嫌だけど私が勝てなさそうだから加減するかなーって気持ちなら多分気付くし、ありがとうって思う」

「マジか。あの話じゃガチな特訓してんのかと思ってたわ。」

「沖田くんの事? 沖田くんのと銀さんのは違うもの、だって銀さんもお遊び混じれでしょ? 」

「まぁな、あっちは?」

「遊ぶ余裕なんて無いよ、ちょっとでも目を離したら折檻よ。」

「折檻って何!? だからずっとこっち見てたの!? どんだけガチなのかと思ったら身体に教え込まれてんのな。んじゃこっちはこっちで別物として楽しんでるって事?」

「うん、銀さんずっと私見てる。」


……そんなんいつも見てるけど。

何故か機嫌良く腰に腕を回し抱き付きながら見上げて来る。

なぁ分かってんのか、お前の不安なんざ俺の手に掛かればこうやって数分で解決出来んだぞ。泣くほど思い詰めてんのに直ぐ笑顔に出来ちゃうんだよ、なのにソレが分からねぇから出来ずに繰り返す。
酷くもどかしい、そしてその不安を忘れたかのようにニコニコと笑顔を向けるコイツに俺はずっと振り回されんだろうな。


「ま、それも悪くねーか。」

「ねぇ銀さん、例えまぐれでも油断した相手に一発食らわせたら勝ちだよね?」

「そりゃまぐれじゃねーだろ、油断した瞬間逃さなかったんだからそれも実力。粘り勝ちだろ。」

「粘り勝ち!じゃあ今回は私の粘り勝ち?」

「そう言うこった、敗けちゃったよ俺。」

「敗けちゃったね!なら私のお願い聞いてくれるんだよね?」

「……そうね、あれ、何だろうお前のお願い。」


やっべぇな、これ絶対ヤバイやつだ。笑顔の理由はそっちか、不安なんざ既に頭に無ぇわ、そのお願いが脳内占めてんだ。ちょっと待って怖いんだけど、心拍数ヤバイよ俺、お願いって何……



「あのね、土方さんと飲みに行きたいの。」

「…………また4人で?」

「ううん、二人で。」


ほら見ろよ、これだから俺は絶対ェ敗けちゃいけなかったんだ。
何で油断したよ、何で勝ってからお願い考えなかった? つかやる前に決めとけよ俺が勝つんだからよ。

二人で行くって? んな必要あるか? 別に何か起きるなんざ心配はしてねぇよ、だがアイツと二人で飲むなら俺と飲めよとは思う。
総一郎クンだと許容出来る事もアイツには出来ない、理由? んなモンただ嫌だからだ、理由なんて無い。日中二人で出掛けてるのはまぁ良い、だが夜飲みに行くとなると話が別だ。
もしかしたら酔うかもしれねぇじゃん、99パーセント無ぇだろうけど0じゃねぇ。旨い酒飲ませりゃご機嫌になってニコニコ笑顔向けんのに相手は俺ではなくアイツだと?


「銀さーん」

「……………………門限、日付変わるまでだかんな。」

「っ!ありがとうっ!やったぁ!」

「そんな嬉しい? ずっとアイツと二人で飲みに行く為に俺と勝負してたわけ? つかだからやるかっつったら喜んでたんだ?」

「凄い拗ねてる。お願い事はこれにしようって決めてたけど銀さんとの特訓を楽しんでたのとは全くの別物だよ? 銀さんが戦う姿って私はあまり見たことないの、私にそう言うのを見せないようにしてるのかなってちょっと思ったりもした、関わらせたくないんだなってずっと思ってた、……今も良く分からないけど、でもだからこそ、その姿とか知識を私に教えてくれる事が、私にとっては凄く大きな事で、それを銀さんが嫌々やってるんじゃないのなら、とても嬉しくて……何かぐちゃぐちゃしてて分からないね?」

「んや分かる、つかバッチリ一致すんじゃんお前の不安と。段々ほどけて来てると思って良いのかねぇ。ったく、日付も場所もちゃんと教えてから行けよ。門限破ったらお仕置きだかんな。」

「銀さんお仕置き好きね。」

「おーよ、1秒でも遅れたらドエロい下着でも買って貰おっかなー。」

「ちょっと普通のより凄いのは買ってあるよ。」

「エッ!? す、凄いのって?」

「あははっ!何でどもったの? そんなに気になっちゃった?」

「そりゃ気になるだろ。えー、なに凄いのって、エロいやつ?」

「さぁ、どうかなー?」

「今日お披露目する?」

「しないよ銀さん負けたじゃん。」

「ならもう一回やろうや、飲みには行って良いから二回戦って事で。」

「もう疲れたから帰るのよ。」

「しゃーねぇな、門限破らせるしかねぇか。」

「いやおかしいでしょ! 」


んなもん教えられて我慢なんざ出来ると思うか?
いつ来るかも分からねぇ日を待ってってのかよ。
ムリムリ、もう凄いやつが気になって頭から離れる気がしねぇもん。






早急に特訓って事で。



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