トリップ続編 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -








今日は以前約束していた餃子パーティーを新八くんのお家でやる事になっているから、買い物組になった私と銀さんがスーパーで食材を見繕っていると蟹が視界に入り込んで来た。流石にそこまでの予算は無いと伝えながら顔を上げたら、てっきり銀さんだと思ったのに違う。


「僕が全額負担しますので! どうかッ……どうか仲間に入れて下さい!!」


両手で蟹を真っ直ぐ私に差し出しながら綺麗に90度腰を曲げて頭を下げる近藤さんの姿に圧倒されて一瞬動けなかった、通り過ぎる人に不審な目で見られるし、声は大きいし。


「……びっくりした、沖田くんの作戦ってこれ何ですか? 素直が一番って事?」

「高価な貢ぎ物とその他モロモロで大目に見て貰えやせんかね作戦でさァ」

「なるほど、良いと思います。一応伝えてはいますので後ひと押しですよ、きっとこれで頷いてくれる筈です!」

「ホントか!? やったぁ!! 」



最初は「嫌よ」と即答されたけれど新八くんと二人で説得を頑張った、最初から迎え入れれば近藤さんの事だから手土産持って来てくれそうだし途中で現れたらきっとお釈迦になっちゃうもの。折角皆でご飯なのにそれは勿体無いよね。
手土産処かメイン受け持ってくれるなら申し分無いと思う、こっちの分は私が別で買えば良いしお家が大惨事になる事が免れそうで良かった。


「じゃあ私は別で買い物するので近藤さんはお妙ちゃんの分を選んで下さいね」

「名前ちゃんのも俺が買うよ、普段買えないのとか選んでくれて良いから!」

「さっすが局長太っ腹ァ〜、んじゃあこれも宜しく。」

「ちょっと銀さん!? 」


ズイッと近藤さんに持たせたカゴには大量にお菓子が入ってる、居なくなったと思ったらお菓子選んでたの?


「何でテメーの菓子まで近藤さんが買わにゃならねんだよ」

「参加出来んのはこいつと新八が事前に口利いたってのが前提なんだよ、文字通り全額払ってくれんだろ?」

「お前は何もしてねぇんだろうが!そもそも菓子関係ねェだろ!」

「オメーこそ関係無ェだろ、人の作ったモン犬のエサにするような奴が一丁前に人間様の食卓に参加しようとしてんじゃねぇよ」

「良いよ良いよトシ! お妙さんと一緒の食卓に並べるんだ、安いもんさ!」

「だってよ、誰かさんと違って物分かり良いじゃねぇの。ウチの神楽の胃袋満足させんのは半端な覚悟じゃ出来ねぇぞ、心して財布の準備しとけよ」

「だから何でだァァァ! あんなブラックホールみてぇな胃袋どうやったら満足させられんだよ! 近藤さんもう諦めろよ、代償がデカ過ぎる。」

「何を言ってるんだトシ! お妙さんの手料理が食べられるんだぞ!? しかも目の前で作った餃子を一緒のテーブルで並んで食えるんだぞ!? どんな代償だって安いもんさ!」

「いやそれ命落とすんじゃねぇか」


代償大きいですね。

てか命って、失礼過ぎないかな土方さん。餃子の皮に包むだけなんだから命落とす程の物なんて出来上がらないよ。



まだ何か言い争ってるけど遠くて聞こえ無くなってきたな、揉め始めた時点で沖田くんに手を引かれその場を離れたから三人で騒いでるよ、ここスーパーなのに。


「唐辛子も買いやしょ」

「それ絶対嫌がらせに使うやつでしょ」

「名前さんが渡してくれたら警戒無く食いやすぜ、水にニガリ大量に入れて準備しとくんで安心して下せェ」

「お腹が緩くなっちゃうよ」

「いやその前に苦くて飲めやせんから」


そんな大量に入れるつもりだったんだ、賑やかになりそうな予感がするね。

取り敢えずちゃんとした食材もカゴに入れ、蟹を買って頂けるなら雑炊が食べたいな。
沖田くんも食べたいって言ってくれてるし皆も食べるかな

結局私の選んだ食材までも本当に全部近藤さんが払ってくれて負担額が大変な事になったと思う。
それでも荷物を持って歩いてる姿がとても楽しそうだから、お妙ちゃんの包んだ餃子をお腹いっぱい食べられる事を願おう。








沢山の食材を両手に下げてお妙ちゃんのお家に行けば、少しの間を置いて首を縦に振ってくれて近藤さんは泣いて喜んでるし、私も緊張しながら返事を待ってたから心の中でホッとした。

これで安心して楽しめるもんね、包む具材を新八くんと準備してテーブルに並べ皆で包みながら焼いて食べる餃子パーティー。

神楽ちゃんは前回より大きい餃子を作ると私の向かい側で皮から作り始め新八くんはそれを隣で手伝ってる、沖田くんは私の左で早速唐辛子を包んでるけど小さく刻んで綺麗に包んでるし何だか可愛く見えてきたからそっとしておいた。

それよりもお妙ちゃんが焼いてる餃子が何で全部黒くなるのかが分からない、包んでる時は勿論黒くないし焼く時だってそんな一瞬で黒くなる訳無いのに。


プレートは全部で3つ、神楽ちゃん用と、私と銀さんと沖田くんで使ってる物、そしてもう1つを残りの三人が使っていて、気になって見てるのに目を離した隙に毎回黒くなってるの何でなの。


「んな気にすんなって。ピザのやつもっかい作って、旨かった」

「俺さっきの甘辛いやつまた作って下せェ」

「うん。これも良い感じだよ、アタリだ。」


食材が沢山あるから色々作れて楽しいな、作りながら食べれるし出来たら適当に大皿に乗せてるから中身何か分からないで皆も食べてるけど、それがまた楽しいよね。食べてからのお楽しみで。


「はい土方さんマヨ餃子です、味見はしてませんけど。」

「おー、サンキュ」

「何で唐辛子入れてくれなかったんでさァ」

「入れたよ? 小さく刻んでたやつちょっと貰って混ぜたよ、入ってますよね? 沖田くんが刻んでくれた唐辛子ですよ」

「さっきの殺人的なモンより遥かに旨ェよ、ピリ辛で。」

「程好いアクセントの為に刻んだワケじゃねーんですけど。」


近藤さんはお妙ちゃんが作った餃子の方が良いよね、にしても神楽ちゃんの餃子凄いな、顔より大きいのに頑張って焼いたんだな。


「ほい、あーん」

「あ、」


右から口元に寄せてくれた餃子は銀さんが作ってくれてるやつ、さっきから全部美味しいの、やっぱり料理上手だよね。


「っん、海老だ! 美味しいっ、ありがとう!」

「名前ー! 私が作ったのも食べてヨ!」

「うんっ、食べたい!」

「すげェ肉々しい、変なモンでも入ってじゃねーの?」

「失礼アルな!」

「美味しい! ご飯だね、卵かけご飯かな? 沖田くんも貰いなよ、美味しいよ?」


ご飯入れるの美味しいね、オムライス餃子も作れるかな。
わーわー騒ぎながらも結局は神楽ちゃんの餃子食べてたし、ボソッと「旨い」って呟いてたのを私はしっかり聞いた。神楽ちゃんが何気無く食べて美味しいって言ってるのにも沖田くんが作った餃子が含まれてるし、皆でワイワイ楽しい食卓だ。


「……んー、オムライスはやっぱりふわとろが良いな。焼いちゃダメだ。」

「お前オムライス好きだったんだ?」

「うん、ビーフシチュー掛かってるの一番好き。でも自分じゃお店で出るようなのふわとろの卵作れないんだよね」

「名前さん、そろそろ蟹雑炊持って来ましょう?」

「あっ!そうだね、蟹雑炊食べなきゃ!」


台所に作って置いといたんだった、餃子が一通り終わってから出そうってお妙ちゃんと作ったの、そうお妙ちゃんと。


ついでに空いたお皿を持って台所から鍋2つを持ち戻るも私の心臓はドキドキ鳴ってる。
新八くんと二人で作る筈だったけど手伝うと申し出てくれたお妙ちゃんも加わり、取り敢えずそっちは任せて人数多いから鍋2つで作ったんだよね、新八くんが居るし大丈夫だと思ったのに何故か違うものが出来てた。
途中まで大丈夫だったのに何でなんだろう本当に不思議、顔を引き吊らせる新八くんの隣で私は真剣に考えたけど結局分からなかった。


「……何ですかィ?」

「蟹雑炊よ、名前さんに教えて貰いながら作ったから初めて作ったけど上手くいって良かったわ。」

「……名前さんの下せェ」

「……うん」


でも、でも近藤さんは喜んでるよ!近くに居る土方さんは眉間の皺凄いけど、銀さんなんて見もしないけど近藤さんは喜んでる、本当に近藤さんは大きいよ、器も懐も何もかも大きいよ。


「あー旨ェ。鍋分けるなんざ流石。」

「っえ! いや、そ、そうじゃないよ、人数多いから、」

「名前さんどもり過ぎですぜ」

「……」


だって、噂は兼がね聞いてましたから。実際目の当たりにすると心底不思議に思ったけど折角の蟹だし蟹雑炊食べたかったし。
それに新八くんもそっちの鍋だけでも守って下さいって小声で言って来たんだよ、嘘じゃないの、だからそんなに酷いのかとこっちの鍋は私1人で作った。


「名前さんの作った蟹雑炊美味しいわねぇ。」

「っ、そっかな!ありがとうっ!」

「私が作ったのは全部ゴリラに食べられちゃったから分けてあげられなくて残念だわ」

「……あっ、……、」


全部1人で食べたんだ、凄い、近藤さん本当に凄いよ、男だね。拍手したいくらい感動したよ私、いやだって色が凄かったんだよ、絶句と言うか心底疑問に思うくらい凄かったんだよ。

後ろに倒れて全く動かないけど、生きてるよね?
唇真っ赤になって腫れてるけど一体どんな食べ方したんだろう、鍋ごと行ったの? もはや勇者ですね。



「そうだわ、明日九ちゃんが泊まりに来るんだけど名前さんと神楽ちゃんも来ない?」

「来るアルー!いつも美味しいお菓子持って来てくれるネ、でも名前は無理アルな。」

「え? 何で? 」

「一応声掛けてみただけだから気にしなくて良いのよ、でもいつかご一緒にしましょうね。」

「えっ」


まだ何も言ってないのに前回の時に断っちゃったからかな。でもあの時は出来るだけ銀さんの傍に居たいって言うのと二人で飲みに行ってみたかったからであって、来たく無かった訳では無いのに。


「私、」

「そー言やアイス買ったよな? 取りに行こーぜ」

「あ、うん、ちょっと待って、お妙ちゃん私も、」

「はい行くよー、立ってー。」

「いやちょっと待ってってば、」

「諦めなせェ無理でさァ」

「せめて気付かないと。でも良いのよ名前さん、また誘うわね。」

「ちょ……っ!そんな引っ張んなくてもアイス逃げないからっ!」


どんだけアイス食べたいんだってくらいグイグイ引っ張って来る、子供じゃないんだから少しくらい我慢出来ないの?
私もアイス食べたいけど、そんな急いで取りに行かなくても良いでしょうに。

仕方無いから手を引かれるがまま足を動かし冷凍庫までたどり着いた、なのに開けもしないで銀さんは立ったまま動かなくなり代わりに私が開けようとしたのに少し開いた扉は直ぐに閉じられる。目の前にあるドアを押す手は何なの、自分が急がした癖に意味が分からない。



「ねぇ、開けられ無いんだけど。」

「前は聞いてくれたじゃん」

「え? 」

「一人寂しいかって聞いてくれたじゃん」


突然何の話だ、一人寂しい?……、もしかして前の誘われた時の事かな、確かに聞いたけど、……それが?


「前の女子会の話してるの?」

「そう、前は聞いてくれたのに今回は聞かねぇで行くんだ?」

「えっ、ぁ、……え。」

「もう俺の事気にしてくんねーの」


……え、そうゆうわけじゃなかった、と言うか、……どうゆう事?
別に前も寂しかったわけじゃ無いでしょ? いつ消えるかも分からなかったし銀さんも出来るだけ私と一緒にって思ってくれてたんじゃないの?


「いや、そんな、銀さんの事気にして無いとかじゃないよ、折角誘ってくれたし行こうかなって思って。前はいつ消えるかも分からなかったけど今は違うでしょ?」

「消える消えねぇは関係ねんだよ、……あー、俺ちょっと重い? まぁ、流石に重いかとは思ってるけどよ……んー、……そんな行きてぇ?」

「重い? 誘われたし行こうかなって思っただけなんだけど。」

「……ちょっと待て、まだ気付いてねぇの? わざわざ言ってやってんのに気付かねぇのかよ。」

「何が? 何の話してるの?」



銀さんの言わんとしてる事が全然分からないよ、もっとハッキリ言って欲しい。



「だからァ、束縛してんの。泊まりに行かねーで俺の傍に居ろっつってんの。」

「え、私束縛されてたの? てか女の子の集まりなのに心配する事あるの??」

「はぁ? 心配して行くなっつってんじゃねぇよアホか、俺を1人にすんじゃねぇつってんだよ。分かれや、寂しいの、お前居ねぇと寝れねぇくれェ寂しーんですゥ」


舌打ちをしながら顔を横に背け罰悪そうに後頭部の髪を掻きながら私を押し退けて冷凍庫のドアを開けた銀さん、その横から手を伸ばして今度は私がドアを閉めた。
横目で睨まれたけど、だって溶けちゃうもん。


「手ェ邪魔なんだけど」

「私も銀さん居ないと寝れないよ」

「お前は俺が居なくても他に人が居りゃ寝れんだろ」

「銀さんだって私が仕事行ってる時寝てるじゃん、てか私を置いて依頼行ってる時も寝てるんじゃないの?」

「……でもお前の事考えてる」

「うん、ありがとう、嬉しい。」



ちょっと不貞腐れたように顔を背けるから、腕を首に回して勝手に抱き付いた。
黙って身を委ねて軽く腰を引き寄せてくれる銀さんは寂しいって思ってくれてたんだ、心配はいつもしてくれてるけど私が居なくて寂しいと思ってくれていたらしい。そんな事言ってくれないと分からないよ。


「銀さんも私居なくて寂しいって思ってくれるんだ」

「……は? 当たり前だろ、なに、お前自分が居なくても俺が寂しくねぇとでも思ってたワケ?」

「だって私、いつも銀さんの傍に居るじゃん。だから私が居なくて寂しいとか考えた事無かった、消えると思ってた時は考えてたよ、でも今はずっと傍に居るでしょ私は。」

「……何か棘が見え隠れしてる気ィすんだけど。」

「ふふ、冗談だよ。」


両腕使って ぎゅっと抱き締めてくれるこの温もりが大好き。


「……あー、……別に、外泊禁止とか、そこまで束縛してぇワケじゃねんだわ」

「分かってるよ。銀さんの事を考えもしないで泊まりに行こうとしたのが引っ掛かったんでしょ?」

「……」

「ありがとう、深く考えて無かったから後で気付いて落ち込む所だったよ。どっちに居たいかと聞かれたら申し訳無いけれどこっちだもん、私と一緒に居たいと思ってくれてる銀さんと離れてまで行きたい所なんて無い。もしこれが束縛なのだとしたら寧ろ大歓迎、そして私もするからね、ヒョイヒョイ1人にしたら駄目だよ。」

「……フラフラどっか行っちまう癖に良くゆーわ。」

「ならちゃんと捕まえてて。人の事を方向音痴だとか言うくらいならちゃんと手ぇ繋いでてよ。」

「繋いでても迷うだろ」

「迷ってない」

「……はぁ、……まぁ、散歩だっけ。」

「私 銀さんとお散歩するの大好き」

「俺も好きだけどぉ、……、あのさ、無理すんのとは違ェんだかんな」

「そんなの私だってそうだよ、無理して傍に居て貰ったって嬉しくない、無理して傍に置こうとしてくれたって嬉しくない。」

「……いや、あの何か、棘が、……気のせい?」

「自分ばっかり私の事をって思ってるみたいだったからちょっとね。でもこれで連れて行こうとされても困るから言ってるだけだよ、私が言いたいのは重いとか無いし銀さんの事大好きって事。」

「……んじゃァ遠慮無く独占しちゃお。」


ぎゅーっと腕に力が入ったから私も負けじと力を込めて抱き付いた、聞こえる銀さんの笑い声に安心する。



束縛とは少し違うんじゃないかな、だって私が沖田くんの所に泊まりに行っても銀さん寝れるよね。寂しいとは思ってくれるかも知れないけど寝れると思う。
私も銀さんが長谷川さんと飲みに行っても寂しいとは思えど寝れる、でも依頼で居ない時は寝れないの。


その違いは、不安だ。


さっき銀さんが感じた不安は私が傍に居ない事へじゃない、自分の想いが私にとって重過ぎるのかもと感じたからだ。だからあんな顔したんだ、本当は寝れる寝れないでも1人が寂しいでも無いんじゃないの。 私の気持ちが感じられ無かったんでしょ、だから不安になった。


寂しそうな顔も生まれた不安も、微塵も残してやるもんか。


もっと頑張ろう、私の愛情が伝わって無いなんて。






冗談じゃない



prev / next


[ 戻る ]