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▼ ときめきって何だっけ


依頼が無いままお昼過ぎを迎えた
神楽ちゃんは友達と遊びに出掛けている
図書館に通うのを止めた私は新八くんと万事屋で掃除をしていた

ソファーで毎度ながらジャンプを読んでいる銀さん
毎日同じ物読んで飽きないのかな

「なぁなぁ。」

ジャンプを読んでると思っていた銀さんがこっちを向いて話掛けてきた。

「何?」

「お前どーゆう時に照れんの?」

「え? 何、まだ言ってるのそれ。」

昨日の会話まだ続いてたの?

「いーから。照れ屋だって言ってたじゃん?どーゆう時に照れんの。」

「んー、1人で転びそうになった時とか?」

「いやまぁ、そりゃ照れるわな。じゃなくて、そんな恥ずかしいあるある聞いてんじゃねぇの。」

「自分で聞いたんじゃん」

「そうじゃね−、人と一緒に居る時。」

「話してる時にグーってお腹鳴ったら照れる。」

「何だその可愛い照れ方。」

ちげーっつの。違う違うと否定してくる銀さん
一体何が聞きたいの

「もっとこうあんだろ? キャ〜照れるぅみたいなの。」

「えっ何今の、女の子のモノマネ? 面白いね!」

「いや何で喜んでんの」

突然裏声を出しながら女の子のモノマネをした銀さんに喜ぶとため息を吐かれた。


「それって異性にって限定されてません?」

「あれ、ぱっつぁん居たの?」

「さっきからずっと居たでしょうが!!」

「異性?」

新八くんと銀さんのボケ突っ込みをスルーして聞くと

「銀さんが聞いてるのは恥ずかしくて照れたエピソードじゃなくて、”異性にときめいて照れた時”じゃ無いですか?」

そうなの? と銀さんの方を向くと、そうそう!それだよ、流石ぱっつぁんと感心している

「で? どんな時にときめいて照れるワケ?」

「そんな事聞いてどうするの?」

「別にいーじゃねぇか、減るもんじゃねーしよ」

減るとかの問題じゃないんだけど
ときめきか−と言って考える

……ときめき。
異性にときめき。

……ときめきって何だっけ。
ドキドキしたりって事だっけ

いつだろうと記憶を遡っていると、マジかよ と銀さんの声が聞こえた

「お前さ、今まで付き合った事とかはねぇよな?」

「……何。良い歳してとか思ってるの。」

「いやだから何で悲観的? んな事言ってねーだろうが。でも好きになった事ぐれぇあんだろ?」


好きになった事か−
好きになった事……
……いつだろ……

え、無かったっけ?
いやそんな事無い、あったはず

悶々と記憶を遡る、そしてハッとした

「あった、幼稚園の時誰好き?って話になって皆が好きって言ってた子を私も好きって言ったわ。」

「ようちえん?」

「うん、ちっちゃい子が通う教育施設かな、私はその時5歳くらい。」

「5歳!? どんだけ遡ったんだよ。しかもそれ周りに合わせただけのやつじゃねーか。マジで言ってんの?お前の脳にピンクい所ねーの?」

「銀さんがピンク過ぎなんじゃないの?」

「男なんて皆そうなんですぅ。」

何それ。

「格好いいなって思う事も無いんですか?」

「あるよ? 普通にイケメンだ−って思うし、最近だと沖田くんとか。どっちかと言うと可愛いけど、でもイケメンだよね。」

意地悪いなとは思うけど、でも沖田くんイケメンだと思う。
多少意地悪でも女の子が放っておかなそう


「ハァァァ!? 何でそこでアイツの名前が出てくるワケ!? サディスティック星の王子だぞ!?腹ん中真っ黒だぞアイツ!」

「何怒ってんの?」

あくまでも一般的な答えだと思うんだけど。

「そもそも銀さんどうしたんですか? 突然名前さんの照れエピソードなんて聞いて。」

「あ―、無意識に思わせ振りな態度してっと危ねーぞって事が言いたかったワケよ。 オメー何も考えずにふらっと近付いたりすんだろ? 特に下の客とかにそれやってっと、勘違いした客に目ェ付けられるかもしんねーぞ。」

「え? そんな事してないけど。」

「だから無意識なんだって。男なんて−のはな、笑顔向けられりゃ直ぐその気になっちまうもんなんだよ。 しかも酒入ってると尚更だ。」

「でも接客だもん。笑わないわけにはいかないでしょ? そもそも私今まで生きてきて目付けられたり?とか無いよ。」

「今まで無いからってこれからも無いとは限らねぇだろ。お前は今まで異世界に来たことあんのか? 明日何が起こるかも分からねー、用心しろって言ってんの。笑うなとは言わねーから、せめて近づきすぎんなや。」

「……分かった。近付いたりしてるつもりは無いけど、でもそうだね。気を付ける。」

普通に接してるつもりだけど、でも心配くれてるんだと思って頷いた。

具体的に何を気を付ければ良いのか分からないけど、気を付けよう……一応。

「銀さんは名前さんの事が心配で聞いてたんですね。」

「まぁ一応? 」

「銀さんありがとうね」

心配してくれる事は素直に凄く嬉しい。

「んで、マジでドキドキしたりしねぇの?」

でもこれはしつこい。




「だから分かんないって言ってるじゃん。記憶には無いけど私だって感情ある人間なんだから、ドキドキしたりするって。それがいつかなんて分かんないよ!」

さっきから同じ事の繰り返し

面倒になって買い物行こうとしたけど、止められて今新八くんが代わりに行ってくれている。
銀さんの相手してあげて下さいって言って出掛けたけど、それが面倒だったのにな……



「でもよォ気になんじゃん? ここまで来たら是が非でも拝みたくなんじゃん」

「ならないよ! 」

しつこっ!
本当しつこい!

途中から洗濯物畳んだり掃除しながら相手してたけど出来ることも無くなってきたし、と立ち上がると銀さんに手首を引っ張られソファーに倒された。
すかさず銀さんが乗っかってきて顔の横に手を付き上から見下ろしてくる

「……なに? 銀さんは一体何がしたいの?」

「ドキドキしねぇ? 押し倒されてんだぞ、今。」


あぁ、そっか。
これドキドキするシチュエーションなのか。

「……しない、かな?」

「じゃーどんな気分?」

「居心地が悪い。 動けないし、見下ろされてるし落ち着かない。」

「色気ね−感想だなァ」

呆れながら銀さんは私の背中とソファーの間に腕を入れ、一瞬抱き寄せそのまま自分との位置を替えるように動いた

昨日と同じく私が銀さんに乗っかる格好になった。

「これ昨日やったじゃん。」

背中に回った腕はそのままなので、体を起こすことは出来ず顔だけ上げて銀さんに言った。


「……マジで心拍変わんねぇのな。」

「え?」

何、今心拍確認してるの?
だからこんな密着してるのか

なるほど、と納得して私も銀さんの心拍を確認すべく起こしてた顔を倒して丁度真下にあった銀さんの心臓部分にぴったりと耳を置いた


とくん、とくんとゆったりな心臓の音

「……銀さんの心拍も平常だよ。ドキドキ言ってない。」

「銀さん大人だからな−。こんな事ぐれぇで乱れたりしねーの。」

そっか、と言いながら穏やかなリズムに耳を傾けていると暫くして どくんと心臓が跳ねた

「え、今変わった。何か乱れたよどうしたの?」

「あー、……ちょっと今エロい事考えたわ。」

「は?」

淡々と言ってくる銀さんに胸元から耳を離し起き上がろうとすると、上から手の平で頭を押さえられて再び心音が耳に届いた。

「ちょっと離してよ、もう降りる!」

「だーい丈夫だって、もう考えてねーから。」

確かにとくんとくんと心地良いリズムに戻ってる


「……いつまでこのままなの?」

「んー?もうちょっと?」

「……眠くなるんだけど。」

「寝ればー?」

「嫌だよ、まだ掃除終わってないし。大して動いても無いのにお昼寝なんて。」

「いーじゃんたまには。息抜きも大事だろ。」

そう言いながら銀さんは頭に置いた手はそのままに、背中をポンポンと子供を寝かしつけるみたいにあやしてきて、只でさえ落ちかけていた瞼に脳さえ停止しかけてきた。

「……銀、さん。それ、やめて。本当寝そう。」

「だから寝ろっての。」

「…………やだ。」

強情なヤツ。そう言いながら頭を押さえていた手が緩く髪を撫で始めた事により、ふわふわしてた脳内が意識を飛ばした






……寝たか。

天井から視線を下げると自分の胸元に乗ってる小さい頭が寝息をたてて眠っている

眠そうにしてるくせして頑なに寝まいと格闘してたみたいだがゆっくり撫でてみたら落ちた。


照れねぇとなると照れさせてみたいと思うのが男の性で。

顔を赤くさせたり心臓鳴らしてやろうと思ったがそう簡単では無かった。

それもその筈チャイナ服来たときに迫っても、屋根から落ちて抱えた時も、こいつは別に照れちゃ居ない

挙げ句こっちが仕掛けたとは言え、自分から近付いて来るくらいだからな

かといって触れて良いわけでもない

無理に触れれば照れるかも知れないが多分最終的にはキレる
いや、最初からキレるかもしれない


昨日買ったらしい洋服を動きやすいからと今日から普段着にするらしく、それは袴のようにゆるい裾で着物と違い随分生地が薄い
密着する体から体温が感じやすく
無意識なのは分かってるが、俺の上に乗ったまま膝を曲げたり動かす度に裾が捲られ足が晒される

遊ぶ脚を眺めてたら心臓が跳ねたらしく気付かれたから適当に誤魔化して手で頭を胸に押し付け黙らせた


自分の行動が時々分からない時がある
俺は何がしたいんだろうな


心地良い良い重みと体温を感じつつ考えることを止め俺も昼寝をすることにした





〜万事屋玄関〜

「あれ?神楽ちゃんまたどっか行くの?」

「新八ももう一回買い物でも行くヨロシ」

「え? 僕今帰って来たんだけど。銀さん達は?」

「2人仲良く引っ付いてるネ」

「本当だ。珍しい名前さんお昼寝してるんだ。じゃあ荷物だけ置いておこうかな。」










……あれ、何だろう凄く暖かい

目が開くよりも早く脳が起き上がり感じる温もりに意識を巡らせると近くで寝息が聞こえた

はっとして顔を起き上がらせると私が動いた事で目を覚ました銀さんが身動きをした

「っん、あぁ、起きたの?」

「っご、ごめん!私本気で寝てた……!」

上に乗っていた事に今更ながら思い出し、急いで立ち上がると銀さんも眠たそうに体を起こし後ろ髪を掻きながら大きなあくびをしている

「ごめんね、体大丈夫? 起こしてくれて良かったのに。」

「別に−。俺も寝てたから」

人1人乗っけて重くない訳がない
申し訳なくなりもう1度 ごめんねと声をかけて周りを見ると若干の薄暗さを感じる

「……え?今何時?何か薄暗い……。」

「5時前だな」

5時前!?
もう夕方!?
そんなに寝てたの私!?

「わわわ、大変だ、ご飯作らないと、って新八くんと神楽ちゃんは? まだ帰ってきてないのかな?」

新八くんが買い物に行ってから結構な時間がたっている
神楽ちゃんも居ない?

玄関に靴を見に行くと靴は無い、しかし台所には買い物袋が置いてある

新八くんに買いに行って貰ったものだ

これがあると言うことは、1度帰って来た?
もしかして寝てたから起こさないように出掛けたのかな
だったら申し訳なさ過ぎる……!

買い物袋を見て固まっている私の元に銀さんが歩いてきた

「銀さん、これ。新八くん帰って来てまた出掛けちゃったみたい。 私寝てたからだよね、」

「たまには寝かせてやりてーって思ったんじゃねぇの。その内帰ってくんだから気にすんなっての。」

そう言いながら呑気に冷蔵庫を開けてイチゴ牛乳を取って飲み始めた


……よ、よし取り敢えずご飯作ろう!
沢山作って食べて貰う!
そして謝ろう。

そう思いながら気合いを入れてご飯支度に取りかかった


少ししてから2人が一緒に帰って来て、並べたご飯の前で謝った。やっぱり気を使って出掛けたらしい

「ごめんね、私寝ちゃってて。帰って来たの気付かなかった。」

「良いんですよ全然!僕らが勝手に出掛けただけなので気にしないで下さい。銀さんなんてしょっちゅう昼寝してますから。」

「昼寝が出来るって事はな−、世界が平和な証拠なんだ。俺はそれを証明してやってんだよ。」

「只のマダオのくせに何偉そうに言ってるアルか。」

「マダオ?」

「まるでダメなオッサン、略してマダオアル。」

「え!凄いねそれ!神楽ちゃんが考えたの?上手!!」

「何誉めてんのお前。銀さん貶されてんだよ? 」

「あっオッサンでは無いよね、でもお兄さんでも、お だから大丈夫だよ。」

「いやそこじゃねぇから!! 」



今日も何だかんだで平和な1日


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