トリップ続編 | ナノ
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「……」

「仕事して気分スッキリで帰って来んだろうなァとは思ってたけどよ、次から次へと面倒なモン持ち帰りやがって。」

「……嫌いにならないで」

「なんねぇよバーカ」


良かった、そこまで怒ってないや。冗談言えるくらいには空気軽いし嫌み言って来るくらいは呆れの方が勝ってる。


土方さんの件をどうしたものかと悶々と考えながらご飯作ってたら寝る前に銀さんの方から聞いてくれた。だからアイスの所は省いて私が土方さんの婚約者だと思われてる事と、近々頼まれ事をするって言ったら溜め息吐かれて直ぐ理解した様子だった。そう言えば口紅付けた時その場に居たもんね、もしかして予想してた?


「まだ土方さんから何を言われた訳でも無いの、決まったら連絡するって。」

「十中八九そうだろうが。何お前、アイツの婚約者のフリしに行くの?」

「……」

「まぁ良いけどね、俺お前のお願いには寛大だから。なぁ凄くね?お前のお願いだからって他の男の婚約者のフリしに行く許可してんだぜ。婚約者のフリ。」


何だろう、とても押し付けがましいな。いや私がそんな事を思う権利無いけどね、そしてまだ何も言われてないのに決め付けてるよ。


「何黙ってんだよ、聞いてんの?」

「……聞いてます」


許可して頂けるのはとても有難い、これで何頼まれても遠慮なく受けられるから。だって私だったら嫌だもん、銀さんが他の女の人の婚約者のフリしに行くなんて嫌だ。なのに私はしようとしてて、相手が土方さんだから まぁ仕方無いって思ってくれてるんだろうけど本当に寛大で有り難いよ。


「で?」

「……で、とは……?」

「何とぼけちゃってんの? それ相応のご褒美くれんじゃねぇの? 」


それ自分で言う事かな?? しかもそんな薄く笑いながら催促してくるの?いや感謝は勿論しているけれど、どうなんだそれは……。


「くんねーの」

「え、いや、そんな事ないけど、……それは、ケーキとかでも、」

「へぇ、俺が簡単に許可したから? そんな悩みてェなら断固拒否してやっても良いけど、許可ナシで行って罪悪感抱きながら帰って来れば。」


嫌だ……!それはとても嫌だ、許可くれないとモヤモヤしながら過ごさないとならなくなるし、後ろめたさにグダグダした思考が出てくるのが目に見えて分かる。何で私は、とか思っちゃうから嫌だ……!折角近藤さんに元気付けて貰ったのに!

そしてそれを分かってて言ってるでしょ本当に意地悪いな、銀さんの言うご褒美って何、怪しいヤツの事言ってるんだよね……、どのくらいのレベルの怪しいヤツなんだろう……。


「……何か、したい事、あるの?」

「お前が考えて。ご褒美だろ? 俺の喜びそうな事何かあったんじゃねーの?」


あっ、そっちかぁ、なんだ良かった。頑張れるやつだ。


「今あからさまにホッとしたな、昨日のそんなしんどかった?」

「え!? いや、そ、そうじゃないけど……な、何かそうゆう何か、かなって、」

「そうゆう何かねェ。あれは俺が勝負に勝ったご褒美だから、お前は負けたと自分でちゃんと認識してヨシとして受け入れてるからこそ意味があんの。お前の意志が付いて来ねェ内にやったって意味が無んだよ。」

「……そうなんだ、」

「そうなの。だからこーゆう時のご褒美は、お前が俺に喜んで欲しいって思ってするヤツやって。そしたら俺はお前が行きやすいように送り出してやるよ。どう? 良い提案じゃね?」


もしかして、私が何も気にしないで動けば良いって言ってたやつ?良い提案考えてやるからって、……どうしよう、私今日涙腺弱くないかな。


「なに、そんな感動した?」

「っ、……ぅん、そ、そんな、私にっ、良くしてくれて、っ、」

「ま、しゃーねぇよ、惚れた弱みってヤツだろ。俺お前が楽しそうな方が良いし、お前がくれる特別感結構嬉しいからな。」

「がんばるっ、」


銀さんが喜びそうな事、そして出来れば私に余裕が残る事。じゃないと私が何かをしてあげる事が出来なくなる、銀さんはする方が良いのかもしれないけど、でも私が何か喜ぶ事をしたい。


「まだ眠くない?」

「え? 今日すんの? お前疲れてんだろ、今度で良いよ」

「ううん、今この気持ちのまましたい。許可もそうだけど、私が気持ち良く行けるように考えてくれた妥協案って言うのが嬉しいの。私の為に考えてくれた、だから私も銀さんに何かしたい。喜んで貰えるように頑張るから、いい?」

「いや、俺は良いけどよ。」

「じゃあ横なって」

「おぉ、え、もう? 準備ナシ? 何すんの? 」

「銀さんが喜びそうな事。」



・・・



まさか早速始まるとは思わなかった、だって昨日の夜だぞ? 結構なイチャイチャをしましたが?俺は満足しお前ぐったりしてたろ、何なら朝まで引き摺ってたろ、帰って来たら違うモン引き連れて来たけどよ。

まぁ、俺的には美味しい展開だから問題無いけどね、そっちがソノ気っつーのがまた、だいぶ付け込んだ感あるけど感動するくれぇ喜んでくれたんなら別に良いよな?嘘は何も付いてねぇし、そもそもあんなの付けた時点でお前はとっくに巻き込まれてんだよ、遅かれ早かれ何かあんだろうとは容易に想像付くわ。
だけどな、アイツらとあんな仲良くても俺に向ける特別感をわざとなんだか出してくれてる、それが結構優越感で満足感もある。多少癪ではあるが、名前がアイツらの傍に居ることで段々と分かって来たワケだから、まぁ多少多めに見る事ぐれぇ出来る。


何してくれんだか、俺を布団に寝かせて毛布は横に捲られてる。ご丁寧に電気を消して豆電球に照らされる姿を眺めてたら目が合った瞬間にニコリと微笑まれた。


「お、なに乗ってくれんの?」

「うん、いやだ?」

「全然」


やっぱ上の方が好きなんかな、乗る時いつも楽しそうに笑うし触ってくれてる時も楽しそうだよな。
緩い戯れなら俺が触ってもすげェ楽しそうなのに空気濁して触ればちょっと震える。マシにはなったけど困った顔して固まるし、身体も硬くなって笑顔が消えちまう。


「……は?は、え、何してんの?」

「私がするんだからね、ダメだよ変な事しちゃ、いい?」

「いや、いいって、え、何が? 」

「触っちゃダメなの、いい?」


だから、いいって何が?何で寝間着のボタン外してんの?ヘソ見えてるよ?全部外す気か?


「……いい?」

「何が?脱ぐ許可欲しいの?どうぞ?」

「触らないって約束」

「あぁなるほど。おっけ、分かった、いいよ。」


そっちか、悪戯されないように約束が欲しいのね。良いよ良いよ、視覚的満足でも全然楽しめる。


安心したように笑ってボタン外すのを再開し始めた、全部外すのかと思いきや上手い具合に下着隠れるギリギリで止めやがって、逆にエロいって分かってんのかコイツは。鎖骨見てえるし、括れも腰も見えてんのに丁度下着の所だけボタン付けたまま、でもわざと開いて肌見せてんね。何お披露目してくれちゃってんの。


「おっ、とォ、待て待てストップ。」

「重い?」

「違う違う、……え?何してる?」


思いっきり座ったね、銀さんの上に。
申し訳無い程度に腹に座ってただけだったのに少し後ろに下がったと思ったらピッタリ座ったよ、えぇ? いやいや、……え? 何すんの? そんな格好してお前は何をしてるんだ?


「……喜ばない? ……こうゆう、変態的な事、好きなのかなって、……」

「うんすげぇ好き」


シュンと下がった目線が俺の台詞で一瞬で戻って来て、二度程ぱちくり瞬きした後に無言で頷かれた。

全く外しちゃいねぇよ、良く分かってるわこの子。


「触んねぇからこのまま起きてて良い?」


言い付け通り触ってはいないが、驚き過ぎて起き上がっちまったから後ろに両手を布団に付いて身体を支えてる。また無言だけど頷かれたから見やすくなった目の前の身体を下からじっくり見上げたら少し顔を引かれたけど、自分でやっといて何眉間に皺寄せてんだ。


「続きは?」


ぐっと体重を乗せて来た場所は一寸の狂い無く合ってるが、コイツはちゃんと考えて乗ってんのか疑問でしか無ェわ。ソノ気になったらどうしてくれんだ、言っとくけど余裕だかんな、……だからこその約束だったのか? それはそれで怖ェな。取り敢えず聞こえない程度に息を吐き己を落ち着かせる俺を誰か褒めて欲しい。


俺が落ち着くのを待ってたのか全く動かねぇから目線を顔に戻したらすげぇ見られてた。軽く頷けば大丈夫だと納得したのか、今度は俺の寝間着の紐をほどき肩からも落としてくる。


「っ、は、」


指で腹を触られただけ声漏れんだけど、やべェな。
つか終わり?チラチラ見上げてくんのは何なんだ


「もう終わったの?」

「んー、ちょっとドクドクしてるから、……どうしようかなって、」

「……やめる?」

「んー、……どうだろ、」


ドクドクつーのはアレだよな、座ってる所を言ってんだよな多分。
けど顔を横を向け垂れた髪を耳に掛けながら、横目でチラリと視線を寄越してくんのは続行の意志があると思って良いんだな?


「ちょっと体勢変えていい? 触んねぇから、そのまま後ろ倒れてくんない?」


名前を乗せたまま軽く足を開いて膝を立たせれば、後ろを見ながらゆっくり手を付いて倒れて行く。
その身体を追って覆い被さり顔の横に手を付け真上から見下ろすと、驚いたのか目が見開かれたが俺が動かねぇからか小首を傾げて見つめて来た。

触らねぇ約束だからな、お前が自分で触れてきた所は当てたまま、無防備に開いてる脚と捲れて晒されてる腹、横になったから若干見えるレースも隠そうとはしないで、掴んでもいねぇのに手は顔の横に倒れてる。

良い機会だから教えてやろうか、俺がいつも考えてる危ないコト。


布団に広がる髪だけでも油断すりゃァ欲の対象になる。お前がいつも笑ってくれるからそっちに満たされて保てんだ、俺が触らないと安心して好きに見させてくれてんのは分かる、だが残念ながら手が使えなくても楽しめんだよな。俺の変態さ加減甘くみねぇ方が良いんじゃねぇの、もう散々変態だと言われてっからね、遠慮無く晒け出すぞ。









程無くして、ゴクッと自分の喉が鳴ったのが脳まで響いた、それと同時にピクリと揺れた下にある身体がようやく自分の身に起きてる事が分かったのか横を向き、倒れてた手が動いて拳を作り口元に当てている。


「……名前」

「っ、……、」


名前を呼んだだけで、ビクッと跳ねる反応は驚きから出たモンじゃ無ェな。ちゃんと分かんだ自分がそうゆう目で見られてるって、耳まで赤くなって来ちゃって、何考えてんのか是非聞かせて貰いてェ所だわ。
横を向いてて上になってる耳元に唇を寄せ、触れはせずとも軽く息を吹き掛けるだけで多分昨日の記憶が一気に甦んだろ。


「今、俺に何されてるか分かる?」

「っん、……っ、」

「視姦されてんの。お前見ながら、やらしーコト考えてんの。」


視線から逃げたいのか身体を捩って横を向こうとしてるみてぇだけど、脚の間に俺居るからな、無理だろ。


「あったけェだろうなァ、この身体、全部触り尽くしたら。きれーな肌してっからさぁ、何処もかしこもスベスベしちゃってんの。」

「っ、んーん、」

「違うって? けどその見えてる鎖骨とかもすげェ綺麗。舐め尽くしたくなっちゃう。」


どんどんシーツ引き寄せて顔が埋まってく、もう首まで真っ赤なんだけど。これ面白ェな、いつもなら反撃してくんのに出来ねぇくれぇ照れちゃってんの?


「お風呂上がりの火照った顔とか堪んねぇよな、汗ばんだ、……」


……限界来たか? 塞げて無ェけどシーツに埋まったまま片手だけ上がり俺の口を覆って来た、覆ってるつーよりただ指が唇に当たってるだけだが、それでもこれの意味する事は分かるから止めてやろう。
あんまりやって普段の生活に差し支えたら可哀想だしな。


「別にお前見ながら毎回そんな事考えてるワケじゃねぇかんな? ふとした時とか一人の時とか、兎に角普段はちゃんと健全な目で見てるから気にしねぇで過ごせよ?」

「………………ん、」

「間が長ェな、おい平気か?もう触って良い?」

「……んーん」

「ダメなの?なに今日別々で寝んの?」

「……ぎんさ、の、背中くっついてねる。」

「それ遠回しに触んなって言ってるよね。」

「じゃ、別々で寝る」

「ウソウソ、いーよそれで。じゃーほら起きな。」


上から退けてやったのに布団から転がり落ちて俯せで倒れてる。いや何やってんの?照れ過ぎじゃね?


「……はやく寝てよ」

「は? お前は?」

「銀さん布団入ったら、寝る」

「どんだけ照れてんだよ、ったく。」


初々しいったら無いな、こっちまで照れちまうだろうが。

仕方無ェから適当に皺になったシーツ直して布団に入り横を向いて転がれば、微かに起き上がった音と少ししてからモゾモゾと後ろで布団に入るのが分かったが、


「何で着てないの」


あ、上着んの忘れてた。けど今更起きて着んのも面倒くせェし良いか別に。


「お前が脱がせたんだろ、責任持ってあっためて」

「着ればすむ事なのに……って、わ、あったかい」


いやマジでか、思ったよりピッタリくっ付いて来た。そしてお前はボタン閉めたんだな、布の感触だわ残念。


「何だこの脚は」

「ふふっ、銀さんの真似」


すげぇ頑張って脚の上に片足乗せて来てるけど体勢どうなってんだ、体格的に無理が有り過ぎる。

自分の脚を一本抜いて乗ってる脚を挟み、手で膝を曲げさせイイ位置に収める。後ろに手を伸ばして背中に張り付いてる手を片方掴み腹に回させれば寝心地は良さそう。


「変な事に使わないでよ」

「変な事って?」

「……、こーゆう事?」

「ッおい、バカかお前は、折角耐えたんだからやめろっつの」

「ふふ、」

「……つかそんなピッタリくっ付かれると変な気分なんだけど。」

「……んぅ、」


いやそんな寂しそうな声出すんじゃねぇよ、背中に張り付いてた頬が離れ温もりが消えた。服を着るべきだったな、失敗したわ。

感情と連動するかのように腹にある握ってた手からも力が抜けくったりしてるんだけど。
何なんだよマジで、俺をどうしたいワケ。


「あーもー良いよ、好きに張り付きゃ良いよ。頬でも何でもくっ付けろよ耐えてやらァ」

「んふっ、んーっ、」


口って……、いやお前、今リップ音響いたろ何してんだ。 確かに何でもくっ付けろよとは言ったが唇くっ付ける奴があるか。ヤバい、耐えれるかな、触れる吐息にすらゾクゾクすんだけど。マジでヤバい勘弁しろよ。


「銀さんの背中好き、今は私だけのモノだからね。」

「……お前だけ?」

「そう私だけ、他には何にも無いの。今だけは全部私のモノ……重い?」

「いいや、すっげぇ軽い、空も飛べそう」

「あははっ、おやすみ、銀さん。」

「……おやすみ」


俺の全てを拾ってくれる気か、握り返される手はこんなに小せェのにな。

つか俺の扱い上手くなったね、いやマジで、銀さんの扱いまで上手くなったの? お陰様で落ち着いたわ、興奮より幸福が勝った。
……うん、でも俺も大概だった、全神経が背中に持ってかれたみてぇに触れる寝息に揺れる、俺の理性が。
良くそんなスヤスヤと眠れんな、俺を何処まで安全な人間だと思ってんだよチキショウが。

完全にさっきの視姦が不味かった、あれが無けりゃ余裕で寝れたわ俺だって。
あーくっそ、別に耐える必要無かったんじゃね? 脚借りときゃ良かった、今はもう耐える以外に選択肢無ェもんよ、今更起きる気にはなんねぇし。






何より離れがたくてムリ



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